187、ライトなおやつは黒い芋
いよーし。芥子毒牙虫をたっぷりゲットしたぜ。いやーうねうねしてキモかったなぁ。生きてる間はちょっと大きい毛虫にしか見えないもんなぁ。これを燻製にしてもらえば完成だ。
「さすが兄貴だなぁ。全然危なげねーじゃねーか。そんじゃこいつらは帰ったらきっちり燻してやっからよ」
「おお。悪いが頼むわ。ところでさ、こいつより上物ってある?」
コーちゃんにサプライズしてあげたいじゃない? 芥子毒牙虫の一級品でもセティアニアの白い粉並みに飛べるみたいだけどさ。もしあるなら欲しいじゃない?
「んー、あった気がするなー。どこだったっけなぁ。うちの村長が好きなやつ。あー思い出した。あれ仕込みがめんどいぜ?」
「仕込み? どんなの?」
「大きめの魔物を運ぶわけよ。なるべく草食のやつをよ。で、そいつが周辺の草を全部食い尽くすわな。一、二ヶ月ぐらいか? それを待ってから仕留めるわけよ。そんで次は少し動かして虫に食わせてなぁ。お勧めは赤肉芋虫あたりだなぁ。で、そいつらはやがて内部まで行くわな? 内臓まで全部食い尽くした奴らはデカくなりすぎてよ? 出てこれねぇみてーなんだわ。そいつらを燻製にすんだよ。ぶっ飛ぶらしいぜ?」
め、面倒くせぇ……
「ちなみにその赤肉芋虫ってのはそのまま燻製にしたらどう? いい感じに飛べる?」
「いやーどうなんだろーな? あいつらって何を食ったかによって変わるみてぇだぜ? そのくせ草はあんま食わねーみたいだしよぉ。普段は何食ってんだろうなぁ?」
知らねーよ……さすがに一、二ヶ月は待てないな。魔物の死体はたくさんあるけど大物はないしなぁ。次回来る時に覚えてたら、ね?
「じゃあここまでにしとくわ。お前は何か欲しいのある?」
あるなら付き合うぜ?
「おっ、そんならちっといいか? 芋ぉ掘りてーんだよなぁ」
「いも? いいぞ。それ美味い?」
「おおよ。甘くてうめぇし、ぶっ飛べるぜ? そん代わりやたら深くてなぁ。意外と掘るのが面倒でよ」
「ふーん、面白そうじゃん。行こうぜ。」
別に私が掘るわけでもないしね。こいつがどう掘るのか見物といこうではないか。
「おっ、あったぜ。ここだぁ」
ふむふむ。細い木とそれに巻きついたツタか。もしや自然薯系? そういやセティアニアにもラリラリになれる自然薯があったなぁ。勝手に麻零余子と名付けたけど。
「そんじゃちっと待っててくれよ」
『豪水牢』
おお、荒れ狂う水の魔法か。そのはずなのにえらく静かじゃないか。それが木を囲んで……ほぉー土ごと吸い上げてるのか。えらく魔力を無駄遣いしてる気もするが。
おっ、水の魔法から芋が一つ、二つ。ぽんと出てきたじゃん。口の中に入った食べカスを吐くみたいに。さすがエルフ。制御が上手いな。
「えらく大仰な魔法使ってるけど何か意味あんの?」
「あー、これさぁ、たっぷり水使わねーとやたら埃が舞うんだよなぁ。もぉ目が痛ぇぐらいによ」
「なるほどね。」
見た目からじゃ分からんもんだね。
「よーしお待たせ兄貴。こんだけありゃいいや。戻ろうぜ」
両手で持てる程の芋が十個。見た目は黒いサツマイモって感じだな。
深くて面倒って言った割にあっさり終わったな。十分とかかってない。やはりエルフはエルフってわけね。
「ちなみにそれって焼いて食うの?」
「おお、どっちでもいいぜ? 焼いた方が甘ぇーけどそん代わり飛びにくくなるけどな」
「ほー、そいつは悩ましいとこだな。ちなみにお前はどっち派?」
「もちろん生派よぉ。女子供じゃあるまいしよー」
エルフって女の子どころか子供までこれ系の嗜みがあるのか? やるねぇ。
「まぁ派手に飛びてぇんなら兄貴みてぇにあの毛虫でいいんだけどな」
「ん? 何か違うのか?」
「おお、こいつってよ長ぁーくゆったり楽しむのに向いてんだよなぁ。水に浮かびながら空飛ぶっつーかよ。半分ぐれぇ夢心地でまったりいい気分だぜ? これやるから兄貴も試してみな」
「おっ、悪いな。ありがたく貰っとくわ。」
三個貰った。ライトに楽しめそうでいいじゃん。なんなら楽園近郊で栽培してやろうか? 秋の焼き芋にもぴったりかもね。あの辺って枯葉がないけど。
では戻ろう。みんなの成果はどうかな?




