1-3
***
「詩織、昨日の委員会どうだった?」
委員会の翌朝、教室にくるやいなや、理央がわくわくした目を向けて聞いてくる。
「実はさ…」
あまり騒ぎにもなりたくないから、小声で話した。3組の図書委員は黒川君ではなく、瀬戸君だったこと、そして瀬戸君とペアになって毎週木曜日は委員会の仕事をすることになったこと。
3組の図書委員が黒川君ではなかったことを聞くと、理央も驚いた顔をした。
「図書委員が黒川君って教えてくれた子は、嘘ついていないと思うんだよね。なにかトラブルでもあったのかな」
「そういえば、瀬戸君が代理とは言ってた。急遽変わることになったのかも」
「でもさ、瀬戸君と同じペアなの楽しみだよね?!え、瀬戸君どんな感じだった?」
嬉々として理央が話し続ける。
「昨日は話さなかったし、良くわからない。でも噂で聞く限りは、あんまり真面目なタイプじゃないよね。」
ミルクティーのような明るいベージュの髪に、遅刻しても悪びれない態度。瀬戸君は真面目とは遠いタイプだろう。
「……だから、委員会で同じペアっていうのは、正直ん〜って感じかな」
「たしかに、真面目なイメージないよね。詩織とは合わなそうだけど、接点があるだけで羨ましいよ」
「……羨ましいのかな」
「当たり前じゃん!瀬戸君って学年イチ…いや、校内で1番カッコ良いんじゃないかな。」
まぁ、私は黒川君派だけど、と理央は付け足す。
「とにかく、貴重な機会だからちゃんと顔拝んでおいてね!」
「はいはい」
キンコーン、とチャイムが教室に響く。授業が始まる合図だ。ちょうどチャイムが鳴ったので、この会話はお開きになった。
*
<瀬戸side>
「あ、瀬戸」
朝、教室に入るとすぐに黒川に声をかけられる。
「図書委員、代わってくれてありがとう」
「全然。なんか楽そうな委員会だったし」
本音を言えば、毎週拘束されるのだるいけど。
「俺が生徒会と兼任できるか確認に時間が掛かって、集まりに結局遅れてたよな。本当にごめん」
去年から生徒会を任命されている黒川は、昨日のホームルームで図書委員会にも手を挙げた。生徒会と委員会の兼任ができるのか、確認に時間がかかっていた。結局許可は降りず、急遽黒川の代理をすることになった。そのおかげで俺は、委員会に遅刻する羽目になった。
「まぁ、別に怒られなかったし。後で図書委員の顧問に担任が事情を伝えてくれたみたいだし、大丈夫」
「あのさ、2組の図書委員誰だった?」
「2組って、隣のクラスの?」
あぁ、と肯定する返事が返ってくるが、なぜ2組の奴だけ気にしているのだろう。
2年2組は、そうだ。一緒にペアで仕事をする人か。そこまで思い返すと、昨日当番表兼名簿を受け取ったことを思い出した。
「あ、名簿持ってるわ。ちょっと待って」
机の中から、昨日もらったプリントを取り出す。
「2組は、早見さんって人みたい」
「…詩織か」
「知り合い?」
名前を知っているんだと思い、なんとなく聞いてみる。
「いや、そんなんじゃないんだ。とにかく迷惑かけてごめん」
とすぐに返事が返ってくくる。
「俺のことは気にすんなよ」
「瀬戸、本当に感謝してる」
それ以上2組の図書委員のことも聞かれなかったし、会話はそれだけで終わった。
なんとなく頭の隅に引っかかりを感じるのはなぜだろう。女子と積極的に関わらない黒川が、苗字ではなく名前で呼んだからなのか。
隣のクラスの早見詩織。昨日は遅れてきたから、どんな人がいるか全然覚えてない。彼女はどんな人なんだろうか。




