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史上最強の4匹  作者: カイワレ大根
20/52

20話 学校に入ったからって、道は絞られない

「どうしたどうした!体育祭じゃぞ?!祭りじゃ祭り!もっと盛り上がらんかい!」


しんと静まり返った生徒たちを見てオルカ先生は教卓をたたきながら不満を口にする。

その言葉にハッとし、次々と生徒が盛り上がる。


「「「イエーイ!」」」

「「「体育祭だー!」」」


しかし宗司や真司、そのほか数人の生徒は黙ったままだった。その中の一部の生徒は頭を抱えてうずくまっている。


ほんの数分教室が盛り上がった後、黙っていた生徒の一人が立ち上がった。

そして手を頭の上に持っていき、指をパチンと鳴らした。その音は決して大きいものではなく、騒がしい教室の中ではすぐにかき消えてしまうような音だったが、指を鳴らした後、教室は静かになり、教室中のみんなが彼女に注目していた。

彼女は教室が静かになったことを確認すると、その赤く鋭い目をマブナのほうに向け、顎で彼を教室の前へ行くよう指示した。


「・・・わかった、わかったからそんなに睨むなよイサザ」


そう言って体育委員長であるマブナと副体育委員長であるイサザは黒板の前に立った。


「おーし、じゃ二人とも、説明頼むわい」


オルカ先生は黒板の端から二人に説明を促した。


「えー、体育祭がもうすぐですね。まあこの学校の体育祭は有名なので説明は大丈夫ですね」


マブナがそういうと隣にいたイサザがマブナの頭をグーで殴った。


「・・・えー、一応説明すると、体育祭の種目は一種目、全校生徒を巻き込んだデスマッチですね」


聞き間違いだろうか、今、デスマッチと聞こえた気がした。

真司の不安をよそに、マブナが競技の詳しい説明をし、イサザが黒板にルールを書いていく。


「会場は学校全域で、時間は来月の18日9時から19日9時までの24時間。当日は名前の入ったハチマキが配られるので、それを肌身離さず持っといてください。ハチマキをなくすと脱落です。奪い取ったハチマキの数によって景品がもらえます」


なるほど、騎馬戦を個人単位で行うようなものだ。

デスマッチと聞いて身構えた真司だったが、内容を理解すると肩の力が抜けた。


「学校の外へ行くこと、相手を殺すこと、学校外の人を巻き込むことは原則禁止です。逆にそれ以外なら何をしてもダイジョブでーす。違反について、どうしてもな時は、担当の先生の許可を取ってください」


かなり物騒な競技らしい。

宗司と真司は「何を言ってるんだ?」という面持ちで聞いていたが、ほかの生徒先生はさも当然のものを聞いているというような、つまらなそうに話を聞いている。


「一応五人までチームを組みことができます。その場合、チーム一人でもハチマキを失うとチーム全体が失格になるそうです。説明は以上ですね」


説明を終えると、マブナとイサザは自分の席に戻っていった。

オルカ先生は教卓の前に立ち、「各々準備頑張れ」と崖言って学級活動を締めた。


みんなは帰り支度を始めた。真司は体育祭のことがまだ呑み込めずにいた。

そのため、みんなと同じように帰り支度をしている宗司に相談しようとした。


「ちょ、一条、一条」

「どうした?」

「どうしたっていうか、お前は分かった?体育祭のこと」

「ああ、うん。さすが異世界だよね」

「いやまあ、そうなんだけど、あれ以外にないのかな、説明」

「マブナに聞いてみたらいいんじゃないかな。僕はあれ以上ないと思うけどね」


そう言って宗司は帰っていった。どうやら友達と約束しているらしく、数人と一緒に教室を後にした。

仕方なく、真司はマブナのところへ行き、説明を求めた。


「そんなこと言われても、あれ以上ないよ。逆に何説明すりゃいいの?」


真司に説明を求められたマブナは困り顔でそう答えた。

真司は、自分が何に疑問を抱いているかを考え、ひとつずつ聞いていくことにした。


「あー、俺が一番気になっているのはあれ、何をしてもいいってところ」

「そのまんまだよ。ハチマキを奪うために殴ったり、けったり、術、回路使ったり」

「え、何それ、危なくね?それが普通なの?」

「この体育祭はこの学校特有だね。さすがって感じだよね」


そう言ってマブナが「ははは」と笑った。

真司はそんなマブナとこの学校が理解できなかった。


「いやいや、この学校大丈夫なの?」

「ん?もしかしてこの学校のこと知らずに入ってきた感じ?」


マブナは真司の違和感に気付き逆に質問してきた。


「え、うん。将、お世話になっている人がこの学校に入るようにしたから」

「あーなるほど。そんじゃ、説明すっけど、ここは将来軍にかかわるような仕事に就きたい人が来る学校だ。以上」


予想以上に短い説明と、その中に含まれた聞き捨てならない単語に、真司はフリーズした。


「・・・は?軍?」

「うん、軍」

「は?いやいや、あー、うん、わかった」


なんで自分がこの学校に入ることになったのか、軍とはどういうことか、軍事訓練施設にしては緩くないかなど、真司の頭には様々な疑問が浮かんだが、これ以上マブナに聞くとかなり時間がかかりそうなので真司はとりあえず、話を切り上げることにした。


真司は魔法の練習をする前にナガツカさんに連絡し、いつ頃時間が取れるのか、説明してほしいね異様についてを連絡した。

その後真司は、先日と同じようにアシロの協力の下、魔法の訓練を行った。

アシロは今日はいくつかの本を持ってきていた。その本には「魔導書(基礎)」と書かれていた。


「この本は?」

「魔法の基礎の本よ。じゃ、はじめましょう」


真司とアシロは魔法の訓練を始めた。途中、アシロが見本を見せたり、魔導書を呼んで、描かれていることを実践したり、意識して魔法を発動させたりした。

その間、アシロは先日のように真司のことを観察するのではなく、岩の壁をサンドバック代わりにしていた。

その岩の壁が次々に穴だらけになっていく様子を横目に見て引きながら、真司は魔法を撃ち続けた。

時折「はっ!」という掛け声と鈍い音が聞こえてくる。

何の音かを振り返れば、アシロが後ろ回し蹴りで壁をけって音だった。岩の壁に大きな亀裂が入っているのを見て、アシロには逆らわないでおこうと真司は心の中で決意する。


日が傾き、空が茜色に染まるころ。


「・・・できた。できたー!」


真司はそう言って天高く拳をあげた。

その真司に向かってアシロは拍手をしながら近づく。


「よくやった。成功だ。その感覚を忘れないようにな」

「ああ。ありがと、う、」


お礼を言い終わると突如真司は脱力感に襲われた。


「あ、れ?」


急に目の前が真っ白になり、そのまま地面に体が倒れ、、、ることはなかった。

気絶した真司をアシロが受け止めたからだ。


「シンジ、シンジ!、、、気絶してる」


アシロは真司を背負うと、地面に魔法陣を出し、瞬間移動した。


アシロが瞬間移動した先は保健室の中だった。


「先生、急病人です」


アシロの呼びかけに先生か返事をする。

保健室の先生はみんなが想像する30代くらいの妖艶な美魔女、、、などではなく齢80代くらいの白髪アフロのムジカという小さな老人だ。

背は曲がり杖をついている。普段は裸眼だが、診察するときなどは眼鏡をかける。

先生は眼鏡をかけてアシロが担いでいる真司に近寄った。


「ふむ、ずいぶん魔素が枯渇しておるな。魔法の訓練かの。感心感心。あ~、すまんがその坊やを底の寝具へ寝かせてもらえんか」


アシロに真司を保健室のベットへ寝かせるように指示し、自分は棚の中をごそごそと探り、何かを取り出した。

それは一見加湿器のようなものに見えた。


「先生、それは?」

「こんな状態では魔法薬も飲めんだろう。これで周囲の魔素濃度を高めるのじゃ」


そう言って先生は機械を起動させた。ヴウウンという音がしたがそれ以外には何も起きない。それもそのはず、魔素は普段は見ることもにおいもかぐこともできないのだから。


「これでしばらく安静にしておれば大丈夫じゃろう」

「ありがとうございました」

「しかし、この坊や、異世界から来たのか」

「ええ、周りには、隠しているようですが」

「まあ、異世界を渡ることは基本的には禁忌じゃからの。それに、この子にも何か事情があるのやもしれんしな。この子はわしが責任をもって帰そう。もう遅いでな、おぬしはそろそろ帰りなさい」

「はい、よろしくお願いします」


アシロは保健室を後にし、帰り支度をして帰路に就いた。

ムジカはベットの上ですやすやと眠る真司を確認し、真司の眠るベットの周りのカーテンを閉めた。

そしてステータス画面を開き、どこかに連絡を取った。


「ん、んー、ん?」

「目が覚めたかね?」


真司が目を覚ますと、目の前に薄暗い部屋と、白い天井、そしてアフロの老人が目に入ってきた。


「わ!」


生き何目の前に現れたアフロの老人に驚き、真司は後ずさりしながらベットから起き上がった。

それを見たムジカ先生はうんうんと頷いた。


「特に問題なさそうじゃな。何か、体に違和感はあるかの?」

「え、いや、特には」


尋ねられた真司は、思い出したかのように顔や首を沢渡、肩や腰を回したりした。


「そうかそうか、じゃが油断は禁物じゃ。迎えが来るまでゆっくりするといい」


そう言ってムジカ先生は保健室にある椅子に腰かけた。

そんな先生に、真司はおそるおそる話しかけた。


「あ、ありがとうございます。あの、ここは?」


そう話しかける真司に、ムジカ先生は不思議そうに尋ねた。


「なんじゃ、何をそんなにおびえておる?」


ムジカ先生の変な質問に思わず返事をする。


「いやおびえてませんよ。混乱してるだけです」


その返事を聞いたムジカ先生は目を見開いて手をたたいた。


「そうかそうか、いやーすまんの、わしゃ昔っから人の感情を読むのが苦手での」


そう言いながらムジカ先生は膝を叩きながら笑った。

その様子を見て、真司を気がぬけて、「はは」と笑い返した。

笑い返した真司を見て、ムジカ先生は最後に大きく膝をたたいた。


「そうじゃそうじゃ、ここの説明じゃったな。ここは見ての通り保健室じゃ、白専のな。お前さんは魔素の枯渇が原因で倒れての、アシロという子がここまで運んでくれたのじゃ。ほれ、同じクラスのな」


ムジカ先生にそういわれて、真司は気を撃ちなう直前の記憶がよみがえってきた。


「ああ、そうか。あとでお礼言っとかないと」


真司は頭を押さえて記憶をひねり出し、ぼそっとつぶやいた。その後ムジカ先生のほうに向き直り、


「ありがとうございました。それじゃあ、私はそろそろ、、、」


そう言ってベットから降りようとした。しかしそれはムジカ先生によって止められた。


「これこれ、まだ安静にといったじゃろ。迎えはもう呼んであるでの。それが来るまで休みんさい」


そう言って真司の肩をつかんでベットに座らせた。先ほどまで向こうのいすに座っていたはずなのに、いつの間にか自分の肩を持っていることに真司は驚いた。

やはり、軍育成学校だけあって、先生はツワモノぞろいなのだろうか。


「あの、迎って―――」


真司がそう言いかけたところで、保健室の扉がガラガラと開いた。


「お、ようやく来おったか」


そう言ってムジカ先生は扉のほうを見た。真司からは、カーテンにさえぎられて、誰が入ってきたのかが見えない状態にあったが、聞いたことのある声が聞こえたため、誰が入ってきたかはすぐにわかった。


「失礼する。ここに真司殿がおると聞いたのだが」

「魔素の枯渇で倒れてな。そこに寝かせておるよ」


ムジカ先生がそう言って真司のほうを指さすと、その人は、真司のいるベットのカーテンを開けた。

そこには、真司の予想通り、ナガツカナガツカさんが立っていた。


「息災か、加藤殿。そなたが倒れたと報せを受けて参ったのだが」

「ええ、大丈夫ですよ。・・・あの、迎って、あなたのことなんですか?」

「そうだ。わしでは不満だったか?」

「いえ、そんな。ありがとうございます」


真司のその返事を聞くとムジカ先生のほうに向きなおった。


「老師、此度は世話をかけた。深く感謝する」


ナガツカナガツカさんは胸の、ちょうど心臓があるところに手を当てながらそう言った。

それを聞いたムジカ先生は、顔の前で手を振りながら笑顔で返した。


「構わんよ。それよりほれ、外はもう暗い。しっかりと送り届けてやりんしゃい」


ナガツカさんは真司のほうを見て一言、「立てるか?」と聞いてきた。

真司は体力も魔力も回復し、体にも特に異常はなかったのですんなりと立つことができた。その後真司は保健室のベットを直そうとしたが、ムジカ先生に止められ、そのままナガツカさんと帰ることになった。

ナガツカナガツカさんは真司に近づき方に手を置くと瞬間移動で真司を寮の前まで送り届けた。


「念のため2,3日はわしの上げた杖を使って魔法を使うようにしておけ。あれはわしが作ったものでな、使用者の体内の魔素が一定量以下になれば空気中から魔素を補ってくれる。使う魔法の威力は落ちるがな」


それだけ言ってナガツカさんは帰ろうとし、また、瞬間移動の魔法陣を展開させた。


「ちょ、ちょっと待ってください」


それを見た真司は慌ててナガツカさんを呼び止めた。


「何か疑問が?」


ナガツカさんは足元の魔法陣を消してその場にとどまった。


「あの、学校について聞きたいことがあって」


真司は、意を決してナガツカさんに質問した。


「あの学校、軍事訓練学校って聞いたんですけど」


それを聞いたナガツカさんは、一瞬何を言われたのか分からない表情をしたが、すぐに思い当たり、あの学校について話しだした。


「あそこは軍事訓練学校などではない。それを志したものが入る学びやだ」


いったい何が違うのか、ナガツカさんが何を言っているのか分からず、真司は首をかしげたが、ナガツカさんは続けて説明した。


「あそこでは一般常識と教養とともに、軍での仕事内容を勉強、一部実践をしてもらい、軍事学校、ひいては軍に入れる素養を持つものを陰ながら選別する学校だ」


それを聞いて、真司は少し納得した。

元の世界でも、軍の学校のことは多少聞きかじった程度のことだが、それにしてもあの学校は軍事学校にしてはかなり優しいと思っていたからだ。


「じゃあ、あの学校は軍事学校ではないんですね」


真司がナガツカさんに確認するとナガツカさんははっきりと答えた。


「断じて違う。そもこの国の軍事学校はすべて全寮制だ。もしそなたが軍事学校にいれば我とこのように会話することすらできん」


それを聞いて真司は軍事学校のことを想像して少し怖がるとともに自分があの学校には入ることになったこと安堵していた。

そして真司は次なる疑問をナガツカさんに投げかけた。


「それと、なんで私をあの学校に?」


それを聞いたナガツカさんは「当然だ」といって理由を話し始めた。


「君らは元の世界に帰ることを選び、そして自らそれの手助けをすることを望んだ。軍関係の学び舎に入るのは当然の結果だろう」


真司はそれを聞いても納得できなかった。


「なんで軍関係なんですか?機械系や工学系ではなく」


ナガツカさんは真司の疑問に「それでもよかったのだが」と前置きして話始めた。


「君らにはそこに入るだけの学がなかったのだ。しかしどちらにしろ、異世界のことは公には禁忌扱いになっており公然での研究はできん。軍で秘密裏に行われておるゆえ、軍関係の職に就くのは帰る手助けをしたいのならば必然だぞ」


ナガツカさんは腕を組みながら、真司にそう言い放った。

それを聞いて真司はようやく理解したが、しかし理解をしたからといって万事解決というわけにはいかない。


「わかりました。しかし正直軍でやって聞ける自信がないのですが、何か、別の選択肢はありませんか?」


真司がおそるおそる聞くと、ナガツカさんは顎に手を当て、「ふむ」と真司を見下ろした。


「別にあの学校に入ったからといって必ず軍に入れるわけではないのだがな。適材適所に配置するのは上である教員、ひいては我の仕事。そこまで悲観することもあるまいが、、、。しかしそなたが本当望むなら、帰る準備ができるまでのびのびと隠居することも可能だ」


真司は考え込んだ。真司は自分のことをあまり優秀な人間だとは思っていなかった。友人もでき、楽しい生活を送ることができているが、それでも帰りたいという気持ちはまだ強くある。しかし、自分が軍に入ったとしても足手まといになる未来しか想像できない。


「そう悲観するな」


そんな真司を、ナガツカさんは励ました。


「人は皆、何かしらの才能を持って生まれる。その才能を磨き上げるのは上である我々だ。そして付け加えておくと、あの時、我は君たちが元の世界に戻るのは20年後といったが、それは君たちの力を抜きにした場合の話だ」


真司は顔を上げ、ナガツカさんのほうを見た。


「私たちが協力すれば、さらに早く帰れますか?」

「あの作業は、人手がいくらあってもいいからな」


真司は再び考え込んだ。

早く帰れるに越したことはない。早く元の世界の皆に会いたいし、この世界に長くいれば、名残惜しくなり、余計につらくなるからだ。


「なんにせよ、決断するなら早いほうがよいぞ」


将軍は最後にそういって魔法陣から発せられる光の中へ消えていった。

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