357、貴族の論理
「ちっ、口の利き方に気をつけろ……申し訳ありません殿下、お騒がせしてしまいました。お代わりをお持ちいたします」
エルネスト君やるなぁ。結構派手にストンピングしてたのに息が乱れてない。
「ふむ、斬り殺さぬとは理性的だな。次期代官の資格はある。だがスマートさが足りぬな。カースならばテーブルを揺らすことなく終わらせていただろう。」
「……魔王様にはとても及びません……ですが、精進いたします」
私を引き合いに出すんじゃねぇよ。
「ところでランディよ。あやつは何者だ? カースと親しいようだったが。」
親しくねぇよ。
「へ、へぇ。タムロと言いまして、バンダルゴウに入り込んでいたヒイズルの闇ギルド『シーブリーズ』の残党です。そ、その、魔王さんに組織ごとぶっ潰されて、オレが舎弟として面倒みてまして……」
「ほう、さすがはカースだ。ところで今、バンダルゴウに闇ギルドはあるのか?」
「い、いえ、オレの知る限りないと思います……あの厄介だったエチゴヤも潰れちまいましたので……」
ランディ達って建前上は闇ギルドじゃなくて地回りとかって言ってたしな。
「そうか。そなたも分かっているとは思うが、最早この国に闇ギルドの居場所などない。ヒイズルが属国となりエチゴヤも壊滅した。必要悪という言葉はあるが人里近くにあるゴブリンの巣など害悪でしかない。そなたなら分かるな?」
「も、もちろんで……オレらはお上に逆らったことなどありませんし……」
フランツの奴おどすなぁ。エルネスト君の行動を利用して釘を刺してる感じ? お前らが大人しく従う間はお目溢ししてやるって感じでさ。
さっきのタムロは斬り殺されてもおかしくなかったもんな。初対面の上級貴族が相手だってのにさ。タムロの奴、私のエルネスト君に対する口調で勘違いしたんだろうな。
「て、てめぇ……痛ぇじゃねぇか……貴族野郎が舐めた真似しゃあがってよぉ……」
おっ、タムロが起きた。なかなかタフじゃん。
「タムロ、お前が悪い。詫び入れてさっさと帰れ」
「あ、兄貴、そんな……」
いくらもう闇ギルドじゃないからって一度そうだった者がまともに扱ってもらえると思うなよ? ましてはエルネスト君は上級貴族だしフランツは大公だしな。目が合った、って理由で殺されてもおかしくないんだぞ? それぐらい知ってるだろうにさ。私を基準にしてもダメなもんはダメだぜ?
「やる気なら相手するが? 魔法なしでも構わないぞ? 私が灼鉄と呼ばれる理由をその体に教えてやることになるがな」
「て、てめぇ……やってや「申し訳ない! どうか、どうか勘弁してやってください!」
あらら。ランディったらエルネスト君の前に跪いてるよ。偉いねぇ。さすが兄貴。
「そ、そんな兄貴「うるせぇ! さっさと消えちまえ!」
「ふぅん。別に構わないよ。ランディの兄貴と言ったな。お前とは今後も仲良くできそうだしな」
「ありがとうございます! こいつにはよく言い聞かせておきますので!」
ランディはタムロの襟首を引っ張って店の外に放り投げた。いい兄貴分だね。
「大したものだ。下の者のために頭を下げることができるとはな。よし、では飲み直しといこうではないか。」
「あ、ありがとうございます……!」
それにしてもフランツの奴たいがい酒の量が多くないか? 明らかに私より飲んでる。そりゃあこいつは魔力もかなり高いから大丈夫とは思うけどさ。
「つまんなーい! 外行きたーい!」
ぬっ! キアラが飽きたか! そりゃそうだ。よし、ならば一緒に散歩でも!
「じゃあキアラちゃん、一緒にお散歩なんてどうかしら? きっと珍しいものがたくさん見れると思うわ。」
「わーい! アー姉とお散歩ー! 行く行くー! じゃあフランツ君行ってくるねー!」
そ、そんな……
「待てキアラ!」
「えー? カー兄どうしたのー?」
いかんいかんつい引き留めてしまった。せっかくアレクが気を利かせてくれたってのに。私が男同士の付き合いができるようにってさ。
「ほら、お小遣いだよ。持っていきな。」
「わーいカー兄ありがとー! でももういっぱい貰ったからいいよー。じゃあアー姉行こー!」
そうだった……白金貨をどっさりと。あ、でも白金貨なんか街中では使えないぞ!?
「ええ。じゃあカース、ちょっと行ってくるわね。」
「う、うん。行ってらっしゃい。」
くっ、見送るしかない。
「キアラ、後でな。」
「うん! フランツ君後でねー!」
カムイ、頼む。
「ガウガウ」
よし。これでひと安心だ。
ふふっ、私ったら何を余計な心配してんだよ。キアラは私より魔力高いってのにさ。まあいいや。せっかくアレクが気を遣ってくれたことだし、私もガンガン飲むとしようか。




