第二十四話
アルベルさんのツテ……元よいポーカーの貸しで少量ながら液体火薬を分けて貰ってくれた。あとは装備整備科で雷管と硬く細く短い釘、パテを分けて貰った。
液体火薬を貰う際は、アルベルさんが工兵の耳元で何かを囁くと涙目になりながら周りを気にしながら貰った。何を囁いたかは気にしないようする……絶対ロクな事じゃない。
「これでレーナが言っていたヤツを集めたが」
ほとんどの物資はアルベルさんのポーカーの借り…貸し…なんとかなった。その詳細は語らない。知ってもロクにならない。
駐屯地のテントに戻ったら、後は炸裂弾の工程作業となる。まぁ、前世とは離れているけど……作業内容が。
まずはライフルの弾道の先端と中間当たりで切り落とす。そして内部に穴を空ける訳だけど、道具がないので……アルベルさん経由で似た道具を借りる。木に穴を空ける道具(手動)を持ってきた。
先端を切った弾丸の中心に細い穴を空けて液体火薬を注ぐ。並み並み注いだら雷管を置き軽くパテと針の先を雷管に当たるように盛る。そして乾燥。完全に乾燥する前に先端を十字の切り込みをいれる。これで人よほどの場所に当たらない限りはたぶん機能する炸裂弾の出来上がり……疑似。その弾を数個作った。ちょいちょいとパテの大きさや液体火薬の量、穴の深さをの細かさを変えた。
作ったのは初めてで知識はあった。まぁ、疑似であるがアメリカでのとあるドラマからの知識だ………科学走査で犯人を探すドラマでのとある場面だった。あれは穴の空いたライフルにニトロを入れていたけど。
「これで完成なのか?」
「あとは試し撃ちですね」
翌日、二人で射撃場に入るとホーバス中隊長と僕と配属した時同僚…同期生がライフルを構えて狙いの人型の板を撃っている。訓練中かな?
「んっ? どうした、アルベルたち……貴様らは訓練が必要がないくらいの腕前が射撃場に?」
説明はアルベルさんに任せて僕は射撃位置に入る。撃っていた同期が突然やって来た僕を見て撃ち方を止めた。それは気にしないようにして簡易テーブルに書いた紙を置き、試作の炸裂弾を一個ずつ乗せてる。射撃準備が出来たらすまなそうな顔したアルベルさんが戻った。
「レーナ、すまないがホーバス中隊長も興味持って見る事になった」
「まぁ、それはいいですが……それ試作って言ってます?」
「試作と言うと余計にな……あの中隊長は新しいモノ好きでな」
そのあとドデカイため息をしたアルベルさんを見て苦笑してしまう。止められないと理解してると長い付き合いなんだなと思う。
止められないならそのまま見て貰う。………内心もし採用されたら、いちいち作る手間が省ける。
ライフルを構える前に試作の炸裂弾丸の一個をレシバー(機関部)に装填する。そのままボルトを戻してライフルを構えて狙いを定めトリガーに指を置く。射撃場ではなければ戦場では絶対しないトリガーに指を掛けるのは。
揺れるフロントサイト(照星)を見ながらリアサイト(照門)を覗いて呼吸を深く吸い浅く吐く…呼吸や鼓動を落ち着かせて、絶対当たるとわかった瞬間に絞った。
慣れた衝撃を肩に感じながら的を見ると狙っていた腕の部分の的が弾ける。だが浅く…表面だけでとても致命傷ではない。その弾を置かれた欄の紙にバツを入れる。
次の弾を込めて同じように狙いを定めて引き金を絞る。今度は腕が弾け飛ぶ。紙に書かれた文字にマルを入れる。
次の弾を試してマルバツを入れてゆく。そして選別した試作の炸裂弾の試撃が終わった。
「これで全部ですね」
「試作だからこそ、目標まではこれまでか」
マルバツの書いた紙を見てアルベルさんとどの弾がいい位か話をした。破裂する感じや命中率を話してどの弾がいいの比重を比べながら、僕らの考えるよう適正の炸裂弾を決めた。
それをホーバス中隊長に報告すると楽しそうに下顎を撫でて考える。色々な意味で嫌な予感。




