まるで作家みたい
アキテーヌン領に私が戻って二年ほどが経ちました。
その間に私が在学中に書いた絵本と小説が出版されて、結構な人気になりました。その結果として。
私はアキテーヌン領付きの魔法師兼作家となってしまいました。
仕事内容はポーション作り(月に四、五日携われば作れる位のノルマ)と、養蜂の巣箱を守る結界の魔法陣作り(こちらは七日分くらいのノルマを課せられました)で。館の魔法師長にまとめてお渡しします。
このノルマを月の内にこなせばひと月分のお給料がいただけます。とても簡単なお仕事です。
薬師としてどこかの村に家を借りて、薬草畑の世話をしながら生計を立てられたらいいな…
と、私は学校から戻った翌日、私の今後の希望を家族に話しました。
すると館の敷地内(といっても館からは相当離れていますけれど)に二階建ての家を造られて
「ここに住むといい。」
とお父様と兄様に言われ。ええ?となったのがおよそ一年半前でした。
私の書いた絵本や本を家族皆が読んでみたところ、全て出版することになり、今後も出来れば書き続けて欲しいと家族全員(次男のランバート兄様とマリエ義姉様からも)言われたのです。
マリエ義姉様は現在妊娠中で、今月の末か来月の初めには第一子が生まれる予定です。それで絵本(原稿)を読んだマリエ義姉様は、生まれて来る子の為に早く絵本が欲しいと現領主のジークフェルド兄様に熱心にお願いしていました。
そして私が書いた絵本や本が順次発売されることになり。先月、全てが発売されました。
おかげさまで好評で、増刷(重版?)を重ねています。
他の領地(王都含む)からも出版したい旨打診があり、印税(というのかしら?出版した本一冊当たり定価の二割)をいただくことで了承したそうです。自領で出版している本も領主の取り分は定価の二割です。
そうしてそのお金は領主と私で折半していまして。
領主であるジーク兄様と私に入って来たお金は軽いめまいを覚えるほどです。
…私、こんなに要らないんですけど。魔法師としていただいているお給料もありますから、充分以上です。
でもジーク兄様もお父様も とりあってくれません。
とりあえず、暇な日が月の半分以上ありますから。
新しいお話を考えたり書き留めたりはしています。
またいくつか賛美歌や歌も作りました。前世で覚えていた歌ではありますが、アクセントやイントネーションに合わせて音を変えたりする必要があるのです。歌詞はもちろんこの世界に合わせる必要があります。固有名詞とか、思想内容とか。賛美歌はそんなに気にしなくても大丈夫ですけれど。普通の歌は本当に気を使います。何しろ封建社会ですから。
幸い私は前世で主婦でしたから身の周りのことや家事は自分で出来ます。なので
「一人で生活出来るから。私一人でも大丈夫よ。」
と言ったのですが、家族も侍女も全然信じてくれません。結局朝と夕方に二時間ずつ、二人の侍女が家のことをする為に来ることになりました。殆ど上げ膳据え膳です。楽ではありますが…少し後ろめたい気がします。
それで月のもう半分くらいは執筆して過ごしています。何だか小説家になったような気分です。
ここに住み始めて異世界転移物語を新たに一冊書いて、シリーズは全三巻で完結しました。そうして絵本は二冊書き上げました。幸いなことにこちらも好評です。
でも今書いているのは物語でも絵本でもない、算数の教科書です。
この世界では足し算引き算までは庶民も文字とともに学びますが、掛け算割り算となるとほぼ貴族と商人だけ。村長でさえあやふやな人の方が多いようです。
ですから、せめて掛け算割り算まで習って欲しくて。
畑の面積とか納屋の体積とかが計算出来るようになればいいなと思っています。
私自身痛感しました。この世界では掛け算の九九を覚えているだけでも断然計算力が違います。だから巻末に九九表をつけるつもりです。
算数の本を書き終えたら子ども向けの簡単な地理や歴史の本、神話の絵本とかも書いてみようかしら?




