『REVOLT』第一話「革命」
界には五つの勢力が存在する。
人間。
天使。
悪魔。
AI。
怪物。
それぞれが己の正義を掲げ、終わることのない戦争を繰り返していた。
誰もが、この世界は変わらないと信じていた。
――ただ一人。
世界に革命を起こそうとする、一人の武器職人が現れるまでは。
『REVOLT』
第一話「革命」
世界は、終わらない戦争の中にあった。
空には純白の翼を広げた天使が舞い、神の名の下に光の槍を降らせる。
地上では、感情を持たぬAI兵団が無数の砲口を並べ、生命を機械的に排除していた。
そして、その狭間では悪魔たちが血を浴びながら嗤う。
「殺せ!」
「秩序を乱す者を裁け!」
《対象確認。殲滅を開始します。》
爆発。
悲鳴。
炎。
世界は、誰かの正義によって焼かれ続けていた。
勝者などいない。
あるのは終わらない戦争だけ。
そんな戦場のど真ん中を、一人の男が歩いていた。
黒いロングコートを羽織り、腰には二本の剣。
砲撃がすぐ横で炸裂しても、その足は止まらない。
天使の一人が男に気づく。
「……あれは。」
目を見開いた。
「革命家レヴァンだ!!」
その一言で、戦場の空気が変わった。
悪魔が顔色を変える。
「なんでこんな所にいる……!」
AIの赤い瞳が点滅する。
《危険度:SSS》
《革命家レヴァンを確認》
《全戦力を対象へ変更》
さっきまで互いに殺し合っていた三勢力が、一斉にレヴァンへ武器を向けた。
レヴァンはため息をつく。
「……目的地へ行くだけなんだが。」
返事の代わりに放たれたのは、数え切れないほどの攻撃だった。
光の槍。
銃弾。
呪術。
レーザー。
空も地上も、逃げ場はない。
レヴァンは静かに一本の剣を抜いた。
黒紫に染まった刀身。
見る者すべてに嫌悪感を抱かせる禍々しい魔剣。
その剣は、斬った者の異能を奪い、自らの力とする。
数え切れない戦いの中で喰らった能力は、今も剣の中に眠っていた。
レヴァンは短く呟く。
「──地震。」
その瞬間。
大地が割れた。
轟音と共に巨大な亀裂が走り、AI兵器も悪魔もまとめて奈落へ飲み込まれていく。
崩れ落ちる戦車。
砕け散る鋼鉄。
悲鳴が地の底へ吸い込まれた。
間髪入れず、レヴァンはもう一つの能力を解放する。
「──爆発。」
世界が白く染まった。
空にいた天使たちが一斉に爆炎へ包まれる。
純白の翼が燃え落ち、光の羽が灰となって舞った。
静寂。
ほんの数秒前まで戦場だった場所は、廃墟へと姿を変えていた。
レヴァンは剣を納める。
何事もなかったように歩き出す。
彼が目指すのは戦場ではない。
悪魔領。
そこにある奴隷市場だった――。
悪魔領――。
戦場の喧騒とは対照的に、そこには異様な静けさがあった。
錆びついた鉄格子。
腐臭の漂う檻。
鎖に繋がれた奴隷たちは、誰一人として顔を上げようとしない。
「さぁ見ろ! 人間! 怪物! 珍しい奴隷も揃ってるぞ!」
悪魔の商人が下品な笑みを浮かべる。
「革命家サマも買い物か?」
レヴァンは何も答えず、檻の前を歩き続ける。
その時だった。
一つの檻の奥から、鋭い視線が突き刺さる。
傷だらけの怪物。
全身は血で汚れ、片腕には重い枷。
それでも、その瞳だけは死んでいなかった。
怒り。
憎しみ。
絶望。
それらすべてを抱えながらも、世界を睨み返していた。
レヴァンは足を止める。
怪物は唸る。
「……見せ物じゃねぇ。」
レヴァンは静かに笑った。
「いい眼だ。」
怪物は黙ったまま睨み返す。
レヴァンは続ける。
「その怒り。」
「俺の革命に寄こせ。」
市場中が笑いに包まれた。
「革命だってよ!」
「その化け物に何ができる!」
「すぐ死ぬさ!」
レヴァンは商人へ袋を投げる。
中には金貨がぎっしり詰まっていた。
商人の目が輝く。
「毎度あり!」
枷が外される。
怪物は自由になった。
それでも逃げようとはしない。
レヴァンを見る。
「……俺を何に使う。」
レヴァンは背を向けたまま答える。
「好きに考えろ。」
二人は市場を後にした。
しばらく沈黙が続く。
その静寂を破ったのは、空から降る光だった。
「発見!」
「革命家レヴァンを確認!」
天使の部隊。
同時に地面を揺らしながらAI兵団も現れる。
《排除を開始します》
銃口が並ぶ。
レーザー砲が充填される。
ジンが拳を握る。
「来るぞ!」
レヴァンは静かに目を閉じた。
「……仕方ない。」
黒い紋様が首筋から広がっていく。
空気が変わる。
悪魔との契約。
十分快。
その間だけ、未来のすべてが見える。
銃弾が飛ぶ。
レヴァンは半歩だけ動く。
弾丸は髪をかすめることすらできない。
光の槍。
レーザー。
爆撃。
すべてを紙一重でかわし続ける。
ジンは息を呑む。
「見えてるのか……?」
レヴァンは答えない。
ただ剣を振るう。
敵は一人、また一人と倒れていく。
十分後。
最後の敵が倒れた。
静寂。
そして――。
「ぐっ……!」
レヴァンの身体が震える。
黒い紋様が全身へ広がる。
悪魔の声が頭の中に響く。
侵蝕。
レヴァンは自分の腕へ牙を立てた。
肉が裂ける。
血が噴き出す。
それでも噛み続ける。
「来るな……!」
ジンが駆け寄ろうとする。
「レヴァン!」
「来るなァァァッ!!」
黒い殺気が爆発した。
ジンの足が止まる。
本能が叫ぶ。
逃げろ、と。
だが。
レヴァンは震えながら叫んだ。
「仲間だけは……!」
「傷つけねぇ……!!」
その言葉に、ジンの表情が変わる。
恐怖ではない。
覚悟だった。
「……バカ野郎。」
ジンは一歩踏み出す。
そして暴れるレヴァンを力いっぱい抱き締めた。
「誰が逃げるかよ、主。」
「五分だろ。」
「俺が死んでも、お前を止めてやる。」
レヴァンは苦しみながら叫ぶ。
ジンは決して離さない。
五分後。
黒い紋様は静かに消えていった。
レヴァンはゆっくりと目を開ける。
ジンはボロボロになりながら笑っていた。
「……終わったか。」
レヴァンは立ち上がる。
「行くぞ。」
ジンが尋ねる。
「どこへ。」
レヴァンは遠くの空を見上げた。
「まずは――」
一拍置く。
「四天王を潰す。」
世界を変えるための革命が、静かに幕を開けた。
──第1話 完──
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
第1話では、主人公レヴァンと相棒ジンの出会い、そして物語の始まりを描きました。
まだ明かされていない謎や、四天王、XZなど、これから少しずつ世界が広がっていきます。
『REVOLT』を楽しんでいただけたら嬉しいです。




