最終決戦
民主今平党党本部二階執務室
茶色い法衣を纏った二人の男が珠伊師の前にかしずいている。
「下人の追跡より佐野一家の所在が分かりました」
「しかしてその場所は?」
「山下埠頭一番奥に位置する倉庫でございます」
「さようか」
二人はイワサ坊とサガミ坊となのる岩洞の部下だ。
「直ぐにでも虫けらどもを始末したいが、準備が必要じゃの。そうじゃ。懇親会名目で党員と下人どもを集めようぞ。しかしてその倉庫、持ち主は誰ぞ」
イワサ坊が言う。
「汚い字でございますが、スケロク商事と言う看板が確認出来ました」
その言葉に思わず珠伊師が立ち上がった。
「なんと。スケロク商事とな?」
「さようでございます」とサガミ坊。
珠伊師の表情が鬼となり、さらに大笑いした。
「ぐわっはっは……スケロクもそこにいるのであるか。これはよいよい。好都合じゃ。佐野一家とスケロク商事、ウジ虫どもを一挙にひねり潰せるというものじゃ」
悪鬼と化した珠伊師は喝采する。
「こうなれば早急に懇親会じゃ!」
数日後民主今平党党本部では、宝来警察から交通誘導する警察官や出入りする党員や業者を全てチェックするSP、少人数だが党本部を遠くで取り囲むにするマスコミでごった返した。
無表情の下人達も三々五々、紛れ込むように党本部に入り込む。
「党本部のパーティなど聞いてないぞ。党首の我が儘にはまいるな」
SPの一人がインカムで愚痴ると、イヤホンから別のSPが答えた。
「尾川総理のお気に入り党首だ。無下には出来ないさ。とにかく不審者警備だ」
しかし道路の向かい側、シルバーの警察車両が止まっていることには誰も気がついてはいない。車内には変死体捜査評議会のメンバーの吉川班が見守っている。
広々した地下会議場が立食パーティ会場になった。広いテーブルにグラス類とビール、ワイン、日本酒が所狭しと並べられ、その間を縫うようにつまみの類が大量に置かれた。仕入れ業者が右往左往している。
「本日は急にお集まりいただき大変恐縮いたします。本日は八王子市長選挙の勝利と今後の党勢力拡大に向け、さらなる飛躍を祈願してお集まり頂きました。どうぞご歓談くださいませ」
珠伊師の乾杯を合図に談笑が始まり、複数の輪が出来上がっていった。しかしその中でも談笑の場に入らず無口の下人たちは水ばかり呑んでいる異様な光景も見られた。
いつもなら催眠法力により全員の賛同を得られるのだが――
歓談の輪の中、赤ら顔の党員が珠伊師に近づいてきた。
「八王子では収賄容疑が出ているのようですなあ」
「はい?」
思いがけない問いかけに珠伊師は少し動揺した。
『催眠法力が効いてないのか?』
しかしそらっとぼける珠伊師は、努めて笑顔を絶やさない。
「そのようなことありまして? 初めて聞きましたわ」
暫くして今平党の議員が珠伊師に纏わり付いた。
「公設秘書が何者かによって殺された報道がありましたが、いつの間にか立ち消えてますね」
珠伊師に近寄っては賞賛する中、ぽつりぽつりと尋ねる党員もまた……ここに来て、催眠法力の呪縛から徐々に解かれはじめていることに危惧する珠伊師であった。
「宴たけなわでございますが、遠方から来訪される方もおありでしょうから、ここで一区切りと致します」
バンザーイと言うかけ声と共に、千鳥足で会議場を出る議員や党員達。
彼らにカメラを向け、聞き出そうとする報道陣が取り囲み、宝来警察署の職員が規制する。
「パーティはお開きになったようです」と吉川が携帯から報告すると、頼近の声が届いた。
「なんの変化もないか」
吉川が答える。
「同僚と人数を目視しておりますが、まだ相当数の人間が出てきていませんね」
「まだ夜は長い、引き続き監視、頼むぞ」
「了解」
吉川班が危惧したように三十人足らずの下人衆は残っているのである。
パーティが終わり仕入れ業者が撤退し、閑散とした会議場を見回した珠伊師から笑みが消えた。
珠伊師の前で居残っている下人を珠伊師は睨みつける。
「下人ども」
「へえ……」
「明日の夜、ウジ虫をひねり潰せっ。一匹たりとも残してはならんっ。明日までにガソリン、松明、ナイフ武器を用意せえ。抵抗するウジ虫に遠慮はいらん。焼く手間が省くというものじゃ、骨にせえっ」
「へえ……」
「完了次第岩洞を探すのじゃっ」
「へえ……」
法力が解かれていない下人は答え会議場を後にした。これは前川、SP、報道関係者も確認していた。
その中、前川がカウンターで下人達をカウントする。
執務室に戻った珠伊師が岩洞の控え室にいる二人を呼ぶ。
「イワサ坊とサガミ坊、ここへ参れ」
「は」
二人は直ぐ執務室に入った。この二人は岩洞の催眠法力を補助する役割が与えられている。跪く二人に珠伊師は命令した。
「催眠法力が消えかかっておるっ。至急重ねがけをせえっ」
「かしこまりました」
「さらに、術が解かれた党員どもを催眠させよっ」
顔を見合わせた二人だが、サガミ坊が言った。
「我らは重ねがけしか出来ませぬ」
「何じゃと?」
珠伊師の顔がたちまち鬼になった。
「催眠法力は岩洞法師のみです」とイワサ坊。
「我らはとてもそのような法力、持ち合わせておりませぬ」
二人はひれ伏し、続けてイワサ坊が言う。
「珠伊師様におかれましては、そのようにご説明もうしあげたはずでございます」
サガミ坊が後に続いた。
「珠伊師様はこなす技が多くなり失念されたのではありませぬか?」
確かにそのような……
痛いところを突かれた珠伊師だが、威厳を保つように言い放った。
「黙れっわらわを誰と思っとるのじゃ?」
「ははっ」
頭を床に擦りつけた二人はひれ伏した。
スケロク商事に火を付けるよう下人に命じた珠伊師だったが――
翌深夜二時
深夜の山下埠頭は昼間の喧噪はなくなり、不気味なほど静寂が広がっていた。その中をガソリンを手にし松明を持った下人どもが、スケロク倉庫目掛けわらわらと進行する。
「くるぞ」
祖父江は工事用ヘルメットを被り、メリケンサックをはめ直した。
「くんなら来いよ」
管弦はヘルメットの紐を上げると棒状に切り詰めた樫の木を両手首、両太腿、足首に括り付け、背中にも腰にも設え戦闘の準備をしている。天馬もヘルメットを被る。
倉庫裏口には的場と越狩が侵入を防ぐように切り詰めた単管を握りしめている。
伊東は空になっている一升瓶に水を詰め、左右に持ち構える。
二階事務所ドアの前にはヘルメットとモップを握りしめ、震えている御手洗がいる。
「だ……大丈夫よぉ……襲ってきたらこれでぇ引っ叩くんだからぁ……」
事務所の中では心遥を抱きしめた美代子がいる。
「怖いよお……」
不安がる心遥に佐野が言う。
「大丈夫だよ。この人達がきっと守ってくれる……」
そう言う佐野の声も心なしか震えているようだ。
倉庫の中心部には、車椅子に移乗している杉田と腰掛けてる黒川がいる。
その二人を保護するかのように、仁王立ちの願成寺が単管を握りしめている。
ナイフではない拳銃でもない……みな、ありきたりのもので戦おうとしているのであった。
ガソリンタンクを持った下人がスケロク倉庫前に迫った。
松明に火をつける下人……暗闇だった辺りが急に明るくなった。
下人がガソリンを撒こうとキャップに手をかけた瞬間――「待ってたぜ」
祖父江の声と共に管弦、天馬が出入り口から躍り出た。
それが合図のように、乱闘が始まった。
不意を突かれた下人衆――祖父江のメリケンが下人の額に当たり、バックキックを食らった。
まき散らされたガソリンの臭気が辺りに立ち込めた。
管弦が手にした樫の木を思い切り投げつけると、一直線に飛び下人の喉元に当たり大型ナイフが宙に舞う。
天馬は腰を丸め、火のついた松明を持つ下人に勢いよくショルダーを当てる。バイオボーグの破壊力は絶大だ。下人は松明ごと遙か後方に吹っ飛ばされた。
ドンドン……と言う音共に倉庫裏口が開け放たれる。ナイフを持って飛び出してきた下人に、伊東が一升瓶を振り上げ思い切り殴りつける。
転げた下人に的場と越狩が交互に叩きつける。
二人目が侵入すると的場の一撃――越狩と伊東が転げ落ちた下人を叩き潰す。
急いで下人の侵入を防ぐ為に、的場は裏口を勢いよく閉じ全身の力を振り絞りそれ以後の侵入を防ぐ。
願成寺と越狩は工事用ロープを手にし、下人をグルグル巻きにする。
「まだくんかさッ」
管弦はロングスカートをたくし上げ、太腿から樫の棒を取り出した。
ガシッ……という音共に下人のナイフが右手の樫の棒に食い込む。咄嗟に左手の樫の棒を下人のみぞおちに突き出す。
身体を丸めた天馬が固まっている下人どもに突進する。まるでボウリングのピンのように豪快にはじけ飛んだ。
正当防衛ではない。生きるか死ぬかの死闘だ。
珠伊師は執務室の時計を見る。
『午前三時……もうそろそろ焼き尽くされてもよい時間じゃが』
本来ならけたたましい警察や消防のサイレンが執務室でも聞こえるはずだ――
『下人ども何をしておるっ』
一抹の不安が過った珠伊師は立ち上がり執務室を飛び出した。
「庁官、どちらへ」
玄関前で待機しているSPの二人が珠伊師に迫った。
「五月蠅いッ」
髪を振り乱し悪鬼と化した珠伊師がSPを睨んだ。
「これを見よっ」
珠伊師の目が二人を睨みつけると――
「あ」
その声と共にSPが崩れ落ちた。珠伊師も多少の法力を身につけているのであった。
「そこに眠っておれ。サガミ坊、後を頼んだぞえっ!」
そう叫びながら珠伊師は車に飛び乗り党本部を後にした。
「何がおきたんだ?」
突然の出来事にマスコミも騒然となった。
「タクシー呼べ、追うんだ」
慌てて携帯アプリでタクシーを呼ぶが、少子高齢化の時代、手配がつかないまま珠伊師を見失った。
「行くぞ、弓月」
「はいっ」
マスコミの騒ぎをよそにに、神崎と弓月の乗った捜査車両が、素早く跡を追い始めた。
珠伊師の目には、スケロク倉庫は赤々と燃えている光景が広がっている……はずだった。
しかし倉庫はそのままだ。その周りには呻く多数の下人がのたうち回っている。
『うぬっ』
その光景を目の当たりにした珠伊師は残っている数人の下人に号令をかけた。
「何をしておるっ、下人どもっ」
だが――下人はその場に座り込んでいるだけだ。
それは法力が消えた証拠だった――
戸惑う珠伊師の前に走り込むスケロク商事の面々。
祖父江は言う。
「観念しな」
祖父江の言葉に珠伊師は振り返り、走り去る。
「待てっ」
逃げる珠伊師に右手を伸ばす天馬楓だが、すんでの所で取り逃がした。
追いかけるも視界から消えゆく珠伊師――「逃げ足の速いヤツだっ」
その時、倉庫から白杖を持った男が出てきた。
スケロク倉庫手前でシルバー色のセダンが迫り、白煙と共に急停車した。
状況を確認しながら神崎は弓月に言う。
「応援と救急車手配だ。辺り一帯を封鎖だ」
「はいっ」
「珠伊師はどこだ?」
呻く多数の下人を見ながら神崎が言う。
「黒川がおってるヨ」と管弦。
「弓月、行くぞっ」
「はいっ」
珠伊師は女悪魔といえ所詮女だ。勢いよく逃げだしたが、ゼイゼイ、と息を吐きながら彷徨っている。
その珠伊師を五感を頼りに確実に追い詰める黒川がいる。
神崎と弓月は黒川に追いついた。
「珠伊師はどちらへ?」
神崎の問いに黒川は白杖で行く先を指し示した。
「神崎刑事と弓月刑事ですね」
弓月はサングラスをしている黒川の言動に驚いた。
「何故分かるの?」
黒川は事もなげに言う。
「お二方の体臭です」
縦横に立ち並ぶ倉庫群に黒川は案内する。
「右手に逃げてます」
そう言いながら確信めいた足取りで珠伊師を追う。
右手先に黒い影が見えた。
「行きましょう」
白杖がコツコツと音を立てる。足取りはゆっくりだが珠伊師を追い詰める。
十字路にさしかかった。
「くそ」と神崎は唾棄する。「どっちに逃げた?」
黒川は首をかしげ微かな音を拾った。
「左。無施錠の倉庫に入りました」
確信する黒川。
「この倉庫です」
弓月がドアノブを回しドアを押し開いた。
確かに鍵はかかっていない無人の倉庫で内部は真っ暗だ。
二人の刑事はライトを手にし辺りを照らす。物音もしない。
埃の積もった床に点々と足跡が残っている。
足跡を追いかけていくと上に昇る鉄の階段で途切れた。
「どこにいる珠伊師っ逃げ切れないぞ」
神崎の声が倉庫内に響いた。
ゆっくりと追いついた黒川の耳が微かな音を拾った。
黒川は無言で白杖で指し示した。
その方向にライトを当てると、突如青白い珠伊師の顔が映った。瞬間的に珠伊師は顔を背け、古びた木箱に身を隠した。
「待て」と慌てて階段を駆け上がる二人の刑事。
甲高い靴音が倉庫中に響く。
その後をゆっくりと、しかし確信めいた足取りで黒川があとを追う。
突如、珠伊師の足音が消えた。
とちゅうで弓月のライトが靴を映し出した。
「足音消すために脱いだ?」
足音を悟った珠伊師が脱ぎ捨てたのだ。しかしそれは自尊心も脱ぎ捨てたに等しい。
登り詰めた階段の先では通路が縦横に走っている。
「どっちだ」
光りが倉庫内をグルグル巡るが音はしない。
潜んでいるのか……さらに先に行ったか……
「知恵の回るヤツだ」
カン……カン……二人の後から白杖をつく黒川がやってきた。
「どうしました?」
「見失った」
神崎の声に黒川が白杖を突き出す。
「足音が消えても、残り香が辺りを漂っている」
いとも簡単に指し示す黒川に神崎も驚いた。
「先輩、追いましょう。黒川さんを信じて」
「おう」
下りの階段が見えてきた。しかし黒川は先に進む。所々おりる階段と上る階段が出現するが、構うことなく黒川は前進する。
「珠伊師、逃げても無駄だっ」
時折、神崎は叫びながら歩を進める。
通路の先でスカートと上着が放り出されていた。
「どういう意味だ?」
黒川は平然という。
「脱いだところで、私には無駄です」
さらにその先、尊厳を脱ぎ捨てたブラウスが落ちている……
そう――
残り香を消そうと珠伊師は衣服を脱ぎ捨てたが、それはプライドを捨て、見栄を捨て、威信を捨て、果ては虚無の姿を曝しだしたのだ。
黒川はぼそりと言う。
「何をしても、禍々しい体臭は消えない」
弓月は照らされたブラウスを見つめる。
「やだ、これじゃハダカじゃない?」
「そうまでして逃げ果せると思っているのか」
神崎はその執念を思った。
ガチャン……
頭上で扉が閉まる音が響いた。
「上だ、逃がすものか」
駆け上がる二人の刑事。
階段先には鉄の扉が五つ平行に並んでいる。
「どれだ?」
「先輩、片っ端から開けましょうっ」
階段下から黒川の声が飛ぶ。
「左から二つ目」
まるで見えているかのような黒川の声が轟いた。
「わかった」
神崎がドアノブを回し鉄のドアを開けるとそこは屋上であり、荒れ狂った海風が襲ってきた。
その風は天空の雲を追い払い、怪しげに煌々と屋上を照らす月明かりが――
「いたぞっ」
正面には背中越しのフェンスに寄りかかって大きく息を弾ませている珠伊師を発見した。
風で髪はなびき、鬼のような形相で二人を睨んでいる。
手錠を取り出し近づく神崎と弓月。
「観念しろ、珠伊師和代っ」
突如、珠伊師の形相に変化が現れた。口が大きく裂け、両目がつり上がってゆく。
二人の心象風景が珠伊師を禍々しい鬼に変化する……
珠伊師にとって、この切羽詰まった状況を打破するにはこれしかない。
「わらわの目を見よっ」
その声に刑事二人の身体は金縛りになった。
『か……身体が動かないっ……?』
神崎と弓月――同時に動きを封じこめられた。
「生きとし生けるもの全てが死せる時、霊核は天に昇り魂は地に潜む……」
呪文を唱える珠伊師和代。
二人は今まさに霊核を抜かれようとしていた。
コツ……コツ……
ふとした音に珠伊師の意識が、その方向に向かった。
コツ……コツ……
それは黒川が持っている白杖からの音だ。
「こやつのせいで、わらわは……」
ゆっくりとだが確実に、黒川は珠伊師に近づいてくる。
珠伊師は叫ぶ。
「わらわを見よっ」
黒川はその声に立ち止まった。
「おまえもろとも廃人としてくれようぞっ」
珠伊師は声高に叫んだ。
しかし――ゆっくりとサングラスをとる黒川。
「この目でどうやって見ろ、と?」
両目には眼球はなく瞼が凹んでいるだけだ。
「う」
珠伊師は唸る。
騒がしい音がし出すと、扉から祖父江と管弦、天馬が躍り出たのだ。
「ようやく見つけたぜ」
ニヒルに笑う祖父江。
「くそうっ――最早これまでっ!」
珠伊師が振り返りフェンスによじ登りはじめた。
フェンスの先は眼下に広がる漆黒の海だ。
風に曝され海は白波を立てて逆巻いている――
突然、神崎と弓月の金縛りが解けた。
我に返る二人の刑事。
神崎は叫ぶ。
「止めろ、珠伊師っ」
神崎は止めにかかるが、フェンスの上に立った珠伊師は天に向かって両手をかかげ、叫んだ。
「大神父様、我に力をッ!」
神崎の手が届く寸前、珠伊師は廃屋倉庫の屋上からどす黒い海へ身を投げていった――
帝国日々新聞社の佐野圭一が記事を書き立て、直ぐさま号外が主要な駅前で配られた。
次の週には週刊日々で大々的に報じられ、ウェッブ共々爆発的に売れ、帝国日々新聞社には予想外の売上が記録された。その記事にはスケロク商事の活躍も載っている。
民主今平党は新たな党首を選出したが、泡沫政党と成り下がっていった――
だが浮かれているばかりではない。
珠伊師の残した戦闘型Gドロイドの開発は着々と進み出しているのである。
スケロク倉庫に佐野と編集長が杉田に面会していた。
「これは記事に対しての感謝の気持ちです」
編集長が車椅子の杉田の目の前に紙袋を差し出した。
代わりに受け取った寺家が中を覗くと、帯封でしっかりと巻かれた札束が五束――
「結局、珠伊師和代の生死は不明のままですね」
顔を上げた寺家に佐野は言う。
「警察からの正式発表はこれからですが、まあそのままでしょう。しかし残念だなあ」
「なにがですか?」
寺家に対し佐野は答えた。
「珠伊師は別人、と言うネタを掴んでたんですがねえ」
結局、それは誰なのか永遠の謎だ。
宝来警察署屋上には神崎が一人佇んでいた。
太陽の光に身を包まれる神崎は祈るように呟いた。
『重伝刑事これでよかったのでしょうか……』
いいわよ……重伝の声が響いた。
『神崎、成長したね。これで安心して任せられるわ……』
神崎は空に向かって叫んだ。
「重伝刑事、いかないでくれっ、もっと叱って導いて欲しい」
『大丈夫だよ神崎……その調子で進めばきっと……』
重伝の心の声がだんだんと掠れていった……
第11話 完
※本作は、執筆における誤字脱字の校正および構成の補助として、AIツール(Gemini、Copilot、ClaudeAI、ChatGTP:全てフリー版)を利用しております。物語の核となるプロットや描写は、作者自身の手によるものです。
この章は7000文字を超えてしまい、読みづらいかと思いますが、ストーリーの展開上、何卒ご容赦ください。
珠伊師和代は死んだのか生きているのか……謎を残したまま完了しましたが、スケロクシリーズ、まだまだ続きます。第12話 岸壁の少女(仮題)構想中ですのでしばしお待ちください。




