185、帰りたくないサンドラ
あ"ーよく寝た……カムイのもふもふ腹枕も最高だな。
さすがにまだ腹が膨れてる。時刻は……午後四時ってとこだろうか。今からなら余裕でフェアウェル村に帰れるな。
「あ……カースも起きたのね。私もよく寝ちゃってたわ。カムイの毛皮ってやっぱり最高ね。」
「おはよ。いやーすっごい食べちゃったね。もうしばらくアースドラゴンは食べたくないね。」
でも腹がへったらまた食べるんだろうなぁ。二度と酒飲まないと言ったスティード君みたいに。
「私もだわ。まさかあんなに食べてしまうだなんて……お腹周りが心配だわ。」
「アレクに限って大丈夫だって。何なら夜にでもポーションマッサージするよ?」
ぽっこりお腹のアレクもかわいいに違いない。むしろじっくり見たいな。
「う……後で決めるわ、お願いするかどうか……」
「うん。分かったよ。」
さては自分でチェックしてから決めるつもりだな? 気にしなくていいのに。それより、ぽっこりお腹にポーションマッサージって効くんだろうか? むしろオイルマッサージの方が効きそうな気がする。
さて、では日が暮れる前に帰るとしようか。もう卒業旅行も後半戦だからな。少しだけきびきび動かないとね。
「……というわけでそろそろ帰るよ。村長も大変と思うけどがんばってね。」
「もう帰ってしまうのか……来たばかりな気もするが……」
「悪いね。こっちの三人はあんまり時間がなくてさ。でもまた近いうちに来ると思うけどね。」
イグドラシルに魔力を入れに来ることもあると思うよ。
「えーっ! カース君もう帰るの!? まだいいじゃない……」
あれ? さっき食べてる時にそういう話になったよな? サンドラちゃんはなるべくフェアウェル村に滞在したいって。でもいざ帰るとなるとダークエルフの村も名残惜しいのかねぇ。
「いいよ? 残り日程ここでもさ。どうするサンドラちゃん?」
村長が嬉しそうな顔してるぞ。
「うっ……カース君さぁ、女の子に正論はよくないって知らないの? だめねぇ。」
「別にサンドラちゃんだけ置いてってもいいんだけど?」
「もぉー! アレックスちゃーん! カース君が意地悪なんだけどーー!」
「うふふ、カースったら。スティード君とセルジュ君も置いていかないとだめじゃない?」
アレクったら。そうじゃないぜ? 面白いんだから。
「アレックスちゃんまで! そんな! 酷いわ! 私はただお休みが永遠に続いて欲しいだけなのに!」
サンドラちゃんったら無茶言うんだから。いくら私でもそれは無理だぜ?
「もちろんサンドラちゃんが良ければいつまでも居ていいよ。好きなだけ休もうよ。」
休みは増やせないが無職生活に付き合うことはできるぜ?
「もー! それが無理なことぐらい知ってるくせにぃ! ちょっとわがまま言ってみたかっただけなのにカース君は女心が分からないのね?」
それは女心じゃないぜ。人類共通心だぜ。いやーつくづく無職でよかったなぁ。
「あはは、ごめんごめん。じゃあぎりぎりまで休む? もう五日ほどさ。」
セルジュ君はぎりぎりまで引き延ばして二十五日まで大丈夫って言ってたし。そもそも四月から仕事なのに二十日までしか休めないって酷い話だしね。
「そ、そうね……こんな機会二度となさそうだし……どうかしらスティード?」
「うぅーん、できなくはないね。ちょっと帰ってからが大変そうだけど、何とかなると思うよ。」
おっ、スティード君マジか。全員がセルジュ君と同じ無茶スケジュールで行っちゃう?
「決まりね! じゃあカース君! ここにはもう二泊するわよ!」
おお……マジか。二人ともやるなぁ。十連休と十五連休では大違いだしね。まぁもし何か問題が起きたら私とアレクで口添えぐらいしてあげようじゃないか。サンドラちゃんについてはソルダーヌちゃんへ、スティード君については……国王でいいのか? 近衞騎士の団長って会ったことないからなぁ。
「分かったよ。じゃあ村長、悪いけどもう二泊世話になるね。」
「願ってもないことだ。たった二泊なのが惜しいが、今すぐ帰るよりは余程よい。ならば今夜は宴だな。そうであろう?」
いやそれ無理。まだ腹が膨れてるんだからさ。
「まあまあ村長落ち着いてよ。僕らはたぶん明日の朝まで何も入らないって。飲むならお茶かな?」
酒でもいいけど気分的にはお茶でまったりしたいね。
「むぅ、そうか。ならばちと待ってもらおうか。茶を点てるゆえな。」
ほぅ。点てると来たか。村長ったら本格派か? いやーそれにしても、友との卒業旅行が継続するのっていいね。夏休みが五割増しなのと同じだし。ここで二泊増えたってことはフェアウェル村でももう二泊か三泊できるな。ノルドフロンテにも一泊できそうだし。アースドラゴンの肉はぜひおじいちゃん達にも食べてもらいたいしね。
「いよぅ兄貴。もう二泊追加だってぇ? ご機嫌じゃねーか」
「何して過ごすんだい?」
「幻惑草原はどうすんだぁ? 帰りに寄るかぁ?」
「ピュイピュイ」
分かってるとも。
「ああ、帰りに寄ろうぜ。だから明後日の昼ぐらいにここを出ればいいだろ。ねっ、サンドラちゃん。」
「分かったわ! 前にカース君が話してくれた危ない草原ね! 絶対行きたいわ!」
サンドラちゃんの好奇心は止まらないね。そろそろ芥子毒牙虫がなくなりそうだし、ちょうどいいよね。いやぁ休みっていくらあってもいいねぇ。




