001話 失われた神殿都市
安芸の国、野貝原山 地中の拠点 (ピラミッド遺跡)
「孔明、相談があるんだが...」
『何事でございましょう? 我が君』
「徳川幕府の件も粗方 片付いた。大洋の向こうのメソアメリカの件だ。あっちは今どうなっているんだ?」
『6年前にマヤ文明は滅亡しています。マヤ文明の最後の国家はスペイン人に征服され、マヤ文明は政治的に完全滅亡しました。現在は一部の抵抗勢力が最後の悪あがきをしている最中です』
「そうか...ちょつと遅かったな...あっちへ渡る、ピラミッドのエネルギー充填を頼む」
『畏まりました。阿久利さんをはじめ《資格者》が3人になりましたので大丈夫でしょう。それで誰を同伴しますか?』
「そんなつまらん事を聞くなよ! 正妻を連れて行かないでどうするんだ、あとが怖いからな...オレはこの2年間でしっかり学習したぞ」
イワレヒコの本拠地の野貝原山自体が巨大なピラミッドである。外側から野貝原山を眺めてもなんとなくピラミッドに見えるのだ。
ここには太古の昔から生体転送機が設置されていた、その転送機にエネルギーの充填が開始される。純粋なエネルギーの他、阿久利たち《資格者》の生体エネルギーも必要とした。そのため孔明が《資格者》集めに拘ったのである。古代では《資格者》は『ピラミッドの巫女』と呼ばれていた。
本拠地の生体処置室では阿久利がベッドで眠っている。頭にはヘッドギアを装着して、そのコードは何やら複雑な機械に繋がっている。催眠教育によりマヤの現地語と中世スペイン語をインプットしているのだ。
イワレヒコにはそんな物は必要としない、神の如くの存在である彼は万能である...と信じたい...
阿久利の催眠学習も終了し、マヤの地へ出発する日が来た。彼女の恰好と言えば黒髪のショートヘアーで、茶色のデニムに似た生地のワンピースらしき物を着ていた。分かり易く言うとインディアンの女性の恰好に近い。
「永秀さん、もみじ あとは頼んだわね」
「はい、お任せ下さい」
「姫さま~、お土産を忘れないように。期待してますからねー」
「オレには別れの言葉は無いのかよ...どうなんだ、内蔵助? 」
「いや、直ぐに連絡つきますし、殿に危害が加えられるとは思えません」
「関羽はどうなんだ? 」
「右に同じです」
「それと応援の人選を頼む、あっちじゃあすぐに戦闘になるぞ」
「さっそく張飛隊と許褚隊に準備させましょう」
「あれっ、もう決まっているのか? 」
「はい、手加減せずに大暴れに向いているのは張飛と許褚ですから」
イワレヒコと阿久利は転送室に入る。直径2mの円盤の上にこれを挟むような形でエネルギーグリッドが立っている。円盤の上に乗るとグリッドが徐々に発光し二人は消えたのである。
西暦1704年1月4日の出来事である。
メソアメリカとは、北アメリカと南アメリカの中間に位置し、独自の高度な古代文明が栄えた地域・文化圏のことである。ギリシャ語で「中間」を意味する「メソ(meso)」に由来した言葉である。
メキシコ中部・南半分から、グアテマラ、ベリーズ、エルサルバドル、ホンジュラス西部、ニカラグア、コスタリカの一部を含む一帯をメソアメリカと呼ぶ。
マヤ文明の遺跡は、メキシコ、グアテマラ、ホンジュラスなどユカタン半島を中心とするメソアメリカ地域に数多く点在している。
ティカル(Tikal)は、グアテマラのペテン低地にあったマヤの大都市である。マヤ文明の政治、経済の中心都市として、紀元4世紀から9世紀ごろにかけて繁栄した。
ティカルは熱帯雨林地帯にあり、マヤ文明最大の神殿都市である。最盛期には6万人もの人々が暮していた。
ティカルの地はカリブ海とウスマシンタ川を結ぶ交通の要衝で、翡翠やケツァールの羽根、黒曜石などの貿易が行われていた。
ティカルに集落ができたのは紀元前800年頃と言われている。1世紀までには町は現在の形になり、ピラミッドが作られたと言う。
1696年、スペイン人修道士アンドレス・デ・アベンダーニョ(Andrés de Avendaño)が密林の中に迷い込み、ジャングルにそびえる巨大ピラミッドを発見した。
これがおそらくティカルだったといわれている。この地がティカルと呼ばれて一般に知られるようになったのは19世紀後半に入ってからである。
ティカルは長年に渡って建造された建築物が残っている。もっとも目立つのは「神殿」と呼ばれる階段ピラミッドで、現在は森の中から首を突き出しているように見える。
神殿の前にはたくさんの石碑が立っており、支配者たちの姿が浮き彫りにされたレリーフがある。
ティカルの中央部にある1号神殿は高さ51mのピラミッド状の建築物で、マヤ文明を代表する建築物である。
最上部の神殿入口にあるまぐさ石に、王がジャガーの上に座る彫刻があったために「大ジャガーの神殿」とも呼ばれている。
この大ジャガーの神殿から物語は始まる。
グアテマラ北部 失われた神殿都市 ティカル1号神殿
人々から《ピラミッドの巫女》と呼ばれる神職、ラ・マヤは『大ジャガーの神殿』の前に供え付けられた祭壇の前で朝の祈りをしていた。
突然、頂上の入口が輝きを増して直視出来ない程になる。丁度ジャガーのレリーフがあるあたりだ。助祭の娘たちが騒ぎだしたので、ラ・マヤは祈りを中断して入口に続く階段を見上げたのである。
するとどうだろう、一組の男女が階段をゆっくりと降りてくるではないか。そして近くまでくると声を掛けられた。
「やあ、祈祷ご苦労である。祀られたオレとしては気分がいいぞ」
「あなたはいったい誰ですか?」
「オレはイワレヒコだ」
「わたくしは、妻の阿久利ですわ」
「イワレヒコ...イワレヒコ...イワレヒコ様...まさか我らの神でしょうか?」
イワレヒコを凝視し続けた彼女ははたと気づくと、突然その場に平伏したのだ。
「巫女さま...これはいったいどう言う事でしょうか?」
「お黙りなさい! この方は我らが神《神倭伊波礼毘古命》(かむやまといわれびこのみこと)様であられます。頭が高い!!」
巫女に叱られた助祭たちは秒で平伏したのである。これがいわゆる「ジャンピング土下座」というやつである。




