Lv5.惰性で恋愛なんてするんじゃねえ! ハーレム
「はぁ……まさか私がここまで喪女だとは思わなかったわ」
「俺も。どうして女ってやつは思わせぶりな態度をとって弄ぶかねえ」
この1ヶ月、俺もラボちゃんも恋人を作るために奔走したのだが、結果は全滅。
シナリオ上仕方がないのだが、今まで攻略してきたヒロインが『雨宮君にはもっといい人いるよ』っとやんわりと断ってくるのはかなり堪える。
「その……」
「何だいラボちゃん」
最初の日のように、二人のフラれ虫が放課後の教室で窓の外を眺めている。ちょっとだけラボちゃんが俺の方に身を寄せて、上目遣いでこちらを見てくる。今のラボちゃん、フラれ続けたことで男ならだれでもいいや的な思考に陥っていた、という設定らしい。嫌だなあ、そんなギャルゲのヒロイン。
「私達、付き合ってみなくなくなくない?」
「え、何言ってるの?」
「や、やあね。じょうだ」
「いるよね、そうやって冗談っぽく告白してフラれた時の予防線貼る人」
「……」
「……」
何も言い返せなくなってお互い無言になる。とっても気まずい。
「ラボちゃん」
「何よ」
いつのまにか半泣き状態になっているラボちゃん。そんなラボちゃんの両肩を両手でがっしりと掴み、
この茶番に終止符を打とうとする。
「俺と、付き合ってみたり?」
「……他にいい人いたら、乗り換えるから」
「じゃあ俺も」
ふんっという顔をして、ラボちゃんが俺の身体に再び肩を寄せる。
こうして妥協という形で俺達は結ばれることになったのだった。めでたしめでたし。
「……ねえ、ラボちゃんの頭の中どうなってるの? 嫌だよこんな後ろ向きな恋。もっとこう、本当に大切な人は近くにいました的な感じでよかったじゃん、何この虚しい結ばれ方」
こうしてラボちゃん編もクリアしたのだが、俺はどうしても納得ができない。
「何言ってるの、素敵じゃない。妥協したまま付き合って、乗り換えることもできずに結局30くらいで焦って結婚するの。で、『子供どうする?』『必要ないでしょ』みたいな愛があんまりない夫婦生活するんだけど、段々と年をとるごとにお互いの魅力に気づくのね。でもその頃にはもう子供も作れない年齢にになっちゃって、哀愁と後悔を持って生きるのよ」
「うわぁ……カッコつけてラボちゃんの茶番に付き合ったことを後悔しそうだ」
恍惚の表情で後ろ向きな恋愛を語るラボちゃん。世の中には恋愛について研究しているラボもあるというのに、このラボはどうしようもないな。
「お疲れ様です兄者。今の兄者なら現実世界でも10人は落とせるでしょう」
再び帝ちゃん含めヒロイン達やモブキャラ達が俺の周りを取り囲み、一斉に拍手をし始める。正直怖いんだけど。
「……」
「心配しなくても落とさないよ」
正妻の余裕を見せつけようとしてもすぐにボロが出てしまう鬼女がこめかみをひくつかせながらこちらを睨んでいる。おお怖い怖い。
「本当は私とも愛を育んで欲しかったのですが、あまり長居するわけにもいきませぬ故。これを教訓に、しっかりと彼女さんと愛を育んでくだされ」
「ああ、代わりに帰ったら帝ちゃん攻略してあげるよ」
「それじゃあそろそろ帰るわよ」
感動の余韻に浸っている暇はあまりないらしく、ラボちゃんが急いで呪文を唱え始める。
「私を忘れないでね、雨宮君!」
「たまには私も攻略してね!」
「ふっ……僕と君は、来世でも結ばれることだろう」
攻略してきたヒロイン達が別れの挨拶をしてくる。すごい愛が重いんだけど。こうして元カノ? 達に見送られ、俺達は今回も無事にちっとも時間のたっていない現実世界に帰ることができたのだ。
「たのしかったねー、わたしもはやくおとなになって、おとなのれんあいしてみたいなあ」
「それは無理なんじゃないかなぁ……」
帰ってきてそうそう、ぴょんぴょん飛び跳ねて恋愛に憧れるあーちゃん。いくら時間が経っても、あーちゃんの姿は子供のままだし、思考回路も成長できないのだろうけど。そこが俺達人間との悲しい差なのだろう。
「心配しなくても、今度大人にしてあげるわよ」
「ほんと?」
「ええ」
あーちゃんを撫でながら意味深な事を言い出すラボちゃん。『大人にしてあげる』ってすごいレズっぽい言葉だよね、嫌いじゃないよ。
「さて、このゲームはもう用済みね。燃やしましょう」
「それはちょっと嫉妬が酷いんじゃないのかな……? それに約束しちゃったんだよね、帝ちゃん攻略するって」
物騒な事を言い始める彼女を嗜めながらゲーム機の電源を入れて、約束通り帝ちゃんを攻略しようとするのだが、どうにも落ち着かない。
「あの、出てってくれる?」
「いいじゃない、減るもんじゃないし」
「おにいちゃんのちょーぜつてくがみたいなー」
「何? 人がいないとできないようなことをするの?」
「いや……」
ギャルゲーは一人で楽しみたい派なのに、女の子3人に見られながらプレイだなんて何の罰ゲームだろうか。いや、ゲームプレイを見学してくれる女の子が3人もいるのにギャルゲーやるのもあれなんだけどさ。
「ちょっと、その選択肢は有り得ないでしょ!」
「よくこんな女心の分からないプレイングで攻略出来たわね。この世界のヒロイン達は馬鹿なのかしら」
「うるせえよお前ら! 女子力皆無の女と恋愛未経験の破滅主義者が何言ってやがる!」
そして気づけば俺よりも二人の方が夢中になっているのであった。お前らがギャルゲーやって女心理解した方がいいんじゃないのか?
◆ ◆ ◆
「いい? 昨日のは特別だけど、もうギャルゲーなんてプレイしちゃ駄目だからね」
「わかってますよ……こんなに嫉妬深い女だとは」
「はぁ? アタシ別に嫉妬深くなんてないわよ。彼女以外の女に興味を持つなんてありえないでしょ。女の子だったら当然の考えだから。本当だったらあーちゃんとラボちゃんも家から追い出したいけど、他に行くあてもないみたいだし、そこはぐっと我慢してるの。アタシの慈悲深さに感謝しなさい?」
「女の子だったら当然の考え? それはウソだろ」
「本当よ。今日クラスの皆に聞いてきてあげるわ」
翌日。黄龍と一緒に学校に向かいながらお小言を聞く。俺もゲームの女とばかり交流してきたから偉そうなことは言えないけれど、そんなもんかねえ?
「え、ちょっとそれは嫉妬が酷いんじゃないかな……? 確かに彼氏がギャルゲーとかやってたり、エッチなビデオとか見てたりするのは嫌だけど、男の子だししょうがないと思うなあ。それだったら、自分だけを見てくれるように頑張ろうってなるし」
「網野ちゃんは男ってのを理解してないからねえ。自分だけを盲目に見てくれるなんて都合のいい存在、それも多感な高校生、いるわけないよ。少女マンガの読みすぎじゃない?」
「そんなんだと彼氏に逃げられるよ、ぷぷぷ」
「あ、あれ……?」
クラスの友人に自分の考えが正しい事を証明させようとする黄龍だったが、友人達に呆れられてしまう。ほらみろ、お前より俺の方が恋愛上級者なんだから素直に従っておけ。
「今日も網野ちゃんは滑稽だねえ」
「あれでも恋人なんだから悪く言わないでくれよ。ああそうだ、これやるよ。お前プレイしてなかっただろ?」
「おっ、ナマガキか。そうそう、地元舞台だしやろうかなーって思ってたんだよね」
滑稽だとは俺も思っているが、友人にニヤニヤとされると腹立たしいものがある。それはそれとして、無事に帝ちゃんもクリアして供養完了したこのゲーム、売りに出すのもあれなので友人にあげることにした。
「呉人」
「どうした黄龍」
その後も友人や園田君と和気藹々と話し込んでいたのだが、クラスメイトにこってりと絞られたらしい黄龍が少し涙目になって声をかけてくる。
「その、アタシが間違ってたみたい。しょうがないから負けを認めるわ」
「おいおい、あの網野ちゃんが負けを認めるなんて、お前どんだけ調教したんだよ」
「お前は黙ってろ」
俺は負けを認めない、暴虐婦人な黄龍も嫌いではないのだが、しおらしい黄龍もまあ嫌いではない。あれ、俺って思ったよりもこいつに惚れてる?
「だから、今日の帰りにデートしてあげるわ」
「えー、デートはちょっと飽きたからしばらくいいや。また今度な」
「!?」
デートに誘われたが、残念ながら今の俺はギャルゲーの世界で8人の女の子と1ヶ月にわたる恋愛を繰り広げ、現実世界でも帝ちゃんを攻略した身。その翌日にデートとか、正直辛い。
「そ、それはどうかと思うよ雨宮君……付き合ってまだあんまり経ってないのに」
「所詮こいつもギャルゲばっかやってる馬鹿だからな……女心がわかるわけがない」
園田君と友人が、可哀想な人を見る目で俺を見てくる。
「冗談に決まってるだろ……は、ははは」
割と本気でまた今度デートすればいいだろと思っていたが、クラスの女子の軽蔑するような視線に耐えかねて発言を撤回するヘタレな俺。
「本当? じゃあ地下プロレス行くわよ。今日は何とインキュバス吾朗が出演するの」
「(うわあ行きたくねえ……)」
こうして俺の放課後は、むさくるしい漢達の熱い戦いに割かれてしまったのだった。というか彼氏にはあんな事を言っておきながら、目を輝かせてプロレスラーに夢中になるのはどうなんだ? と、嫉妬深くなってしまう。お似合いカップルですなあ。




