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ラスボス・クエスト  作者: 中高下零郎
Lv11.犯人はYASUDA
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Lv11.犯人はYASUDA 事件その1

「アタシが大活躍できるシナリオはないの?」

「興奮して彼氏に暴力振るわない彼女はいないの?」


 この日は仲良く4人で大乱闘していたのだが、最下位なのが悔しいのか、俺のコントローラーを勝手に引っこ抜き、おまけに俺にアイアンクローをかけながら動くことのできない俺のキャラをボコボコにしている酷い彼女が突然そんな事を言い出す。


「アタシが、敵をばんばんなぎ倒す、無双みたいなゲームの世界」

「俺その手のゲームはやらないしなあ……ていうか、物語で言うところの主役は俺だと思うんだけど、お前でしゃばりすぎじゃないの? どこの世界のヒロインももう少し慎ましやかだと思うぞ?」

「うるさい! アタシが加入したからにはアタシが主人公!」

「何だこの女……喋りながら相変わらずアイアンクローはかけるし俺のキャラをまだボコボコにしてるし」


 大体黄龍みたいなキャラの立ち位置って、かませ犬って相場が決まってるんだよ。脳筋で自信過剰で猪突猛進。敵組織だったら大将の言う事聞かずに突撃してあっさりやられる四天王最弱のタイプ。頭も悪いし、こいつが大活躍できるシナリオなんてあるわけないと思っていたのだが、


「……ひょっとしたら、あるかもしれないわ」


 一緒になって俺のキャラをボコボコにしている非人道的なラボちゃんはそう言うと、勝手に俺のゲーム棚を探し始める。そしてラボちゃんは1つのCDケースを取り出した。


「あ、懐かしいなそれ。『YASUDA』じゃないか。犯人は」

「ストップ」

「んぐぐ」


 数年前にプレイした推理アドベンチャーとRPGのハイブリッド。有名なミステリ作家が監修したことでも有名だが、それ以上にネットで有名なあのフレーズを言おうとした瞬間、ラボちゃんに口を塞がれる。


「彼女さん、このゲームの犯人って知ってる?」

「やったことないから知らないわ」

「そう。インターネットとか、あんまりしないタイプ?」

「そうね、扱えないわけじゃないけどそこまで使わないわ」

「素晴らしいわ。ちょっとこっち来て」


 うんうんと頷くと、ラボちゃんは俺を部屋の外に連れ出して事情を説明し始めた。


「どういうことさラボちゃん」

「……このゲーム、犯人が有名よね」

「そうだね。ゲーム知らない人でも、そのフレーズは知ってるって人多いよ」


 ゲームの売上はあんまりヒットせずに数万本といったところだが、犯人のネタバレは多分全世界で1億人くらいが知っている。ネットをある程度かじっていれば自然と目につく、それくらい有名なフレーズだ。


「そのおかげで、本格ミステリとしてはもうこのゲームは死んでるわ。そこまで爆発的に売れたわけでもないのに、もうプレイする人は皆犯人知ってるの」

「確かに俺もプレイする前からネタバレ知ってたよ。でもこのゲーム本格ミステリじゃなかった気がするなあ」

「とにかく、何も知らない状態でこのゲームをプレイして、きちんと推理して欲しい、本格ミステリとして今一度誰かに悩んで欲しいというのがこのゲームの望みなのよ。あなたじゃ無理だからこの依頼は諦めていたけど、彼女ならふさわしいわ」

「あいつに推理ができるもんかねえ……」


 とにかく今回は黄龍が主人公役で、俺は助手というポジションでロールプレイするようだ。この俺があいつの助手なんて納得が行かないが、俺は犯人の正体も知っているし仕方がない。主役を任されてワクワクしている黄龍と共に、俺達はYASUDAの世界へと旅立った。




「ふむふむ……『女湯に男の子は何歳まで入っていいか?』かあ、なかなか興味深い記事ね」

「ボス、そろそろ仕事しないと、事務所の家賃が払えませんぜ」

「アンタが助手なのね」


 簡単に説明すると、主人公である黄龍こと売れない探偵、保田が、助手である俺こと安田と一緒に事件を解決していく推理系のゲームだ。オープニング、オンボロの探偵事務所で呑気に新聞を読んでいる黄龍と、呆れながら書類の整理を行う俺。そんな時、事務所の扉が開いて警察っぽい人がやってくる。


「大変でヤンス! 事件でヤンス!」

「どうしたのあーちゃん、その意味不明な語尾は」

「気にしないで欲しいでヤンス! 殺人事件でヤンス!」


 当時プレイした時も感じていたが、殺人事件というシリアスな展開なのにこの語尾で色々と台無しだ。とにかくヤンス警部に連れられて、俺達は殺人事件の現場にやってきた。


「死神である私が死体になるなんて、因果な物ね……」

「死体が喋っちゃ駄目だよ。ていうかラボちゃん死神じゃないでしょ」


 マンションの一室、死体役のラボちゃんがベッドで仰向けになって、お腹に鎌を突き刺されて死んでいる。これだとラボちゃんがドジやって自滅したみたいに見えてしまうのだが、これでも殺人事件らしい。


「被害者の情報は?」

「名前は須屋田でヤンス。死因はこの通り、刃物で胸を刺されてポックリでヤンスね。部屋は完全に密室で、事件の第一発見者も、向かいにあるマンションの住人が窓越しに彼女の死体を見つけて通報という流れでヤンス」

「ふむふむ……特に部屋に怪しい個所は無さそうね。普通に寝込みを襲われたんでしょうけど、問題は密室ってところね。とりあえず、被害者に関する情報とかを集めなきゃね。さあ、行くわよ呉人!」


 頭の良くない黄龍ではあるが一応推理物の基本は知っているようで、部屋の調査は警察に任せてマンションを出て聞き込みを始めることに。マンションを出ると、色々な人間が付近をうろついている。基本的なプレイの流れは一応説明してやろうとするが、彼女はすぐに近くを歩いていた男に駆け寄り、


「はぁっ!」

「ぎゃあ!」


 通行人に話しを聞こうとするどころかいきなりぶん殴ったではありませんか。


「お前何やってんだ!?」

「だってこれRPGなんでしょ? パッケージ裏にそう書いてあったわよ。通行人を倒して情報を集めるゲームなんでしょ?」

「通行人倒して情報を集める推理ゲームがどこにあるんだよ!」


 俺の呆れを帯びた視線にも反省の色を見せることなく、平然と殴り倒した男が立ち上がるのを待ち、


「あなた、ここのマンションに住んでいた須屋田について知っていることはない?」


 殴りはしないものの脅しをかけるように情報を聞こうとする。彼女の中の探偵像は、ハードボイルド系なのだろうか?


「な、何だ君達は! 怪しい奴め!」


 そんな態度で詰問しても簡単に情報を教えてくれる程、ゲームの世界の住人はお人好しではない。やっぱり殴り倒した方がいいんじゃ? と真顔で言っている黄龍に呆れつつ、俺はこの世界で情報を得るための方法をレクチャーすることにした。


「実はお前には、人の精神世界に入る能力があるんだ」

「ふむふむ」

「それを使って住人の精神世界に入り込んで、そこを探索して情報を集めるってわけだ。試しにさっきの男の前でそれっぽいことを念じてみろ」


 言われた通りに彼女が男の前で何かを念じると、一瞬で別世界にワープする。ここがさっきの男の精神世界。ここを探索して、隠している情報とかを見つけだすというわけだ。


「ここからはRPGだぞ、戦闘できるぞよかったな」

「ええ……何なのこのシステム。殴って情報を聞き出すよりも性質が悪くない?」

「気にするなよ。謎解き要素もそれなりにあるからな、俺は基本的に手伝わないから、無い知恵絞って頑張れ」

「助手なのに……?」


 俺は全部知ってるんだからしょうがないだろ、と、早速謎のメモを見つけて読むも縦読みに全く気付かずに四苦八苦する黄龍を眺める。果たして彼女は、真実を解き明かすことができるのだろうか。


YASUDA……PSのゲーム「YAKATA」。綾辻行人の館シリーズをベースとしたRPG。カメラワークがあまりにも酷く、ホラー要素よりもカメラワークの酷さで気持ち悪くなる希有なゲーム。

通行人倒して情報を集める推理ゲーム……FCのゲーム『シャーロックホームズ 伯爵令嬢誘拐事件』。全体的に狂気に満ちている

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