第四十三話
再び北部戦域の後方へと戻った。戻ったからってすぐに塹壕行きではなく今日はこのまま待機となっている。いつも通りにホーバス中隊長との一緒のテント。ホーバス中隊長は詳しい戦況を聞きに指令部へと出向いている。
それに対して僕は食事をしていた。蒸かしたじゃがいもに具が少ないスープ……固めのクッキーを食べていた。スープの具が少ないのはあれかな……戦争が長引いてるせいかな。それよりも気になる事があった。訳も分からない所で食べている所にパットが反対側にトレーを置きながら座った。
「よっ、戦場の歌姫」
思わない言葉に口に入れていたじゃがいもが喉に詰まり噎せてしまった。慌てて水で流した込んだ。
それを見ていた周りの兵士たちが笑い出した。
「気付いてなかったな!」「よっ、我が北部戦域の歌姫!」「賭けは俺の勝ちだ!」
不愉快な会話が聞こえてくるがキッと睨むが意味もなくニヤニヤと見られた。
「な…何…それ…戦場…の歌姫」
「前々から……ここで歌姫と言われていたが、休暇の時に首都の噴水広場で歌っただろ。それが記者に撮られたんだよ」
ほれと言わんばかりに新聞を置かれた。黒い虫を見る目で新聞を見ると一面にギターを手に歌っている僕があった。色々と書かれているが批判的なのはなく、最後に書かれていた言葉が印象に残った。
『彼女は戦場で何を見て何を思い歌ったんだろうか』
正直分からないが何かの気持ちがあったかも知れない。
「ちなみに記者の連中が取材の申し込みが広報に殺到してるみたいだ」
「頑固拒否したい」
前世でも真面目な記者ならいい、だけど悪意ある記者の取材されて批判される記事が書かれた事があり嫌っている。
嫌そうな顔している僕にパットは笑いながら手振っている。
「一般はないだろうが……まぁ、従軍記者からは諦めろ。精々戦意高揚に頑張れ……お前の所の中隊長が受けさせると思うが」
「逃げ切ってやる」
ホーバス中隊長なら笑いながらさせるだろう。あの人は僕を危険な所には置かないようにしているみたいだから。
「因みに俺の所属していた残存部隊はそっちの部隊に移行な」
あぁ~、休暇前の作戦でパットがいた部隊は壊滅的被害を受けたんだよね。その際は僕も死にかけたが三回もね!
「パットがこっちに来たのはホーバス中隊長が言ったんだよね」
「正解……何て言ったかはこうだ。編成の書類仕事は面倒だろ、俺様が全員引き受けるって」
ホーバス中隊長が言いそうな言葉だ。僕らの部隊は人員補充出来た訳だ。それも新兵ではなく経験ある兵士が手に入ったと陰で笑っているホーバス中隊長が浮かぶよ。
パットが食事が終わりデザートのクッキーをそのまま食べているのを見てニヤリと復讐を考えた。参照又フラグ回収(第十二話。
「俺としては有能な隊長の元で戦えるならありがたい」
「ホーバス中隊長はモノクルを掛けたら怪しい骨董店の店長だけど、優秀なのは間違いない」
僕はクッキーを割って中身を確認してから食べる。そうしてる姿は僕だけではない。それを見ていたパットは聞いてきた。
「所でレーナ、なんでクッキーを割ってるんだ? それも古参のヤツら」
周りの兵士たちも会話が止まり僕たちの会話を聞いている。やはり、これは新兵への儀式なんだ。
僕は得意気にしながら言ってやった。
「パット、このクッキーは出来てからここに来るまで長い期間ここまで運ばれる。保存の状態だっていい訳がない。まぁ食料全体でもクッキーはいい例だよ……つまり」
「つ…つま…り?」
全部食べたパットの顔が青くなっていくのを見ながら口角が上がってしまう。
「古参たちは中身に虫が入ってないかと確認してるんだよ」
それを言ってしまうと吐きそうな表情しながら青から白くなり走っていく。周りにいた何人かの兵士たちは口を押さえながら走ってどこに行ってしまう……知らなかった人たちだね。それを見ていた古参さんたちは爆笑している。
「まぁ、虫も下手したら今後貴重なたんぱく質なんだよね」
そう言って最後のクッキーを頬張る。因みにそのクッキーの内部からクリミーな味がした。
虫って美味しいヤツいるんだよね。前世今世の経験談だ。




