417、コーネリアスの異変
案内されたのは先ほどまで商王が座っていた一段高い壇上、ではなく別室。さすがに殺風景なんてこともなくソファーにテーブル、絵画に調度品と、品よく揃えられていた。でも肝心の商王が来てないじゃないか……
「おじさん、座ってよ。アレクもさ。」
「ひょ……そ、そうだの。座るとするかの」
「悪いわね。座らせてもらうわ。」
そして私はアレクの後ろに立つ。建前上は護衛だからね。トーアはじいちゃんの後ろだ。
私達を案内した奴はすでにいない。部屋の中には私達しかいない。普通メイドさんがコーヒーぐらい運んでくるだろ。まったく……
ソファーにゆったりと座っているアレクに対して、じいちゃんは緊張を隠しきれないようだ。ちなみにマックレスはちゃんとポーカーフェイス、いや吟遊詩人フェイスですらりと立っている。私の後ろに。
カムイはアレクの右側の床に寝転んでいる。床に耳を付けるようにして。
「ガウガウ」
コーちゃんが心配だって? いきなりどうした? コーちゃんに限って……と言いたいところだが地下深くに行くと危ないんだったか。でもそれって地下数百メイルのレベルだよな? ここがそんなに深いとは思えんなぁ……
「ガウガウ」
コーちゃんの居場所が分からないからって? 嘘だろ……楽園からフェアウェル村みたいに数千キロル離れててもだいたい分かるお前が……
「ガウガウ」
飲み食いしたせいかと思ったけどたぶん違う? 自分の感覚が狂ったわけではなさそうなんだな。カムイは私達と同じものを飲み食いしてんだもんな。酒以外は。だから毒物にやられたってこともないだろうしな。
よしカムイ、この会談が終わったら探しに行こうぜ。最後にコーちゃんの気配を感じたところを起点にさ。そこが分かれば匂いで追跡だってできるだろ。
「ガウガウ」
なっ。できそうだろ? 頼むぜカムイ。この建物を更地にしてでも探してやるからな。
コーちゃんに限って心配いらないと思うんだけどなぁ……
おっ、奥の方の扉が開いた。ついにお出ましか? 見えた。やはり商王本人だな。さっきのパーティー会場で見た顔だもんな。偽者だったら笑ってやるぞ?
商王だけでなく護衛までぞろぞろと引き連れちゃってまあ。
ふわりと立ち上がるアレク、ぎこちなく立ち上がったじいちゃん。弟に会うのはかなり久しぶりなんだっけ?
「待たせたな。ワタシが商王キースだ」
「アレクサンドリーネ・ド・アレクサンドルと申します。お会いできて光栄ですわ。」
「ひ、久しいの……元気そうで何よりだの……」
とりあえず私はしばらく黙ってようかな。護衛だし。




