45話 マクリウア商社の終わり
戒厳令が解かれたので、ゲンゾウ・マクリウアは自社のビルにやってた。幸いにも、正面のドアは閉まっていて、警備員が一人、立っている。
「おはようございます」
「ごくろう」と言って、ゲンゾウは自動ドアの横の手動ドアから、社内に踏み込んだ。
「「「おはようございます」」」入口に10人ぐらいの従業員が挨拶。
集まっていたのは、近くに住む役員と部長クラスだ。マクリウア社は全従業員は25000人ほどの中堅の証券会社である。しかし、あの災厄の日を境に、業務がすべて停止した。電気が来ない、ネットワークが通じない、コンピューターが停止した、商いが停止した、復旧のめどが立たない。終わりだ。
ゴラン政府に何とかしてくれと要求したら、お門違いだと叱られた。電子文明の上に築いた文明は、愚かにも戦争を開始した、当の政治家と軍部によって崩壊した。しかし、それを指示していたのも国民である。この世界のすべての人が背負った罪だ。今更、あとに戻せと誰に言えるのか!
証券も顧客情報も、お金も全て、サーバー上に蓄積されており、紙のものはない。通貨も電子化されており、通貨は現金しかない。しかし、現金では何も買えない。誰も受け取らない。通貨制度も崩壊した。巷では物々交換が各所にできた市場で行われている。
「みなさん、お金は社会を潤すためには必需品です。きっと将来必要となる時が来ると思います。どのような形が良いのか考えたいと思っています。いつの日か、ここに集まれるよう頑張りましょう。今日まで、一緒に歩んでくれてありがとう」、とゲンゾウは謝辞を述べた。
「「「ありがとうございました。いつの日かお会いしましょう。さようなら」」」
一つのサービス業が幕を閉じました。従業員は無職となって四散しました。
戦争のあと、第3次産業は消滅しました。第2次産業は、電気を使わない方法を模索しながら、少しづつ稼働しています。そして、第一次作業である農業、漁業、林業など自然と直接かかわるところは堅調です。
ゴラン政府は失業者を第一次産業に振る政策を取っていますが、あまりの多さに遅々と進んでいません。確かにララ・ゴランたちが、どうこうしなくてならないことではありません。ホーソン人たちの自助努力を促していますし、動きがないところには関与しない方針です。どのみち、人口は毎年1200万人減ってゆくので、失業率も緩和され、必要GOPも下がってゆきます。あくせくしなくても良いということです。
暴徒化するとか、群雄割拠になるとかはありません。ゴラン政府の優秀なモモコとアオシが、そのような芽を見つけ次第、摘んでいます。
「ララちゃん。困窮して食べられない人たちに炊き出しをやってもらえないでしょうか? 」とサクラ神。
「そうね。餓死を無視するには、ちょっと嫌ですね。わかりました。検討してみます。煉獄キャンプの人たちも加えて、食料の増産をやってみます」とララ・ゴランが受けた。
瞬時に壊滅するのは回避できました。あとは、じっくりとチャンスを得ながら縮小してゆくのが、ホーソン人に与えられた復活の道です。




