209、思い立ったが吉日
それにしても……この村長ったら意外に自由人なのね。まさかいきなり『人間の国に遊びに行く』などと言い出すとは。これが本性なのか、それともこの歳で目覚めたのか。正直この村長が来てくれたら嬉しいからいいんだけどさ。
「大丈夫なの? 酒の世話とか村の防衛体制とか。」
「問題ないに決まっておろう。そんなもの誰にでもできる簡単な仕事だからの。」
そんなわけあるかい! この村長数十キロル単位で魔力探査してやがんだろ? しかもたぶんオート、もしくは常時……
長老衆なら普通にできるのか?
「そ、そうなんだ。まあ村長がいいならいいんだけどさ。歓迎するよ。ね、アレク。」
「ええ、もちろんよ。楽園にもクタナツにも立ち寄りたいわね。」
村長は王都に行きたいって言ってたけど、ルート的にはまず楽園だよな。その後はいきなり王都かな。スケジュール的に。
「うむ。期待しておるぞ。人間の国の中心地に行ったなら少々一人で行動してみたいが、それまではすまぬがご一緒させてもらおうかの。」
「もちろんいいよ。一応ここを出発するのは明後日の予定ね。明後日の何時ごろに出るかは未定だけど。」
たぶん朝食後か昼前ぐらいかなぁ。心残りは……蟠桃ぐらいか? また来年のお楽しみだな。
「心得た。儂の方は問題ない。この歳で人間の国に行くのは初めてだからの。楽しみだて。」
「こっちもだよ。案内したい所が多すぎて困るぐらい。」
あ、そうだ。楽園から王都に帰る前にノルドフロンテにも寄らないとな。おじいちゃんとおばあちゃんが心配なんだよね。元気にしてればいいけど。先王や校長、それに組合長は大丈夫そうだな。
「さて、それでは儂は少しばかり働いてくるかの。しばらく村を留守にすることだしの。」
「うん。がんばってね。ちなみに今回の件っていつ決めたの?」
ふと気になったんだよね。つい今朝まで一緒だったのに、全然そんな感じなかったからさぁ。
「うん? ほんの数分前だの。カース殿達と話していたら急に行きたくなったものでな。いや、元々行きたくはあったのだから大差はないがの。」
あるだろ……二十年後と今じゃあ大違いだよ。まあ、大違いだから今行くって決めたのかも知れないけどさ。
「そ、そうなんだ。やるねぇ。じゃ、仕事がんばってね。」
「うむ。ではまた後ほどの。」
手伝えと言われたら喜んで手伝うが、どうやらその必要はなさそうだな。たぶん引き継ぎ系のことばっかりだろうし。長老衆なんてのがいると頼もしくていいよね。
うちの楽園にも何か考えようか。トップは代官だけど、その下に幹部連的な?
むしろ代官の名前を変えてはどうだ? 長官とか総督とか? で、その下の幹部達は……四天王? 三大天? 双璧? 幹部の人数にもよるよなぁ。将来的にサンドラちゃん達がマジで来てくれるんなら何がいいかな。三大天はイメージ違うし。三傑、三騎士、三奉行……うーん、まあいいや。その時また考えよっと。
「ちょっとカース君! 面白くなってきたわよ! ねえねえどうする!?」
「どうするってことはないけど普通に遊ぼうよ。王都だとデビルズホールに連れてくのも面白そうじゃない?」
あの悪徳の店で村長のダンスを見せてもらうってのもいいよね。むしろ国王なんかは国賓として扱いそうではあるね。フェアウェル村はローランド王国内じゃないんだからさ。実質外国だもんな。
「いいわね! 絶対私も行くんだから!」
「それはいいけど四月になったらサンドラちゃんも忙しいんじゃないの?」
「そ、それはそうだけど……」
「でもまあソルダーヌちゃんなら事情を話せば休ませてくれそうだよね。」
「そ、そうよ! 村長様と話すことは国益に適うことなんだから! 私の研究には必要不可欠なんだから!」
たぶん間違いないね。それが本音かどうかは別として。
「じゃあカース、残り二日だけど何して過ごす?」
「各々のんびり過ごそうよ。せっかく長閑な村に来てるんだからさ。」
実際にここが長閑かどうかは意見が分かれそうだが、私は長閑で間違いないと思うんだよね。水のベッドで日向ぼっこなんていいよね。アレクの膝枕か、もしくはカムイの毛皮枕で。
なんだかんだでよく働いた気がするし、のんびりしようぜ?




