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天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
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兄様とお父様の悩み

人が天罰によって亡くなった描写があります。

ご不快に思われる方 不愉快だと思う方はスルーなさってください。


レティシアがマルブルフ領から帰って半年後。

「お父さん。レティがまさかこんなにやらかしてくれるとは思いもしませんでしたよ。」

「クワの葉を食べる虫…カイクだったか?あれから出来た布ははっきり言って黄金に等しい。伸縮性があって真っ白で染めやすいし、染めても光沢はそのままだし、布同士が触れ合うと小さな音が聞こえるし。王に差し出すのが俺は恐いぞ。」

「キャシーも同じようなことを手紙に書いて来ました。ドレスは勿論、下着をあれで作ったらもう手離せないそうです。」

「しかし、王には上納しなければ。うちとマイエルト領のみで生産することは十年くらいは認められそうではあるが…」

「僕としてはさっさと生産方法を売りたいですね。絶対買いたい貴族がうちやマイエルトに押しかけて来ます。それは願い下げです。出版だけでも大変なのに。」


「そういえばマルブルフのパーシの実も好評らしいな。これといった名産がなかったうちの北部の村々が喜んでいるぞ。」

「渋味を抜いた生の実も美味しいですが、干した実の甘さが衝撃でした。日に干すだけで甘くなるならと、他の果実でも試したいと沢山の村から申し出があります。」

「ああ。そんなのはいい。失敗しても構わないくらいの量で試すように言っておけ。…それよりな…」

「何か問題が?」

「一昨日ユーグリ伯爵とハッバル子爵から手紙が来た。一度レティを連れて領に来ないかと。この二つはうちの領から近い領だし領主とも顔見知りでもあるから一度は行くか招待してもいいと思う。が、他にも二十通ほどレティと王都に来たら王宮に連れて来いだの、是非王都にあるうちの館へだのという手紙やら招待状やら…」

「あー。仕方ないですよ。レティの歌を狙っている貴族は相当います。それに本が加わりましたから。でもレティは好きなようにさせるのがお父さんたちの方針でしたよね?僕は領主としてレティをどう扱えば良いでしょう?」


「ジークには言ってなかったな…俺の従兄弟であり司教でもあるラミアスが過去に一度レティを鑑定した。その後二度と出来なかったが。」

「は?」

「レティは神に愛されている聖女なんだ。結婚してもそれは変わらない。ただレティが嫌がることを無理強いすると天罰が下る。だからレティを私たちは縛らないんだ。」

「…え?」

「今までは誰もレティに危害を加えようとしたり、嫌がることを無理強いすることもなかったから天罰というものがどんなものかわからなかったんだ。」

「わからなかった…わかったんですか?」

「魔法学校のあるエラリナ領は王の直轄地だ。だからトラブルはなかった。だが途中でロブファン領とチャン領を通る必要がある。ロブファンは問題なかったがチャンの領主ケーセがな…」

「ケーセ・リア・チャン子爵は確か二年ほど前に急死しましたよね。彼の長男で現領主のセネカは僕と同窓だから知ってます。あまり急に亡くなったので引き継ぎが大変だとか、急いで結婚しなければとか、色々な愚痴が書かれた手紙が来ましたよ。まさか?」

「まさかだ。当時長子のセネカには婚約者が既にいたが弟のシラーにはいなかっただろう?レティをシラーの婚約者にと何年か前に打診されたことがある。断ったんだが…」

「何か仕掛けてきましたか?」

「最悪だ。盗賊を雇って襲わせて、救い出して恩を売って結婚を無理強いしようとしたらしい。」

「らしい?」

「チャンの領地の外れの山に雷が落ちた。小さな山火事だからすぐ消火されたんだが、焼け跡から何人もの遺体が出てきて、そのあたりを根城にしていた山賊らしいとなった。だが、晴れていたのに落ちた雷を不審に思ったラミアスが…教会の用事にかこつけてレティを迎えに少し早めに出たんだが…彼らの潜んでいたと思われる洞窟の中からその計画書というか契約書を見つけたんだ。それでケーセの館を訪ねたらケーセが急死していて館は大騒ぎ。ケーセはベランダに出た際に雷を受けて死んでいたのさ。胸が焦げていたそうだ。そのどさくさに紛れてラミアスはケーセが執務室の机の引き出しに保管していた件の契約書の写しを持ち出した。無論葬儀に関して教会へ連絡もしたが。

ちなみに館の皆が動揺していたせいか、ラミアスが来た理由については問われなかったから言わずに済んだそうだ。そしてその後でラミアスはレティを迎えに行った衛士と合流したんだ。」


「え…」

「そんな都合のいい雷なんて不自然だろう?」

「いえ、それ以前の問題かと…」

「レティは何も知らない。知らなくていい。実際レティは何もしていない。でも近いうちに一度王都の教会へレティを連れて行こうと思う。そうして王都の教会の石盤を使ってもレティのステイタスがわからなかったら…どんな理由をつけても二度とうちの領から出さないつもりだよ。危険過ぎる。」

「…僕もこれから気をつけます。レティのステイタスがわかったら教えてくださいね。」

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[気になる点] 「どんな理由をつけても二度とうちの領から出さないつもりだよ。危険過ぎる。」 レティシアが領内から出たいとは、思わないと思いますが、「領内からださないつもり」?レティシアの意向によりま…
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