第八話
兵士を看取った次の日には塹壕待機中のホーバス中隊長の所に戻った。
「シュトラ二等兵、除隊か後方をお願いきたのかね?」
真っ先に聞いてくるホーバス中隊長もグルだったんだろうな。笑いそうになるけど、中隊長も僕を心配してくれてたんだなと思うとお人好しが多いな。だからこそ僕は堂々と言う。
「いえ、ホーバス中隊長の元で戦います!」
僕の答えには中隊長も時が止まり動くのに数秒空いた。僕の答えが予想外だったのが丸分かりだ。
夢で出て来たのはさっき亡くなった兵士でお礼と共にホーバス中隊長の元で戦ってと言われた。夢であったとしても彼からの言葉を信じる。
「先日までは新兵だったのに、俺様たちがどうやって除隊や後方を悩ませた小娘なのに……いい兵士の顔をしてるな。流石は歌姫だな」
突然な言い方に面白いな中隊長とは反対に僕は固まった。
う…歌姫!? どこからそれが出てきたの!? 歌った事なんて重傷者用テント以外ではないのに!?
「昨日、負傷者用テントで子守唄だが歌っただろ。テントの外にも聞こえてな。兵士たちも故郷を思い出したりしてな、戦意高揚や士気も高まってる」
顔は笑顔で固まってあるが、内心両手で顔を覆って恥ずかしがってる。今すぐにでも穴に埋まりたい。
「僕自身あの時が出来る事をしただけです。彼の不安を和らげる為にしただけです」
「戦争やっているとどうしても何を守りたいのか忘れてしまう。でもシュトラ二等兵のお陰で何の為に軍に入ったのかを思い出した奴らが多い。我が国で軍に入る動機は故郷の為、家族の為が多いしな」
遠い目をして空を見ている中隊長の言葉は重くどこまでも深い。中隊長もどこかで経験したのかも知れない。そして軍に入る理由が守る為と言うのが予想外だった。そしてだから帝国は強い訳だ。
「戦えるなら配置に戻りたまえ」
「ご迷惑をお掛けしました」
元の持ち場に戻るとアルベルさんやみんなが驚いた顔していた。まぁ、あんな悲惨なのを見たら除隊すると思うよね。そしてアルベルさんは複雑そうな表情している。除隊や後方を進めたのに前線へと戻ったからだろうね。
「レーナちゃん、歌姫の仕事良かったの?」
最初にクラサさんがからかい混じりで声を掛けてくれた。真っ赤になりそうだけど、耳は熱い。ここまで出来事が広まってるんだ。こうなったら北部戦域では広まってると覚悟してたらいいよね。
「僕の仕事は戦う事です。前はなかった戦う理由が出来たので戻りました」
「後方でも誰も文句は言わないのに」
昨日の夜にあった事を話すと若い兵士の死には悲しみを戦う理由を聞いて共感や感心された。
こんな理由で戦う人は早死にするって言われると思ってた。
「そうだな、こんな戦争だが……死んだ兵士たちの分も戦わないとな。小娘に教わるなんて俺もまだまだだな」
ガハハと笑うカラフさんはどこか嬉しそうで、ミクーさんはウンウンと頷きクラサさんはニコニコしている。アルベルさんはまだ複雑そうな表情している。
「アルベル、これはお前の負けだ。戦う理由がある奴を下げる訳にはいかないだろ。いくら妹と年齢が近いといっても本人の意志だからな」
アルベルの肩を叩いて笑うクラサさんにアルベルは両手を上げて降参した。中隊長の所に行くと言って離れて行く。後方に行かなかったからアルベルさん機嫌悪くなったのかな?
「レーナちゃんのせいじゃない。これはアイツ自身で消化しないといけない事で、これ以上は過保護になるかな」
さっきも言っていたけど、やっぱりアルベルさんは妹さんいたんだね、だから僕への面倒見や心配してくれてんだ。
「クラサさん、アルベルさんの事詳しいですね?」
もしかして軍特有のアレなのかな? こうゆう戦争してるとね、溜まってしまう訳で発散させるのにはそうゆう相手がある訳で。こうゆう世界もあるのか。
でも、なんだろう。想像するとなんか複雑な感じがする。
「レーナちゃん、一応俺は女の子が好きだからね!? アイツとは故郷が一緒なの!? だから好奇心な目はやめて!?」
想像したのかクラサさんは昨日戦場でいた僕とは別の意味で顔を青くしている。
その後ろでカラフさんとミクーさんは壁に手を掛けて笑いを堪えていた。
銃眼のレーナ 設定 裏話
レーナ「今回のは設定で第四話で出た『退避壕』って何?」
作者「大雑把に言えば砲撃から身を守る所。例えばww1ではドイツはコンクリートで作った固い壕や塹壕の所で横に大きな穴を掘り、木の板を四角な張り付けてたのがある。それらの事だね」
レーナ「そんな退避壕があるなら敵は狙いそうなんだけど?」
作者「本来なら短時間じゃなくて長時間砲撃するんだけど、軍事の事を分かってない政治将校だと地獄だよ。立場上、軍将校より政治将校が上な場合もあるから」
レーナ「これ以上は不要だと……政治将校は味方でも厄介なんだ」
チャンチャン♪