400、表敬訪問
『拡声』を使って……
『商都の栄えある駱駝騎士たちよ! 出迎え大儀である! こちらのご令嬢は北の大国ローランド王国は四大貴族に連なるやんごとなき姫君アレクサンドリーネ・ド・アレクサンドル様である! 名君と名高い商王キース様へ表敬すべく参上した次第だ! 取り次ぎを願いたい!』
使えるものは何でも使うのさ。ローランド王国の金看板も四大貴族というハッタリも。効くかどうかは別だけど。
ふふ、ざわざわと混乱してるな。じいちゃんが来るからと備えてたんだろ? そこに見慣れない真っ赤なドレスに身を包んだ明らかに高貴な姫君が現れたら、そりゃあ混乱するよなぁ? 見るからに高位貴族って分かるよなぁ?
確かにじいちゃんも一緒だけどさ。だがね? この場の主役はアレクなのさ。建前上はね。
お前らはローランド王国を知らないんだろう? 物知りガリオウですら歴史がダイヤモンドクリーク帝国で止まってたぐらいなんだからさ。
さあ、どうする?
おっ、騎士が左右に分かれると正門が開き始めた。へぇ、引き戸タイプとは珍しい。高さ五メイルはある城門が両横に割れていく。対応早いじゃん。ならば遠慮なく進もうではないか。このまま歩いて。
正門が開いたせいか騎士達はどうしていいか分からない様子だ。元々の予定ではじいちゃんに謀反の冤罪を着せるか何かして捕縛するか討ち取るつもりだったんじゃないの? その時はその時で全滅させてやるけどな。
「ようこそお越しくださいました。しかしながらあまりに突然のご訪問ゆえ対応いたしかねます。商王様はご公務の最中でございますゆえ。ひとまずご案内いたしますのでまずはごゆるりとお寛ぎくださいませ」
鎧を纏ってない騎士といった雰囲気の男が慇懃に腰を折っている。品のいい服着てんなぁ。もしかして執事、いや側近なポジションなのか?
「商王様にはいつ頃お会いできる?」
「申し訳ございません。非才の身には分かりかねます」
非才も非凡も関係ないじゃん……商王の胸先三寸なんだからさぁ。魔道具だってあることだし、どうせ商王の奴はこのやりとりも聞いてんだろ?
「分かった。こちらとしては急いではいないが待たされるなら帰ることもあり得る。そのことは承知しておいてもらおう。」
「かしこまりました。その時はバンツー様にお導きされなかったものとして諦めましょう」
何だよその言い回しは……縁がなかった的な感じか?
そして案内されたのはごく普通の客室。豪華でもなければ質素でもない。広くもなければ狭くもない。王宮を訪ねてくる普通の客はこの部屋へ案内するとでも言わんばかりだ。つまり、舐められてんのね。
そりゃあローランド王国って言っても知らないだろうしさ。でもダイヤモンドクリーク帝国なら知ってるんだろ? そこから想像はつくよな? 帝国の後にあの大陸を統一した国家だってことぐらいさ。
そんな国家の四大貴族だって言ってんのにこの扱いとは……話を聞く気なんかないってわけね。それでもじいちゃんが一緒なもんだからとりあえず中には入れたって感じ?
そうやって時間を稼ぎながら周囲をがちがちに固める気なんだろ。だがそうはいかないぜ。
コーちゃん、ちょいと周囲を探ってみてもらえるかな? あわよくば奴隷の一族の居場所もさ。どうせ王宮内のどこかにいるに決まってるんだからさ。そんで酷い扱いをされてるってことはかなり臭いはずだ。偏見だけど。だったらコーちゃんならすぐに見つけられるのでは?
頼んだよコーちゃん。
「ピュイピュイ」
これで目的の半分は終わった。後はゆるりと待っていればコーちゃんが朗報をもたらしてくれるに違いない。
「失礼します」
おっ、誰か入ってきた。メイドさんか? それにしてはメイド服着てないのね。インドのサリーって感じ? 顔がギリギリ見える程度に頭まで覆われてるけど。あ、よく見れば首輪してる。奴隷さんなのか。王宮でここまであからさまに奴隷を使ってるとはねぇ……
無言で飲み物を注いでいく奴隷さん。この匂いは……コーヒーか。
「それでは失礼いたします」
説明なしなのね。まあ飲めば分かるだろうけどさ。
「ひょひょ、いただくとしようかの」
「あ、おじさん待って。」
「ひょっ?」
『解毒』
何が入ってるか分かったもんじゃないからね。
そして……反応あり。やっぱ何か入れてやがったな。油断も隙もないね。もちろん私にだって油断も隙もないぜ?




