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長編版 王太子に婚約破棄されましたが幼馴染からの愛に気付いたので問題ありません  作者: 天田 れおぽん @初書籍発売中


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和やかな結婚式

 良く晴れた七月のある日。


 アリシア・ダナン侯爵令嬢とレアン・スタイツ伯爵令息の結婚式は行われることとなった。


 領内にある聖堂では支度部屋にてアリシアの準備が進められていた。


「お式は王都の大聖堂でも良かったのに」


「いえ、お母さま。これからは領民と共に生きるのですもの。こちらを選んで正解ですわ」


 アリシアの母であるニアは娘の支度を手伝いながら嘆くも、当の本人はケロッとした様子で淡々としている。


「わたしは領内の聖堂でお式が出来て、むしろ嬉しいですわ」


 アリシアの結婚式は本人の希望で領内の聖堂で行われることになった。


 ダナン侯爵家の領地は栄えているため、領内の聖堂といってもみすぼらしいものではない。


 むしろ観光資源となっている聖堂である。


「可愛らしくてわたしは好きよ。ねぇ、マイラはどう思う?」


「はい、お嬢さま。王都の大聖堂はもちろん素敵ですけれど、こちらの聖堂も温かみがあって素敵でございます」


「ほら、マイラもこう言っているし。お母さまは心配しすぎよ」


「だって王家にコケにされたのだもの。予算など気にせず思い切り派手にしてもよかったのよ?」


「ふふふ、お母さま。お式にお金をかけてもしかたないわよ。お金をかけるなら、これからの生活にかけるほうがいいわ」


「そう? ドレスも私の着た物でよいなんて言うし。地味すぎではないかしら?」


 マイペースな娘にニアは溜息をついた。


「そんなことはないわ。お母さまのドレス、素敵よ?」


 支度の整ったアリシアは椅子から立ち上がるとクルリと一回転して見せた。 


 レースの襟が付いたウエディングドレスは露出している部分をチュールレースで隠す品の良いデザインになっている。


 白いシルクタフタを覆うようにたっぷりとチュールレースが使われているドレスは、軽やかでありながら華やかなものだ。


 アリシアには、とてもよく似合っていた。


 楽しそうな様子の娘に頬を緩めながらも、ニアは不満げに言う。


「でも一生に一度の結婚式ですもの。王太子殿下の結婚式とまでいかなくても、華やかなものにしても良かったのよ? 予算には余裕があるのだし」


「ふふ。わたしたちのお式にだけお金をかけても仕方ないでしょ? これからいろいろと物入りなのですし、侯爵夫人となれば領民のためにお金を使わなければいけない場面もあるわ」


「それはそうだけれど……アナタにばかり我慢させるのは親として辛いわ」


「お母さま。わたしはもう我慢などしておりませんので大丈夫です」

 

 曇りのない笑顔の娘に、母は「仕方ないわね」といいながら笑みを返した。


 美しい金髪を結い上げたアリシアは、長くて白いベールを金の台座にダイヤモンドを散らしたヘッドドレスで留めている。


 白い手袋をはめた手には白いカラーとスノーボールで作ったブーケ。


 美しく装ったアリシアを何よりも引き立てているのは、その笑顔。


 何の憂いもない花嫁は、母と侍女に付き添われて支度部屋から出て行った。


 高い所にある窓から差し込む光に浮かび上がる聖堂のなか、赤い絨毯の上を父に手を取られてアリシアは進む。


 両側には茶色の長い椅子が並び、近しい貴族や地位のある領民たちが座っている。


 白い花とレースで飾られた聖堂内は、いつもよりも壮麗ではあったが温かみを失うことはない。


 高い天井に響いていくオルガンの音色。


(緊張に体が震えるわ。あぁ、違う。これは緊張だけではないわ。これは……喜び)


 歩む先に愛しい人が見える。


 アリシアは迷いのない足取りで進み、その手を父から夫となる人へと渡された。


 見届け人の前で永遠の愛を誓い、結婚証明書にサインをする。


「ふたりを夫婦と認める」


 厳かでいて明るく響く見届け人の声を合図に巻き起こる拍手と歓声。


「これからはずっと一緒だよ、アリシア」


 レアンがアリシアの耳元でささやく。


「ええ、もちろん。もちろんよ」


 ふたりは繋いだ手をギュッと握り合った。


 式が終わったふたりは、飾り立てられた馬車に乗った。


 領民へのお披露目である。  


 ダナン侯爵領民は、ふたりの結婚を祝福した。


 その手で揺れるのは白くて丸いスノーボールの花。


 スノーボールの花言葉は「茶目っ気」に「誓い」。


「ふふ。領民にも認められたようね。ダナン侯爵さま」


「そうだね。ダナン侯爵夫人」


 レアンは結婚を機にスタイツ伯爵位を優秀な親族男性に譲り、ダナン侯爵となる。


 ふたりの結婚式は、愛する人々に見守られた温かなものとなった。

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