182、木で森が見えない
うげぇ……だめだこりゃ。
全っ然分からん。ダークエルフ達が密集してるってこともあるけど、そもそも私ってなぜか魔力探査に引っかからないんだよな。てことは私の指も引っかからないわな。
つーか受精卵の魔力ですら感知できるダークエルフが見つけられてないってことはそういうことだよなぁ。地道に目視で探すしかないか……
持ち主を探す魔法はあるんだから落とし物を探す魔法ぐらいあってもいいのに。まあ、アレクもダークエルフも地道に探してくれてる時点でやっぱないんだろうぁ。今後に期待か……
サンドラちゃんから大人しく横になってくよう言われたことだし、素直に従おう。左手を少し高めにして。
「んおーいカースよー。ねぇーぞー?」
ないじゃ困るんだよ……
「マジかよ。ダークエルフに指を生やす魔法とかない?」
「んあー、あるっちゃあるけどなー。ちっとむじーんだよなぁ……」
「そうなの? まあ、見つからなかったら頼むよ。」
さすがダークエルフ。やるじゃん。つーか指を生やすより指を見つける魔法があれば解決なんだが……
「ごめんカース君、外側じゃあ見つからなかったよ……僕らも地面を探すね……」
「うん。もう残ってる所って地面だけだし、悪いけど頼むね。あ、そうだ。もう全員で地面を探すしかないから一列に並んでやろうよ。僕も行くから。」
この人数で地道に探すならあの方法がいいと見た。
「一列に? どんな方法?」
「えっとね……」
ちょっと説明。ダークエルフ達やアレクも含めて。すでにしっかり探してくれたアレクには悪いけど。
「分かったわ。でもそれならカースは参加するんじゃなくて合図をしてくれる?」
「ああ、それもそうだね。じゃあ悪いけどみんな頼むよ。」
アレク達もダークエルフも、エルフ三人組もみんなが一列に並び四つん這いになる。こうやって自分の目の前だけを確実にチェックし、漏れがないように探していくスタイルだ。そこそこ草があるから目の前を探すだけでも大変なんだが、草を刈るわけにもいかないからなぁ……
「じゃあ行こうか。前!」
私の合図で一歩分前進することになっている。ざっと百メイル四方あるのでこの人数だと一往復ってとこだろう。あの姿勢で二百メイルも進んでもらうのは……申し訳ないな。
「前!」
一歩あたり約三十秒。草が生えてなければ五秒ぐらいで済みそうなんだが……
「前!」
だめか。往路では見つからなかった……となると、残り半分。頼むぞ、あってくれ……
「前!」
マジかよ……
見つからない……
マジか……
「カース君! こうなったら! もうこれしかないよ! これを! 僕の指を使ってよ! ダークエルフさんなら繋げるよね!? ね!?」
「いやいや落ち着いてよスティード君。それ無理だから。」
案外ダークエルフの魔法なら他人の指でも繋げるのかも知れないが、まあ無茶をすることはあるまい。スティード君の剣士生命が終わってしまうしね。
こうなったらクライフトさんの魔法に期待するしかないな。つーか無理ならハイエルフ村長なら出来そうな気もするな。
「そ、そんな……カース君の指が……僕は何てことを……」
「ああっ! そんな、カース……何てことなの!」
スティード君は地面に手を突いてるしアレクは抱きついてきた。つーかマジでどこまで飛んでいったんだよ……水鋸がかなりの高速回転だったもんだから遠くに飛んでいった可能性はあるが、そこも踏まえて百メイル四方を探したわけだが……
「あら……」
「ん? どうかした?」
アレクが離れた……
「ちょっとカース、そこ……」
ん? アレクが私の首筋に手を伸ばす。
「あった!」
「ええっ!?」
「ほら! あったわ! カースの親指! こんな所にあったわ!」
マジか! 首元のどこに!?
「うおおおおおおおお! アレックスちゃぁーーーーん! 本当に!? 本当だね!? ああっ本当だぁ! カース君の指だぁああ!」
「ありがとねアレク。助かったよ。マジで。ところでどこにあったの?」
誰も気づかなかったのになぁ。どこに潜んでやがったのやら……
「ここよ。シャツとウエストコートの間。きちんと採寸して作った服に余計な隙間なんかないのに。よほどの勢いだったのね。」
または態勢を崩してたもんだから隙間が生まれたか。もしくは両方かな?
「そんな所に……でも助かったよ。さすがアレクだね。ありがとう。」
灯台下暗しすぎるだろ……
今思えば、浄化を使っておけばよかったよ。シャツとウエストコートに血は付いてるけど、どうせ『防汚』が付いてるからって放っておいたんだよなぁ。
きれいにしておけば指からの血で気づけたかも知れないのに……くそぅ。
「んあー、やーれやれだぜー。そんじゃあ繋ぐぜー。指貸しなぁ。」
「手間かけて悪かったね。じゃあこれ、お願い。」
「かかかっ。こんなのを『木で森が見えない』っつーんだったか? よっしゃ任せとけー。そん代わりいい酒出せよー?」
「あはは、もちろん。」
「おっしゃ。そんじゃ魔法を解きなー。」
「はいよ。」
『水壁解除』
『麻痺解除』
うえぇ……めっちゃ痛い……
「そんじゃいくぜー。力抜いてなー。」
『骨格整癒』
『肉治体癒』
何をやったのかはよく分からなかったが、もう治った……やっぱすげぇな。痛みすら残ってないし。動きに違和感もないし変な麻痺も残ってない。やっぱダークエルフってすげぇな……
「ありがとうクライフトさん。ばっちりだよ。傷跡すらないじゃん。」
「んあー、当ったり前だろー? そんじゃ酒くれー。」
「まあ待ってよ。アースドラゴンの解体を終わらせてからね。」
一時間半ぐらい放置しちゃってるからね。虫こそ集まってないけど肉の鮮度に変化がないわけないからね。
「んあー、まあしゃあねぇなー。首落として胴体を収納するまででいいだろー?」
「そうなぁ。そこまでかな。そんで昼からアースドラゴンの肉焼いて宴会しようぜ。」
「おお! それだぁ! それがいいぜー! よっしゃ、そんじゃお前らー、続きいこうぜー!」
クライフトさん元気だなぁ。酒が飲めると分かったからか?
まあ何にしても、助かったよ。無事繋がって本当によかった……みんなありがとう。




