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寒がり聖女と巻き込まれ系辺境伯の婚姻~溺愛の方は努力するんで、ざまぁフラグは回収しなくてもいいですか?~  作者: 砂臥 環
第五章:聖女嫁の元婚約者

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⑥『念の為!』の仕様

 

 呑気にそんなことを考えていたユリウスだったが、当の本人である嫁の人はというと。


(……きゃー! …………きゃー!!)


 先程のなんかいい雰囲気を思い出しては気恥しさとトキメキに身悶えし、転がっていた。

 流石に今回はベッドの上である。



 実のところ、カールハインツが出てきた時点でマジョレーヌのことはあんまり心配していなかったりする。


 カールハインツはエディトを嫌っていたけれど、別に不真面目で女好きのだらしない王子だったワケではない。

 まあ最後のお茶会でマジョレーヌの胸元に釘付けになり、だらしなく鼻の下を伸ばしてはいたけれど……それはそれ。あの時の表情がだらしなかっただけで、彼自身がだらしない男なわけではないのだ。


 マジョレーヌもまた。

 確かに可愛いしあざといけれど、彼女はふしだらな女の子ではない。あざとさはあくまでも『良い嫁ぎ先確保』の手段なので、誰にでも簡単に身体に触れさせたりしない。

 そんな女を娶りたい男やその生家が『良い嫁ぎ先』である可能性は低く、それよりも遊ばれて捨てられるリスクの方が高いのだから当然である。

 そもそも神殿預かりの聖女であることの利点は『清廉』イメージであり、真にあざとければそれを疎かにはしないし、まず神官がそんな態度を許さない。


 だからこれまでの駆け引きで使ったのは精々『マジョレーヌ側からのうっかりに見せ掛けたボディタッチ』程度だろうし、そんな態度に神官の多少のお目こぼしがあったのも、ふたりが恋愛関係にあり相手がカールハインツのみだったから。


 つまりあのお茶会でのふたりのイチャイチャは、相思相愛が故。


 痣のことを知らないエディトがマジョレーヌを心配していたのは、ふたりが不仲になったことにより王宮にいられなくなった……とか、そういうの。

 カールハインツがわざわざお忍びで嫌っている自分(エディト)のところに来るとしたら、それはまず間違いなくマジョレーヌの為の行為……王家の意思でなく彼の意思で。


 なにかあったにせよ、カールハインツが追い掛けてきたなら、もうエディトの心配は不要(・・)

 どうあれ、あとはふたりが決めることで、その途中で必要ならば力を貸せばいいだけなのだから。



 ──となると、もう自分のことしか考えられない。


 だって、初恋なのだもの!(※22歳にして)


(はっ! ……ゴロゴロ転がっている場合じゃないわ!)


 折角同衾したというのに、別邸ではなにもなく終わってしまった。しかも、もう別々の部屋で寝るのが普通となっている本邸に戻ってしまっている。


(旦那様は『ゆっくりでいい』みたいなことを、常々言ってくれているけれど……)


 本当にそれで大丈夫だろうか。

『じゃあ、いつすんの?』って話だ。


 受け流すことも含めて、今までの人間関係ほぼ受け身であったエディトには距離の詰め方などわからない。


 既にお仕着せられるかたちでの準備は初対面の際、物理的に燃えた伝説の初夜という黒歴史として終了している。

 あれ以降、あのうっすい夜着と共に夫婦の寝室の用意をされたことはない。


 しかもエディトは健康になった今でも、就寝の際には『念の為!』とヘソまで隠れる毛糸のパンツ(※自主制作)を履いている。


(普通に考えたら新妻の『念の為!』おパンツは、どう考えてもコレじゃないわね!?)


 先程の甘やかな空気を考えたら、今夜が本当の初夜となる夜でもおかしくない。

『念の為!』の方向性が著しく間違っていることに気付き、エディトは焦った。(今更)


 自分自身誘い方もわからないが、ユリウスが遠慮気味なのも充分にわかっている。

 一度機会を逃したら、次いつあるかわからないのだ。


 ──コンコン


「ひっ?!」

「エディト」


 そこに来てノック音。+ユリウスの声。


(だだだ旦那様!? 待って待って~!)


 エディトは思った。

『初夜のお誘いである』と。


「入ってもいいかな?」


 心の準備は勿論、おパンツの準備ができていない。


「しょっ……少々お待ちを……!」


 恋をしようが、元々『嫁ぎ先での仕事』と思っていた部分は変わりなく、迫られたら『断る』という選択など考えてなかったエディトにとってこれは一大事である。


 色気のある下着やスケスケ夜着がどこにしまわれているかは不明だが、少なくとも今着てるやつより可愛い下着くらいはチェストの中にあった筈だ。


(アレッ……?! ないっ! ないわ!)


 しかし可愛いやつは侍女が気を利かせ、別邸に持っていく荷に入れていた。

 あるのはエディトの睡眠と健康を慮り、肌触り重視で補充されている、普段用の飾り気のないものばかり。


「えぇ~……!?」

「エディト?」

「あっ! たっ、ただ今!」


 そういう雰囲気になったら『恥ずかしいから暗くして』と言えば下着の形状などわからないが、流石に毛糸のパンツは駄目だ。

 コレだけは脱がなければ、ムードもへったくれもない。


 既に一回台無しにしてるだけに、それだけは避けたいところ。


(とりあえずこれは脱ぐしかないわ!)


 エディトは脱ぎ出した。

 ヘソまである、防寒仕様に自ら編んだガッチガッチの編み目の毛糸パンツを。

 しかし、焦るあまりに上手く脱げず、毛糸のパンツごと下に履いてるパンツも脱げ、


「ああっ?!」


 その際もつれた足のまま、ベッドへと後ろ向きにダイブした。


「エディト? 入るよ」


 そこに入ってきたユリウスが見たものは──


 捲れ上がった夜着から、あられもなく下半身を丸出しにした嫁の姿であった。


 話をしよう(・・・・・)と部屋に入ったユリウスは、一瞬固まった。

 清楚な筈の聖女嫁から、よもやこんなダイレクトなお誘い(・・・)があるとは思わなかったので。


 しかし心当たりはある。


(まさか、こんなに切羽詰まらせていようとは……!)


 とんだ誤解である。

 心当たりも大体誤解だが、極めつけ。


「──す、すまない……! 俺がだらしないばっかりに……君にこんな真似を……」

「ひゃっ?! あっ、いえあああの」

「大丈夫、優しくする……」

「むぐっ?」


 その晩、初夜は無事遂行された。

 話はされず、誤解も解けないまま。


再開一話目なのに大分酷い……


なるべく頑張りますが、ここからの更新は不定期です。

多分毎日ではないと思われますが、終わりまでそこそこの頻度で出すつもりではいます。

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よっしゃああああああ!!!!
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