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史上最強の4匹  作者: カイワレ大根
53/59

53話 軍人の実力

更新遅くなってすみません(まああまり見てる人いないと思うけど)


思ったより魔人が強くなっちゃった。大丈夫かな

「ふう、意外と早かったな」


白目をむいて、痙攣するエリカを顧みず宗司は牢から脱出する。鍵は彼女の内ポケットにあった。


「前にアミキリと稽古していて良かったというべきか」


この世界には、大きく分けて三種類の人間がおり、魔人、庸人、獣人と呼ばれている。

庸人が、いわゆる宗司たち人間である。

その中で魔人は、魔力を扱うことにたけており、魔力以外を扱うのが得意ではない。あるいは、その生涯で、それら力を扱うことなく死んでゆくものもいる。

その代わり魔力に関しては抜きんでており、庸人、獣人が十年かけて行う回路製作、解析を、半年で完了させ、予備動作なしで、庸人の魔法陣使用時と同等の魔術を行使してくる。

それゆえに、魔法以外の危機感が足りないところはある。魔法以外の力の対策が遅れているともいうが。

一対一の試合であれば問題はないが、今回の場面ではそうではない。エリカの敗因はそれだ。

宗司は体術を使い、解毒したのち、魂術を使い、エリカを行動不能にした。


「地図、コンパスが必要だな」


マーキングを施せば、どこからでも一瞬で移動できるのが瞬間移動なのだが、宗司はまだそこまでの練度と力量を持っていない。


「固有回路ばっかりに頼ってた弊害だな」


正也たちよりも遅れている。帰ったら基礎のやり直しだな、そういえば将軍は武器に頼りっぱなしはいけないと、ある程度力のコントロールができるようになったら杖を回収したな、と、すでに無事に帰ることを前提で考えている宗司であったが、事はそう甘くはない。


「追手か」


体術を用いた気配感知で、船内部の人数と位置を把握しつつ、なるべく体力を温存しながら、船からの脱出を図る。


「当たりだな」


今回宗司がとっさに身を隠した場所は、倉庫だった。


(いたるところに罠が仕掛けられてるな)


眼に体力を集中させ視力を上げつつ、眼球を魔力で覆うことで、魔力場の様子から、罠の場所を避けつつ、目的の物を探る。


(罠の性質が分からない以上、うかつに飛び越えることは出来ないけど)


宗司には『電光石火』があるため、飛び越えることすらせずに、移動が可能だ。


「・・・あるわけないか」


艦内を逃げ回る最中、船の様子を見ていたが、かなり技術が確立されていることが見て取れた。

そんな施設内に、わざわざレトロな羅針盤や紙製の地図がある可能性は少ないと宗司は薄々察していた。


(いざ電波障害、魔術障害が起きたときに、そういうアナログなものは必須だが、そういうのは大抵すぐに目につく場所にあるからな。倉庫にあるわけないか。他に何か役立ちそうなものは、、、)


訳の分からないもの、かさばるもの、ある程度重量のあるものを除いて、いくつか選んでいると、視界の端に、気になるものが映る。


「・・・」


それは薬品が並んである棚にある、紫色の液体の入ったフラスコだ。


「・・・」


それもついでに懐へしまい、周りに気配がなくなったところで、再び出口を求めて、倉庫を出る。

広く、通路も煩雑な艦内を、警戒しながら進んでゆく。途中、魔人に会わぬように。


「・・・どうするか」


その過程で得た物は、大雑把な艦内の構造と、どうしてもいけないいくつかの部屋の存在だった。

それらの部屋に通ずる扉には常に二人の見張りがおり、隙が無い。


「・・・手荒な真似をする羽目になるとは」


窓でもあればと嘆くが、無いものをいくら嘆いたところで現実は変わらない。

宗司は息をひそめて待った。


「・・・」


ひとりの魔人が近くを通りかかる。

宗司は死角より近づき、迅速に、静かに意識を刈り取る。


「ふぅ、まさか仕込みが役立つとは」


思い出すのは、コバンとのデート。

・・・いや、あれはデートではない。訓練だ。


『こういう占領ゲーで勝ちたかったら、奇襲と締め技は最低限押さえないとね~』


ゲーム内牢獄の中で、彼女の片手に頬を玩ばれた記憶がよみがえる。


「はぁ」


気絶させた魔人軍人を人気のない倉庫に連れ込み、持ち物と服を拝借する。


「ロクなもの持ってないな」


ともあれ、変装、準備を済ませた宗司は、どの扉から行くか検討する。

元の世界の軍艦であれば、場所にもそれなりの見当が付くが、異世界、更に魔法の、自分が知る艦の形状とはまるで違う戦艦。


(しらみつぶし、か)


宗司は船内を歩く。

そして、誰とも会わずに扉の前へたどり着いた。


「止まれ」


そう指示され、宗司はおとなしく止まる。それがそも当然かのように、顔色一つ変えずに。


「所属と名前は」

「船内雑務科、バビンソンです。担当業務を終え、退艦するところです」


流れるように、少しの緊張を混ぜながらはっきりと所属を答える。

新兵の服を奪えたことは幸運だった。名前もこの服持ち主のものだ。


「今、管内では捕虜が脱走し潜んでいる。余計な兵は邪魔だ。すぐに退艦せよ」


(捕虜呼びかよ)


しかし宗司が睨んだ通り、新兵の名前と顔が一致しているものは少ない。


「大変恐れ入ります。当方新兵なもので、迷ってしまい、舷門までの通路をお教え願います」

「・・・」


奥の扉が開き、中へ見張りが入っていく。

ちらりと見たところ、会議室、またはそれに類するものなのだろうか、それなりの人数がいた。


「着いてこい」


中から二人の兵を連れた見張りはそのまま見張りの業務に戻り、兵二人に連れられ宗司は廊下を進む。

しばらく歩けばまた見張りの居る扉にたどり着いた。


「「お疲れ様です」」


見張りは敬礼をして兵に挨拶し、兵も敬礼をもって答える。

同じく宗司も敬礼をする。


「ここだ」

「お手数おかけして申し訳ありません。有難うございました」


案内係に礼をしてからドアノブに手をかけ外に出ようとする。


―――しかし、失敗した。


「・・・罠だったか」


扉の向こうに待っていたのは、清々しい外の景色でも、荘厳溢れる本部に続く渡り廊下でもない。

扉の向こうは、先ほどちらっと見えた会議室。丁寧に、銃口、魔力の籠った掌、魔法具などなどをこちらに向ける、魔人もセットだ。


「個人の識別は出来ていたのか、それとも、ここの慣習に疎いせいか」

「両方だ」


宗司の問いかけとも言えない独り言に、律義に返答したのは、副船長のアルティッテ少佐だ。


「一人一人魔力波が違う。指紋のようにな。鼠一匹見分けるのは訳ない」

「わざわざありがとう。こんな悠長に話してくれるとは思わなかったよ」

「もはや貴様は袋の鼠。おとなしく両手を頭の後ろで組め。痛い目にはあいたくないだろう?」


アルティッテ少将が降伏勧告をすると、一人の魔人が布テープ、一種の拘束具を持って宗司に近寄る。


「・・・」


宗司はゆっくりと掌を上に持ち上げていき、、、


「!」


肩まで上げたとき、魔人たちの司会から、その姿を消した。


「動くな」


宗司は、アルティッテ少将の側頭部に魔法陣をかざしながら、彼に命令する。


「全員、武装解除しろ。上官の命が惜しければな」


しかし、魔人兵たちは相変わらず銃口を宗司に向け続けた。


「ッ、チッ。おい、お前、部下たちに武装解除するよう命令しろ」


よく訓練されているのか、上司に人望が無いのか、十中八九前者であると推察した宗司は、上司から武装解除するように仕向ける。が、


「却下だ」


軍人らしい、洗練させた動きで、宗司は腕を背中に回され、その場に組み伏せられてしまった。


「ッ!」


宗司は何とか、固有回路でアルティッテの拘束から逃れる。


「クッ」

「・・・瞬間移動系の加護か」


初の実戦で、周りには敵しかいない。宗司に緊張が走る。


「なぜ逃げる?」

「あ?」


アルティッテから、意味不明な質問が投げかけられる。


「逃げれば逃げるだけ、お前が不利になるだけだ。お前は魔力を使っていないようだが、どちらにしろ、何かを成すには相応のエネルギー消費が必要だ。この数相手に逃げるのは至難。不可能に近い」

「・・・どうかな。試してみるか?」


悠然と、余裕綽々と立つアルティッテに、宗司は腰を低く構えながら挑発する。


「虚勢を張るな。時間稼ぎか?だが長期化すればこちらも本気を出す。そうすればお前はより悲惨な目にあうぞ。ここには誰も助けには来ない」

「助けを求めているように見えたか?」

「海の国の国民は自国民には極端に甘い。が、お前は外様。異世界から来て、まだ一年もたっていない。ならばあいつらが自分と身内を危機にさらしてまでも来るはずがないだろう」

「・・・」


宗司は何も答えない。ただ、挑発のための不敵な笑みを消し、アルティッテを見据えるのみ。


「仮に酔狂なやつがいたとしても、手は打ってある。諦めろ」


(エリュシアのことか)


宗司は牢で見た、あのエリュシアの側だけ被った誰かのことを思い出した。


「・・・それで、おれがハイそうですかって、言うと思っているのか?」

「そうか。ならば手荒くいかせてもらおう。まずは移動だ」

「!」


宗司の首が締まる。外部回路省略魔術。予備動作なしの瞬間移動。を三回。

折るつもりでつかんだ腕が、宗司の掌から消える。

辺りはいつの間にか、殺風景な部屋へと変貌していた。


(ドアも窓もない。暴れても問題ない部屋ね)


合図はなくとも、火蓋は切って落とされた。

宗司は一瞬で間合いを詰め、がら空きの弱点に一撃を与え、手早く終わらせようとしたが、既で避けられる。

基礎的な身体能力向上のみの魔力操作、相手も同じく。体力、魂力の扱いに多少長けていることで、宗司が有利かとも思えるが、伊達に軍人ではない。武術の心得は宗司をはるかにしのぐ。


「武術もできるんだな。魔術しか取り柄がないと思っていたよ」


掴まれ、締められそうになったところで固有回路で抜け出す。それを幾度か繰り返す。


「よくある誤解だな。魔力だけなら、一般魔族でも使える。その先に立つ軍人は、魔力が長けて当たり前だ」


一撃一撃が防御しがたい一撃。まともに食らえば決着はつく。だがそれはすべての戦闘で同じだ。

互いに難儀な相手だと心の奥で悪態をつく。


(エリュシアの魔獣以下。だけど的確に急所を突いてくる。やりにくい。さらに魔族ときた。どんな魔術を隠し持っているか。それに前髪で目が隠れているから視線も分かりづらい)

(学生と聞いていたが、ここまでとは。魔族の俺に、魔法を使わせない立ち回り。接触型の魔法も、表面を魔力で守っているから効きが悪い。魔力を身体能力と術に割る振っているおれと違い、魔力を防御に全振りできる。だから魔力量に圧倒的な差があっても効きづらいのか)


攻める、躱す、攻める、躱す、カウンター、捌く、その繰り返し。戦況は拮抗。


「ここまでやるとはな。どうだ、今ここで降参するのであれば、こちらでかくまってやることもできるぞ」

「ここまで来て揺さぶりか?」


戦いの合間、一歩引いたアルティッテが提案をするが、宗司はそれには乗らない。


「我らの任務はお前らをある国まで護送すること。おそらくその国に、というか、海の国以外に行くことをお前は拒否しているのだろう。ならばこちらでダミーを作り、お前をかくまうこともできるぞ?」

「なら最初からそうすればよかっただろう。今さら何を言っている」

「それは―――」

「それに、」


宗司は固有回路で瞬時に距離を詰め、術を妨害する。


「ばれていたか」

「エリュシアについて言及しなかった時点で見えている」


―――ここで、アルティッテが呆ける。本気で意外そうな視線を向ける。


「驚いたな。お前は他者とのなれ合いが嫌いだと知らされていたが」


誰に―――、と問おうと口を開こうとした瞬間、宗司は思い至る。


(エリュシアの記憶を覗いたのか)


そういう技術があることは知っている。授業で習った。通常そう言った技術は、安全性と倫理観により、厳しい試験をパスしたものだけに許可された術だが、相手は軍人、ここは軍事施設内。順当だ。


「こっちこそ驚いたぞ。まさか魂力を扱えると、は!」


宗司は距離を詰める。またしても攻撃を避けられる。

宗司は瞬時に体を逸らす。レーザーが宗司の横を通り過ぎた。

と同時に宗司が固有回路でアルティッテの近くへ。体を逸らした勢いでけりを叩き込む算段だ。

が、またしても紙一重で躱される。

すぐに体勢を立て直し懐へも潜り込み近接戦に持ち込もうとする。先ほどのように遠くから魔法を撃たれるのが嫌だからだ。

が、


「代われ」


宗司でも、アルティッテのものでもない声が聞こえた。

心臓が締まる、鳥肌が立つ、そんな気配を覚え、宗司は自ら大きく後ろへ下がる。


「!っ」


鼻から流れ出る液体の感触と、口にほのかに香る鉄の味で、宗司は初めて自分が負傷したことを悟る。


「誰だ」


金髪黒色肌の男は蒼眼で宗司を射抜き、後頭部をかきながら獰猛な笑みを浮かべて前へ出る。


「本任務の大隊長を任命されているロードルハンだ。階級は中佐」

「ご丁寧にどうも」


宗司は悪態をつきながら鼻血を拭い捨てる。


「後方支援や作戦立案のほうが得意とはいえ、軍人、アルティッテ少佐と互角とはな」


ロードルハンが宗司に称賛を送る。それに対し宗司は、今まで戦っていた相手の名前を知れたことと、相手が正面戦闘を専門にしていないことを冷静に飲み込んでいた。


(まあ、ブラフかもしれないけど)


「まさか中佐が出張ってくるとはね。サキュバスの尋問官と言い、よほど人手不足と見える」

「いや、尋問官はともかく、これは俺がやりたいから出てきただけ」


この魔人も、こちらの挑発に乗らない。やはりやりづらい、優秀な人たちだ。宗司は内心穏やかではない。


「だからよ、簡単にへばるなよ」


次作を考える間もなく、ロードルハンは襲い掛かってくる。

宗司が避けることが出来たのは、はっきり言って運が良かった割合が大きい。間で頭を大きく右にずらしたらもともと頭のあったところに拳が、巨腕があらわれた。


「ッ!」


宗司は大きく後ろへとぶ。その際ちらと触れて分かったが、あの筋肉の硬さは異常だ。

本来、魔力量が多い魔人と遠距離の魔法勝負をすることは避けたい。魔力量が目測で、アルティッテの十倍はあろう魔人が相手ならなおさら。

が、そんなことも言ってられない。


「油でも使っているのか!」


次にロードルハンが行ったのは、宗司の危惧していたもの。

思わず突っ込みたくなるほどの効果力の炎。それを横薙ぎに放つ。


「クッ!」


上は論外、下は隙間なし。左はすでに炎が迫る。右へ逃げるしかない。当然そこにはロードルハンが。


(なんで自分が撃った魔法より早く動けるんだよ)


大振りの腕。宗司は大きく、しかし最小限に避け、カウンターを叩き込もうとする。

が、


「カハッ!・・・あ゙!」


ロードルハンの膝が、宗司の鳩尾に入る。


「フェイント。分らなかったのか?」


そんなわけない。あんなにわかりやすい攻撃、宗司はフェイントとすぐわかった。

が、フェイント用の力のこもっていない拳、そこにあれほどの魔力がこもっていれば、軽く避ける、なんて選択肢は愚策だ。


「うーん、残念」


自分に当たることのなかった帯電する右足が地面に落ちるのを眺め、ロードルハンはつぶやく。


(ここまで、か)


宗司は意識を手放した。

術行使時の威力は印≧魔法陣≧詠唱.≧無の順ですが、誤差みたいなもんですし、追撃のしやすさや、バフの掛けやすい回路は人によって違うので、一概にこれがいいというものはないです。魔人は個人主義かつ威力重視なので印を使う人が多いです。

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