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009 僕の変化

入院5日目、

僕は自分のいい加減さと、無知さ加減を知る事となりました。


そう、「スマホ」は「スマートフォン」と言います。

「フォン」とは「電話」を指す言葉です。

「スマホ」とは、携帯電話の一種なのです。と、言う事で…

自分自身が携帯禁止空域で「電話かけてる訳じゃないから」と、

電源をoffにしない…、「携帯禁止空域」を理解できていない人間で…、

携帯禁止空域でメールしたり、

スマホを起動する「愚か者」の一人だと彼女に気付かされたのです……。


自分より、3歳程年若き彼女は、

・・・「(ことわり)」・・・

「こと・を・わって・人が知った・その物の内の事」を考える事が出来る。

何が何の為に駄目なのか、

禁止される具体的な理由を推測する事が出来る。

「何故・どうして・そうなったのか」質問された時、

論理的に応える事が出来る「ロジカルシンキングな女性」であり、

僕の愚痴を頷きながら聴いて、更に細かく僕に訊いて…、

ちゃんと共感してくれて、妥協点を…、

妥協策を一緒に模索してくれる「御姉さんタイプ」な人間である事……。

退院後…、

退院出来なくても自由になったら「叶えたい望み」を語れる…、

「大人びた夢見る少女」である事を僕は知る事が出来ました。


そんな彼女から指摘された事柄…、

携帯は、「電源がoffでない限り」使わなくても、

「定期的に基地局と通信している」から、「携帯禁止空域」では、

「電源をoffにしなければイケナイ」と言う常識にて…、

彼女は知らないけれど…、それでも彼女は、僕の命の恩人になりました……。


僕自身が携帯を…スマホをoffにしていなかったのと…、

それどころか…スマホを気軽に使用していた事で…、

点滴に接続されている「輸液ポンプ」や、

「シリンジポンプ」が誤作動した可能性があり……。

入院してから、この日までに何度か、

体調が悪くなって検査を受けなければいけない事態に直面していた事実…、

それが、彼女に注意されoffにしたのを境に…、無くなった現実が…

「偶然」とは考え難い真実として…、僕の中に残ったのです……。


電波対策をしたペースメーカーでも、

「30cm以内にチカヅケテハイケナイ」そんな常識さえ…、

今までの僕には意味の無さない情報でしたが…、

彼女の御蔭で「医療機器における電波障害の恐ろしさ」と、

医療機器を身に付けて生きなければイケナイ者にとっての日常的な恐怖、

スマホ普及の為に、命を脅かされる者の存在を知り…、

僕がその事を、今まで「眉唾物」程度にしか考えておらず、

それ程、本気で気にしていなかった現状を「怖い事だ」と、

本気で思うようになりました……。


本当は何にも分かっていなかった僕は、この時…、

自分が無知である事を理解してちゃんと知ろうとし、

知った事をちゃんと理解している彼女に、恋をしたのかもしれません……。


互いの母への愚痴を言い合い…、僕の親より不条理な彼女の親を知り…、

彼女の母親が信じる宗教が嫌いになり、

僕は、彼女の人としての器の大きさを知りました。


日本人は特に、

ピアスや入れ墨を「親から貰った体に傷を付けて!」と批判する。

そんな宗教的な風習があります。海外の一部の地域の様に、

生前の姿のまま土葬する風習があるからではなく…、

葬儀が終われば焼いて骨にしまうのに…、

死体に傷を付ける事、生体移植を死体損壊的な思いを込めて、

批判する者達が存在するのです……。

生きている人間が分け与えられる臓器に関しても、

「親から貰った体に傷を付けるだなんて!」と批判します。

そう言えば…、明らかに他殺かも!なのに、

捜査過程で検視を強く拒む傾向が強いのが日本人です。


彼女の母親は、そんな宗教上の理由で、

彼女が移植を希望する事を禁止し、「綺麗な体のままで死ね」と、

「死後の世界の自分の為に必要な事」だと、

「今を犠牲にする事」を「今を活きる事を規制する事」を強要。

その結果で、傷跡だらけになった両腕を彼女に見せつけられ、

その現実を受け入れられずに逃げてしまったのだそうです。


でも、彼女は…、自分と母親を捨てた「父親」を…、

「現実を受け入れる事が出来ない可哀想な人」だったのだと許し…、

自分を今の状態に陥れた「母親」を…、

「何かに縋らないと生きていけない弱い人間」だからと許し…、

「今を生きる者を救わない宗教」を…、

「誰かを虐げ、虚勢を張っていないと生きられない人達」なのだと、

「仕方が無い」のだと諦めて許せる人……。

僕は、怒りと憤りを消化した後の諦めに近い感情を秘め、

儚げな優しさを身に纏った彼女の事が愛おしくなりました。


彼女を現状から救い出す術を知らない僕は、

『力にもなれない自分が嫌になるよ』と、本気の本音を零しました。

すると彼女は、

『自分でも嫌になる自分でいちゃ駄目だよ!

多少の現実逃避をスパイスに、

内面だけでも、自分が好きになれる自分で居なくちゃ』と笑顔で、

僕を気遣ってくれました。

年下の彼女にアドバイスされ、苦笑するしかありません。


そんな時に、彼女が好きな曲がラジオから流れてきました。

僕が自分の親に頼んで持ち込んだ乾電池の御蔭で、

彼女が好きな曲が流れるFMラジオを受信できるようになったのです。

彼女はその大好きな曲を聴きながら例え話を始めます。

『私なら…天使に翼を貰って、野外ライブ会場にひとっ飛び!

屋台で御飯食べながら、ライブで完全燃焼して、

疲れたら星空を眺めながら、天使の腕の中で眠りたい!

きっと楽しくて、ネガティブな考えなんて消えてなくなるわ!』だって、

突拍子もない発想と、天使発言には驚いたけど…

そう語る、彼女の笑顔に…僕は、とても救われた気がします……。


『良い考えでしょ?

そうそう、チャンスがあったら私の天使になってくれてもいいのよ』

不意を突いた彼女の言葉に、僕の心臓は大きく高鳴りました。

でも、どうやったら、彼女の為の天使とやらになれるのだろうか?

僕は『がんばるよ』と、それだけ言って、彼女に微笑み返します。

でも、僕は本気で、

彼女に「翼を与えられる大人になりたい」と思い、願いました。

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