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直子は、そのまま真っ直ぐ家に帰らず、亜希子の家に行った。
「どうしたの?この服!」
ブティックの袋から直子が出したワンピースを見て、亜希子は目を丸くする。
「さっき買ってきたの」
「いったいどういう心境の変化?踊ろいた!」
直子は、たどたどしくも一昨日の電話の事を離した。
その日の夕方、直子が店から家に帰ると、家の中には誰もいなかった。妹の伝言が電話の上に貼り付けられていた。
”バイトに行ってきます。竹田さんちです。帰りは9時になります。”
妹の茜は、自立心旺盛で、現在高校2年生だが、いくつかのバイトを掛け持ちしている。
家で働けばいいのに、としか思ってなかった直子とは、偉い違いだった。
部屋に戻り、バッグから携帯を取り出すと、着信の履歴があった。電話に気付かず、留守電に変わっていた。
何気なく再生してみると、聞き覚えのない声が流れた。
「もしもし、あの・・・高木直子さんの携帯でしょうか?」
『はい。そうです。』
と、思わず答えそうになる。
「森田慎也といいます。先日、ハンカチを貸して貰った物です。返すのも兼ねて、も一度お会いしたいと思ったので、お電話しました。連絡お待ちしています。携帯番号は○×○ー○○○・・・」
慎也は、電話番号を言い、
「何時でもいいです。待ってますので・・・」
そして、電話は切れた。
「17時15分です。このメッセージを・・・」
と電話が機械的な声で録音された時間をいった。
直子は、胸がドキドキしていた。密かに彼からの電話を待ちわびていたのだから。
いかにお尻が痛かったとは言え、直子はそう軽々しく電話番号を教えるような娘ではない。
確かに、クリーニング代を渡さないと思っていたし、それで教えたとも言える。けれど、それだけではないかも、と帰ってからずっと考えていのだ。
なかなかの容姿だったし、服のセンスもよかった。そして、何よりもあの心配そうな表情と、謝る彼の姿に交換を持った。考えてみれば、彼の被害の方が、直子よりもずっと酷いのだから。
それに対して、謝りたいから、もう一度会いたいと思ったのか、それとも・・・
両親は、8時を過ぎないと戻ってこないし、姉の典子は旅行に行っている。直子は、緊張しながらも、リターンボタンの3を押した。