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1話 異世界転移大成功…?


――チュンチュン、ジジジジジ。


 鳥の鳴き声がする。瞼越しに太陽の光が入ってきてるのも朝を感じる。

 ――よかった、あれは夢だったんだ。確かに犬を助けに川の中に入った。そしてその後すぐに意識が落ちたのも確か。死んでしまうかも、という恐怖心があんな変な自称神様を名乗る汚いおじさんが出てくる悪夢を見てしまったんだ。


 ――ヌルリ。


 今も恐怖心が残ってるのか顔が冷たくなったしな。


 ――ヌルッ、ヌルリ。


確かに怖かった。いきなり貴方はぽっくり死にました、だとか、でも本当は無駄死にだったんです、とか。

 ……ん、なんだろう、この寒気。恐怖心は恐怖心でも命の危機、的な。しかも、なんか生臭いし。……ん??


 

 ――()()()()()――??



「んなわけあるかーーーーいッッ!!?恐怖心感じて生臭さ感じるわけあるかーーーーーッッ!!?」


 ――カッ!


 と目を強く見開く。すると眩しい光と共に僕の視界にドブみたいな色が目に入る。

 開き立ててで霞む目を細めながらピントを合わせると、()()の全貌を視界に捉える。

 思わず絶句した。


 ――カエルだ。トラック1台分はあるんじゃないか、と思うくらいにとんでもなくでっかい、カエル。


 そんなカエルが僕の顔を覗き込むように見下ろしていた。そして、


 ――ヌロォ…。


 と音がしそうな程に大きな舌を僕に伸ばす。


「ヒィっ…!!?」


 その舌が届く前に身体を捩る。顔の横を掠めていった舌はやっぱり生臭かった。


「ギィイイイイ…?ゲコッ、ゲコォッ??」


 ギョロギョロとカエルが目を動かす。自分の顎の下は見えないらしく顔を忙しく動かしている。


 ……よし…!このままなんとか、逃れれば…!!


 バレないように身体を起こして立ちあがり、走って逃げようととしたその時だった。


「――えっ。」


 カエルに気を取られていて足元の小さな石ころに気付かなかった。


 ――ガッ!ズシャア!!


 と派手な音を立てて転んでしまった。

 その瞬間、カエルがものすごいスピードで下を向いてこちらを覗いてきたと思った瞬間だった。身体に強い痛みが走った。


「ウッ!!?…ッ!なんだよッ!これ、舌っ…!?」


 痛みの部分を見下ろせば、ピンク色の物が体にグルグル巻き付いていた。


 かろうじて動く右手を使い、抜け出そうとするも、奴の涎のせいかヌルヌルと、するだけで然程効果は無かった。


「クソォッ…!!!」


 まさか、また死んでしまうのか…??そう思いジワリ、と涙が目を濡らす。

 そんな時だった。ふと頭の中に、先ほどの自称神様の、


――『ワシの力奪う気か!?』


 という単語が頭に浮かんだ。


 ……もし、もしも、本当にあの自称神様が本当の神様なら。それ相応の力を持ってるはず。魔法とか、そういう類の。でなければ、奪う気か?なんて言わないはず。


 ――ゴクリ、と唾を飲む。


 ……まさか、そんなことが…?いやいやあるわけない。あんなの夢だ。否。……なら、この状況を甘んじて受け入れるのか?それは……


 ――もっと否だ。間違いでもいい。恥ずかしくてもいい。賭けないで死ぬより、賭けて死んでやる…!!


 諦めて降ろしかけた右手の手のひらをカエルに向け焦点を合わせる。


 身体の中を駆け回るように何かが巡る。熱くて、寒くて。痛くて、苦しい。まるで力が大きいが故に制御ができてない、みたいな。

 それが手のひらに集まった瞬間、目を大きく見開き、大声で叫んだ。


「はぁーーーーなぁーーーーせぇえええええええええっ!!!!!!!」


 ――ドォオオオオン!!


 そう叫んだ瞬間手のひらを介してカエルの方にものすごい速度で大量の水が渦のように噴出する。


「ッ、ハァッ、ハァッ…!!ゲホ、ゴホッ…!!」


 ズル、と身体からカエルの舌が離れる。形になれなかったものすごい量の水が辺りを霧の様に覆いカエルがどうなったか分からない。

……頼むから、倒れてて欲しい。少なくとも舌が僕の体から離れたのだから気絶くらいはしてて欲しい。

 そう思い霧が晴れてきたので目を凝らした瞬間だった。思わず悲鳴を上げてしまった。


「……??……ヒィッ!!?」


 ――見せられないよ!ただいま映像が乱れております。ピーーーッ、ザーーーッ、モザイクなど様々な規制表現技法が脳裏に浮かんでは消える。

 ……ウン、ドウシヨ…コレ。


 そりゃあ、確かに?あまりの恐怖心にいい歳しながら泣きそうになったのは認める。

 だからってコレはないと思う。なにもカエルの首を胴体から離さなくったってさ…。


 




「うん。コレでよしっと。」


 手のひらの土をパンパン、と落とす。その上に十字架に木の棒を重ねておいて手を合わせる。


 神様の力は、とても便利な物だった。

 物は試しに、と自分にバフをかけれるか試してみた。すると、身体にさっきと同じ様な感覚が走り、次の瞬間には身体に力が漲るのが分かった。

 ……あまりに感動してどこまでやれるのか試した結果カエルのお墓を作ってしまっていた。


 ……これは、ここだけの秘密である。


 と、冗談はさておき。僕は今とてつもなく危機的状況にある。


 というのも、今いるここはどこなんだろう、とか、もしかしてここってさっきみたいな巨大カエルの他にも大きなモンスターはいるんだろうか?とか。挙げればキリがない。


「あの自称神様め…!自分の力が全部僕に奪われたことに気を取られて僕の今後考えてないな…!?ていうか力は取ってないんだけどね!?」


 そもそもあのじいさん、自分から僕に対してホレホレ〜なんて小馬鹿にしながら指振ってたじゃないか!あれって僕のせいなのかな?思い出したら腹立ってきたぞ。なんかムカつくから神様なんて呼んでやるもんか…!あんなのは神おじで、充分だ!!

 1人で怒りながら辺りを見渡す。見れば見るほど今いるのが森の中なんだ、という事実が胸を埋め尽くす。


「待って。もしここで動いて変な方向に歩みを進めたら……下手したら遭難で死ぬ、って、こと…?」


 ――ブルリ。


 と身体が震える。恐怖のせいで身体に寒気が走る。良くない想像が頭に浮かんでは消えて、を何回か繰り返す。



 ――例えばこの道をまっすぐ抜けていって抜けた先が崖でそのまま落ちたらどうしよう?


 だとか、


 ――例えばあっちの道を歩いていったらさっきのカエルのモンスターよりでっかいモンスターがいたらどうしよう!?


 とか、


 ――例えば後ろの道を歩いていったら永遠と死ぬまで彷徨う羽目になったらどうしよう…!?


 だとか。



「………………。」


 自分の悪い想像に思わず絶句する。でも実際問題大事なのはそこなんだよなぁ、下手に動いて何も収穫がなく、神おじ曰く二度目の人生を終えることになるのは嫌すぎる。


「とはいえ、結果がどうであれ動かなきゃなんだよな〜…。なにか、地図みたいな物があればいいんだけど………あ。」


 地図。さっきカエルに対してなにか魔法みたいな物が出せたんだから神おじの力で近い何かが出せたりしないかな?

 そう考えついて手のひらを胸の前で上に向ける。

 ひぃいい、恥ずかしい。なんだろう、おそらく出るだろう!って分かってても言葉に出すのが恥ずかしい…!!

 ……なんだよ!!僕は日本で普通に過ごしてきた男子高校生だぞ!?そんな日常的に魔法の発動詠唱なんかしてるわけないだろ!?!?

 誰に言ってるんだ?って?自分だよ!!!


「うぅ…、マップ、おーぷん……。」


 ――ヴォン!


「う、うぉおおおお……!出た!出た…!!!」


 手のひらの上にはA3の画用紙を縦に三枚並べたくらいの大きさの半透明な地図が出現した。

 ……本当にアニメとかで良く見る様に出てくるんだな…。

 1人でいたく感心していてふと思う。これって自分のステータス?とかも出せるんじゃないだろうか。

 心の中でさっきの羞恥心を大きく上回る好奇心が顔を覗かせる。

 どことなく不安、希望、期待、憧憬、そんなものが頭を埋め尽くす。

 僕は自分の身体の前に腕を伸ばして誰もが一度は言ったことがあるはずの言葉を口に出していた。



「“ステータスオープン!!”」

 

 


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