第四十五話
作業を続けていると砲撃音が聞こえてきた。またいつもの砲撃かと思っていたが、爆発音が聞こえるが……どちらかと言うと空中から聞こえてくる。その事に違和感があったが、それは杞憂だと思って頭の片隅にいってしまった。
作業が終わって予備塹壕へと歩いていると後方から5台のトラックが通り過ぎていく。
カラフさんが怪訝な目をしてトラックを見ていた。そしてミクーさんと目を合わせて頷きあった。
「おい新兵ども、部隊まで走るぞ!」
疲れが残っている僕らの不満を言うヒマもなく走るので、ライフルを落とさないように着いていくしかなかった。
ミクーさんと並び走って聞いた。なんで走る必要があるのかと。
「軍のモノとは言えとも車高価です。レーナさんもこっちにトラックでも前線までは乗って来なかったですよね。つまり前線に何かが起こったです」
そう説明されたので、前線では敵の大攻勢があったのかと思った。
塹壕への入り口にトラックが止まっていて、簡易のタンカに乗せられた兵士たちが並んでいる。前線からは銃撃音が聞こえてくる。
カラフさんとミクーさんは状況を聞き離れて、新兵たちは負傷者の手当てを手伝いに向かった。僕も向かおうとしたらタンカの上にクラサさんがうつむいて寝ていた。
「クラサさん、一体何があったんですか?」
「あっ、レーナちゃん。やられてしまってね」
恥ずかしそうにしてるクラサさんを見て安心した…余裕あるね。見た感じは撃たれた訳でもなく、下半身を見ると脚の数ヶ所に点々とした血が滲んでいた。
「中隊長に塹壕にいる指揮官に伝言頼まれてその戻る時に負傷したんだよね」
それだけ言うとトラックへと運ばれていった。それを見ていたパットが近付いて来て、ある物を僕に見せてきた。2~3cmくらいの鉄製矢だ。
それはどうゆう兵器か分かった。それはフレシェット弾で間違いない。
主にショットガンの弾や砲弾に使われる。ショットガンの場合だどもっと小さいのが入っているんだが、この大きさだと砲弾クラスだと思う。着弾する前に爆発して矢をばらまく。しかも動かない塹壕の兵士なんて格好の的だ。
カラフさんが戻ってきて状況を教えてくれた。フレシェット弾で前線の塹壕は偶々退避壕にいた兵士以外は全滅、生き残った兵は予備塹壕へと退避した。やがてデューク兵たちが来て塹壕を制圧後は撃ち合いになっていると。ホーバス中隊長と合流するべく向かった。
予備塹壕では楽しそうに指揮してるホーバス中隊長を見て敵の新兵器を撃たれたのに驚きもないとは。
「おぉ、シュトラ二等兵。後方の塹壕は出来たのか?」
「今それを聞きますか?」
「何、こっちは元気に銃撃戦してる所なんでね。もしヒマならシュトラ二等兵も敵の撃退してもいいぞ」
「前は砲撃要請してたのに今回はしないのですか?」
「ふむ、説明するより見たまえ」
潜望鏡を渡され指示された所を見ると、そこにはさっき見掛けたF.E.2の墜落していた。後ろ側がなく観測手の座席が地面に潰されている。あれでは助からない。
そして機体を盾として隠れている厚着した兵士…パイロットなんだろう。走ってこっちに逃げたらいいのにと思っていると右足を押されるので負傷したのか。
退避出来ない味方がいるので砲撃要請が出せないと言う事か。
僕も応戦するべく台に登り、土嚢にライフルを置いて狙いをすまして引き金を引いた。
お互いに隠れて撃ち合っているので命中するのは難しいが……僕なら問題ない。
揺れるフロントサイトがデューク兵の頭に重なり相手の眉間に弾丸を放つと崩れて倒れる。
どこかでアルベルさんもデューク兵を殺しているのだろう。




