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ラスボス・クエスト  作者: 中高下零郎
Lv6.育てろ、神の子を!
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28/68

Lv6.育てろ、神の子を! 4年目

「お母さん、お父さん、おはようございます」


 現在あーちゃんは13歳。平均以上の体力と賢さを最優先にスケジュールを組んだ結果、平日の朝と昼は勉強をして、夕方からはアルバイトか軽いスポーツをするという、普通の学生みたいな日常になってしまった。


「うーん……何だかこれじゃあ、子供の頃のアタシと同じね。毎日学校に行って、その後はアンタの家に遊びに行くか、トレーニングをするか。ステータスも何だか普通って感じ」

「いいじゃないか。普通に育って普通に幸せになる。それって多分すごいことだよ」

「でも今の時代、平凡な人間じゃ就職できないって雑誌に書いてあったわ」

「確かに……良くも悪くも個性的な人間の方がいいのかなぁ」

「あなたたち、あーちゃんを就職させるつもりなの?」


 相変わらず子育て会議をする俺達。この経験が、将来本当に子供が出来た時に活かされるのだろうか。現在のあーちゃんのステータスは極めて平凡的だ。体力と賢さが平均より上、オタク度が高めなくらいで、運動だとか女らしさだとか、その辺は並レベル。13歳といえば中学生。思春期にも突入してはっちゃける時期だというのに、どこにでもいる、中の上の少女でいいのだろうか、けど下手なことをして失敗した時のリスクを考えると、どうしても保守的になってしまう。そして別に就職活動をあーちゃんがするわけでもないのに、何故か俺達は就職に有利な人間性だとかそんな会話を広げていた。


「あー、ていうかアンタ、進路どうするの? 道場継ぐのもなんかアレだし、進学校でもないし、アタシの頭じゃ大学はまともなとこ行けそうにないわね……あ、スポーツ推薦ならいけるかも」

「つってもお前が得意なのは格闘技だろ? 格闘技で推薦やってるとこなんてあるのかよ? 俺はお前よりは頭がいいけど、それでも中途半端なとこしか行けそうにないや。ゲーム実況のセンスも皆無だったし、日本じゃプロゲーマーなんて流行らないし、そもそも稼げると言われる対戦系のゲームはそんなに得意じゃないし」

「え、ゲーム実況やってたの? アタシにも見せてよ」

「完全な黒歴史だから忘れてくれよ……」


 もう高校二年生の秋。本来なら将来を考えないといけない時期だし、就職活動の準備をしている同級生もいる。子育てをして成長していくあーちゃんを見ていると、どうしても自分達の将来が不安になってしまう。


「こうなったら女レスラーになるしか……」

「ゲーム会社に……いや、俺にとってゲームはやるものであって作るものでは……」


 一度不安になるとスパイラル。高校生で赤ちゃんができちゃって、働かないと、でもどうしようみたいな事になってるカップルみたいだ。平凡なステータスでトラブルも起こらないのであーちゃんとのコミュニケーションを若干放置していたのがまずかったのだろうか、14歳になると変化が起きた。


「……」

「あれ、何かあーちゃん目つき悪くない?」

「ゲーセン行ってくる」


 14歳になって変身したあーちゃん。服装はチェーンがやたらとついたパンクなモノになっており、どことなく他人を見下すような鋭い視線になっている。次の行動は塾で勉強のはずなのだが、あーちゃんはそう言うとゲームセンターに行ってしまう。目を見合わせる俺達。


「これってもしかして……」

「グレた、みたいだね」


 どうやらまた俺達はやらかしてしまったらしい。本家ゲームでも、娘とコミュニケーションを取らないと隠しパラメータであるモラルが下がってしまい、不良になってスケジュールを無視してしまうことがあるらしいが、俺達は大丈夫だろうと高を括っていた。勉強もアルバイトもせずにゲームセンターで遊んだり、夜の街に出かけたりして体力や賢さなどを下げていくあーちゃん。


「だ、大丈夫だ。まだ不良になったばかりだもん。更生できる更生できる」

「そ、そうよね。あーちゃんが帰ってきたら、ちゃんと会話しましょう」

「……」


 そうこうしているうちに家に戻ってくるあーちゃんだが、無言の帰宅。挨拶もしてくれなくなったあーちゃんに俺達が唖然としていると、すぐに翌日になってしまいあーちゃんはまたもスケジュールを無視して家を出て行ってしまった。ゲーム内時間での1年が数時間で終わってしまうような世界だ、先手を打ってコミュニケーションを取らないと大変な事になる。


「ねえパパ、お金ちょーだい」


 今度は娘の方からコミュニケーションを取ってきた。お小遣いはそこそこあげてるはずなのに、まだ遊び足りないらしい。ここは父としての威厳を見せなければ。


「駄目だ、今月のお小遣いはちゃんとあげただろう?」

「あんなんで足りるわけないじゃん。ねえパパ、じゃあ勝負しようよ」

「勝負?」

「うん、ゲームで勝負。私が買ったらお小遣いちょーだい」


 若い頃からゲームセンターで遊んでばかりいたからかオタク度が高いからか、ゲームという単語を出した瞬間少し嬉しそうになるあーちゃん。よし、ここは娘とゲームで遊んで、親子の信頼関係を取り戻そうじゃないかと、あーちゃんとミニゲームで勝負することにする。



「ぐすっ、うう、うえええええん」

「アンタねえ、どこの世界に本気でボコボコにする父親がいるのよ!」


 数分後には完膚なきまでに叩きのめされ、部屋の片隅でぐずぐずと泣いているあーちゃんの姿がいた。懐かしいなあ、小学校の頃はこんな風に黄龍をボコボコにして、リアルでボコボコにされたっけ。接待プレイって難しいよなあ。


「ごめんねあーちゃん、パパにはママからきつく言っておくからね。お小遣いあげるから、これで遊んできなさい」

「うるさいんだよババア」

「……あ?」


 ここは優しくするべきだとあーちゃんを慰めに行った黄龍だが、絶賛グレ中のあーちゃんは3歳くらいしか年の違わない母親に向かってババアと言い放つ。俺よりも遥かに感情的な黄龍が、そう言われて大人しくしていられるはずもなく……


「いだいいだいいだいじぬうううう!」

「なんつった、ねえ今なんつった?」

「おいやめろ馬鹿、お前の馬鹿力じゃマジで骨が折れる」

「アンタは黙ってて!」

「ぐぎゃあ!」


 娘に全力でアームロックを仕掛ける黄龍。止めに入った俺も片手で吹き飛ばしてあーちゃんの細い腕をギリギリと締め付け、解放された頃にはあーちゃんの右腕はぷらーんと垂れ下がっていた。間接外れてやがる。


「ひぐっ……ひぐっ……うわああああああん!」


 間接が外れたまま、泣きながら家を飛び出して行くあーちゃん。今の世なら児童虐待で捕まってもおかしくないというのに。一部始終を見ていたラボちゃんは軽く引いているようだ。


「……てへっ」

「どこの世界に娘に罵倒されて間接外す親がいるんだよ」

「反省して、今後に活かすわ……アタシは頭冷やすから、探してきて頂戴」


 家を出て街をうろつきあーちゃんを探す。本来ならとっくに次のスケジュールが始まるはずだが、主役がいないとゲームが進行しないということなのだろう。


「……ひぐっ、うぐっ、悔しいよお」

「あーちゃん」


 数か所しか移動できる場所がないのがゲームの街だ。すぐにゲームセンターの横で泣いているあーちゃんを見つけて頭を撫でる。すると急に立ち上がり、外れてない方の手を高くつきだして高らかに宣言した。


「……俺、強くなる」

「?」

「俺、強くなる! 武力も、ゲームの腕も、親父達に負けないくらい!」

「お、おう……」


 ちょっと予想してはいなかった展開だが、あーちゃんの目はメラメラと闘志に燃えていて、グレた頃の面影はない。更生に成功し、あーちゃんの進むべき将来のビジョンも見えたようだ。俺っ娘になって、呼び方もお父さんからパパになり、親父になってしまったのはちょっと心配だけど。


「母さん! 体力と根性、運動神経、手先の器用さを重視したスケジュールを組んでくれ!」


 家に帰ったあーちゃんは開口一番、自分のスケジュールについて口を出す。俺としては女らしさとかを伸ばして欲しいものだが、本人がそう望むのなら仕方がないとその通りにスケジュールを組んでやる。


「今までスケジュールに意見することなんて無かったのに、子供はアタシ達の知らないところで、勝手に育つってことね……」

「何いい話っぽくまとめてんだ、あーちゃん間接外れたままだからな、治してやれよ」


 ともあれ、父の厳しさと、母の厳しさにより、少女はまた一つ強くなったのである。一体この子育てはどんな方向に向かっているのか、それは神様だってわからない。



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