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天衣無縫なお嬢様  作者: 眠熊猫
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アキテーヌン領に戻って

帰りの行程は十二日でした。あっという間に感じた学校生活ですけれど、アキテーヌン領へ帰ってみるとやはり懐かしい!

特に館の周りにある村々には過去に何度も遊びに行きましたから、知っている子が何人かいます。

馬車の窓から私が見つけて声をかけたり手を振ったり。向こうも手を振り返してくれました。

「近いうちに村を訪ねるわね!」

私がそう叫ぶと

「お嬢様は変わらないなぁ〜」とか

「待ってるね〜」とか返事されるのも嬉しかったです。


館にどうぞご一緒に とラミアス司教様を誘いましたが

「教会で会議を開かないと」

と言われたので司教様とは館の前でお別れしました。

館に帰ると、お父様お母様、当主のジークフェルト兄様とサーラリア義姉様と、産まれてもうすぐ一歳になる私の甥のクルートが迎えてくださいました。

皆で家族用のサロンに行くとテーブルにお茶の用意がありました。椅子やソファに座って近況報告。


お母様からはパッチワークがすごく人気になっている話を。綺麗な幾何学模様のベッドカバーやバッグは貴族にも人気なのだそうです。

全て手紡ぎ手織りのこの世界では布は結構高価です。それの再利用が出来るパッチワークは嬉しいもののようで…綿花畑、亜麻畑の面積も広がったそうです。


お父様は養蜂のことを話してくださいました。蜂蜜の生産は順調に増えていること、他の二つの領地でも来年くらいから蜂蜜を特産品として売り出しそうなことを話してくださいました。そうして

「レティシア、我が領地の蜂蜜に付加価値がつけられないだろうか?」

と尋ねられました。うーんと。

「栗もうちの名産でしたよね。栗の花からだけ採取したハチミツとか、薬草の花からだけ採取したハチミツとかを商品にするのはいかがでしょうか?他の花が混ざったハチミツより単一の花から採取したハチミツの方がクセがあるものになりそうです。でもそのクセが好まれる可能性もありますから。またクローバーとかレンゲ、アカシアなどは単一でもクセがあまり無いはずです。」

「試してみるとしよう。」


すると今度はジークフェルト兄様が口を開きました。

「レティ、蜂の巣箱を守る結界の魔法陣を他領に売っても良いだろうか?今アキテーヌ領にいる魔法師三人は全員一応あれが書けるし、結界の範囲を広げることにも成功したから、多少の余裕があるんだ。君も送ってくれたしね。だから…」

「え?ジーク兄様、今までお渡ししなかったのですか?」

「は?」

「だって養蜂に携わる方たちが怪我をしたり巣箱が壊されたりしないようにと考えた結界ですもの。てっきりとうに渡しているものだとばかり思っておりました。…あの結界には不備があるかもしれませんから、我が領でも他領でも検証の必要がありますけれど。」

「なんだって!?」

「えーと。魔法学校の…防御魔法?結界魔法?の研究をなさっている先生がそう仰って。攻撃魔法の先生と改良と検証をなさっている筈です。」

私がジーク兄様にそう返事をしますと、お父様が

「あー…多分それは人を対象として使用する場合の不都合とか、危険性の問題だろうな。巣箱が対象ならあの魔法は充分以上だ。」

と口を挟まれました。あら、そういうわけでしたか。


そうそう!私は私の侍女であるエイダを呼んで絵本と本の原稿を持って来てもらいました。

私はサーラリアお義姉様と甥のクルート、クルートのナニー(養育係であり、クルートの乳母でもあります)のハンナに近づいて絵本の原稿の写し(絵も描いて簡単に糸で綴じたもの)をお渡ししました。

「お義姉様、ハンナ。私、学校に居た間にこんなものを作ってみましたの。小さい子に読んで聞かせたり、子どもが自分で読んだりできるような本があればと思いまして。いかがでしょうか?」

話自体は作り話であること、読み聞かせることで文字や本に興味を持って欲しいことなどを話していると、いつのまにかお父様お母様、ジーク兄様たちに囲まれていました。

「これを出版するとして…需要がどれだけ見込めるか…」

「子どもは毎年、国中のどこかで生まれますわ。母親…貴族に限らず、少し余裕のある平民ならきっと欲しがります。」

「問題ないと僕も思いますよ。お父様。僕が心配なのは、レティ。」

「はい!お兄様。何でしょう?」

「もう少し、こういう本を作れそうかい?話が四つではすぐに飽きられそうだ。」

「あといくつかは作れそうです。…それからこちらも。これは私たちくらいの年代の子の娯楽になりそうではないかと作った話です。」

「へえ、どんな話なんだろう。読んでみたいな。レティ、少しの間借りてもかわないかい?」

「もちろんです。お兄様、読み終わったら感想を聞かせてくださいね。」

「待て。ジーク、おまえが読み終えたら私たちも読む。」

「どうぞよろしくお願いいたします。」


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