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店の名前

途中で、一つの迷信が、でてきますが。

あくまで、“迷信”です。

 人事の係長、島野さんと都合を合わせられたのは、九月も半ばを過ぎてからだった。

 一緒にお昼を摂ることで、時間を作る。


「ここのお蕎麦屋さん、おいしいよね」

「島野さんも来られること、あります?」

 会社から二筋ほど東、夫婦で営業しているような、こぢんまりとしたお店の暖簾をくぐる。

 普段、お弁当を持って来ている人のイメージがある島野さんが、お蕎麦屋さんに来ていたことに単純に驚く。

「たまにね。ダンナが出張で、お弁当の要らないときとか」

 サボることもあるわよ、と言いながら、島野さんはメニューを広げた


 妙なことを、聞いたよね? 今。

 “ダンナ”が出張?


 二つ頼んだ天ざるを待つ間、相談ごとより先に、さっきの疑問に話を戻す。

「島野さん、結婚されていたのですか?」

「うん、いわゆる、事実婚だけどね」

「事実婚…」

「籍をいれちゃうと、総合職から降りることになるから」

「あの、それって。同棲と、どう違うのでしょうか?」

「お互いに、夫婦だと思っているところ?」

「はぁ。なるほど」

 籍を入れずに夫婦になるなんて、抜け道があるとは、知らなかった。


「じゃあ、島野さんは転勤も?」

「するわよ? 辞令があれば」

「子どもが生まれたりしたら……」

「やぁねぇ。とっくに四十過ぎてるわよ?」

 今更……と、声を立てて笑っている島野さんの目が、笑っていなくて。

 拙い話題だと、切り上げる。



 天ぷらをかじり、蕎麦をすすりながら、島野さんといろんな話をした。結婚と仕事の兼ね合いについて、だけでなく。

 千賀子たち、友人との会話も異業種交流のようなものだけど。

 同じ会社で働いていても、人事と営業では見てるものも、見えているものも違っていて。情報交換的な会話で、その日の昼休みを過ごした。



 そうして改めて これからのことを考える。

 このまま、総合職として働くことも、出来なくはない。

 となると……欲も出てくる。


 一般職になるなら、今の“係長補佐”から降格することになるのかもしれない。役職にしがみつくほどの出世欲は、ないつもりだったけど。もったいないかな、とも思わなくもない。

 それに。

 昇進を阻止するかのように、お見合い話を持ってきた樋口課長の思惑通りになるのも、しゃくに障る。

   

 でも。

 恐らく……田舎の両親は、いい顔をしない。籍を入れないままの結婚なんて。

 明治生まれの祖母は、なおのこと。仕事を続けること自体、反対しそうだ。 



 堂々めぐりの悩みを繰り返しているうちに、何度となく、『未来の夢に呼ばれた』と口ずさんでいた、彼の苦しそうな歌声を思い出す。


 ああもう。一般職でも、総合職でもかまわない。

 これがお前の“天職”だと。

 お前は この道に呼ばれたと。

 誰かが、何かが

 私を呼んでは、くれないだろうか。


 ほんの一言、呼ばれさえすれば。

 未来への答えは、おのずと見えてくるはずなのに。



 悩んでいる間にも、時間は流れる。 

 小さなトラブルや、ちょっとした成果を挟みながら、仕事もこなす。

 十月に入ってすぐの、その日。

 春に“伝票放置事件”を起こした山下くんが、またやらかしてくれた。


 取り引き先から電話で依頼されていた資料を、届けていなかった。問い合わせの電話に、資料を用意して。出先の山下くんを急ぎで戻らせてから、私も謝罪のために同行した。


 先方に資料を、手渡して。二人して頭を下げる。

「必要だから、お願いしているわけですから。きちんと対応をしていただかないと」

「申し訳ありません。電話をうけたのが女の子だったので、連絡が……」

 こら、ちょっと待て。

 それは、言い訳にすらならない。

 頭を抱えるレベルの悪手に、自分一人で来るべきだったと、後悔する。

 案の定、対応していた担当の女性に

「謝罪に“女の子”を同行させるんですね」

 と、嫌味を言われた。



 なんとか許して頂いて、安堵のため息をつく。そして、会社に戻る車の中で、

「あの電話、受けたの私よね?」

 運転しながらの、お説教タイム。

「あれ? そうでしたっけ?」

「誰がうけたかの確認もせずに、あんなことを言ったわけ?」

「だって、ほとんど女の子が電話に出るじゃないですか」

 悪びれることなく、口を尖らせている。

「それでも。他人のせいには、しないの! こういう場合は」

「はぁ」

 こっちが、ため息をつきたいわ。


「で、そもそも。どうしてやってなかったわけ?」

「あーっとですね……」 

 頼まれた資料が、いつもの棚になかったからって。あのね。

「聞きなさい。わからなかったら」

「誰に聞けばいいんですか?」

「誰でもいいでしょう! それくらい」

 『聞ける相手と、聞けない相手かあって……』と、ブツブツ言っている山下くんに、これ以上のお説教はしても無駄と、口を噤む。

 この場合、『ちゃんと、渡したよね?』と確認しなかった私も悪いのか?


 帰って、課長にも経緯を報告して。

 『“報告・連絡・相談”が大事で……』なんて社会人の心得を、改めて注意される。隣で神妙に頷いていた山下くんが、報告書を書くように促されたところで、私もやりかけの仕事に戻る。


 残業になったその日の帰り道。電車に揺られながら、ふと思った。

 プロポーズの答えを、急かさずに待ってくれている孝さんだけど。進捗状況のようなものを、伝えておいたほうが良いのじゃないだろうか?



 週末、相変わらずの堂々めぐりを辿りながら、チーズスフレを口に運ぶ。

 このお店を見つけてから、もうすぐ二年が経つ。  

 店内に使われている刺繍の作品も増えたな、と、横目でカトラリー籠に敷かれた刺し子の布巾を眺める。これも、彼の作品だ。


 他にはない、このお店の雰囲気が好きだ。

 彼のことと同じくらい。


 総合職を続けて、引っ越しを伴うような市外へ転勤になったら、このお店でコーヒーを飲む機会は、かなり減るだろう。

 その時。私は、日々の息抜きをどうするのだろう。新しい場所を、その街で新たに探そうとするのだろうか。


 “ここへ帰ってくるって約束”が欲しいのは、私も変わりない。



 その夜、夕食も終えた後のちゃぶ台で、孝さんと話し合いの体制になる。

「あの。この前のプロポーズ……のような話なんだけど」

「ような話、じゃなくて。プロポーズだから」

「あー、うん」

 改めて口にすると、妙に恥ずかしくて。言い足した誤魔化しの言葉を、即座に訂正された。


「まだ、答えにはたどり着いてないけど、現状報告をしておこうかと……」

「現状報告って」

 そういう所が、仕事好きだね、と小さく笑って、彼は急須のお茶を注いだ。


 一口飲んで。頭の中を整理して。

 結婚退職はしなくてもいいけど、転勤を伴わない一般職に配置換えになること。総合職を続けるために、事実婚を選んだ先輩がいること。

 どちらの道を選ぶかで、迷っている最中なので、もう少し時間が欲しいこと。


 なるべく順序だてて話すように、シミュレーションは重ねたつもりだけど。最近の仕事では覚えがないほど、緊張で声が震える。


 話を終えて、彼の顔を伺う。

 腕組みをした孝さんは、眉間にしわを寄せて考えこんでいた。

 いつも穏やかに笑っている彼にしては珍しい、難しい表情を目の当たりにして、『間違えた……かも?』と、背中に冷や汗が流れる。



「里香さん。確認だけど」

 やっと言葉を発した彼は、真っ直ぐに私の目を見つめてきた。

 その視線の強さに、思わず背中が伸びる。

「結婚をする気は、あるんだよね?」

「それは、ある。あります!」

 勢いよく頷いた私に、孝さんの目が笑いに緩む。

「だったら、四の五の言わずに、結婚しよう」

「ええっと……だから……その」

 次の段階、届けを出すかどうかで、立ち止まっているのだけど?


「俺、会社勤めの頃は営業だったから、口約束ってのは、どうにも気持ち悪い」

「あー。たしかに。契約書がないと……」

「でしょ?」

 里香さんには、やっぱり話が通じる。

 そう言って彼は、嬉しそうな顔でお茶を飲んだ。 


「だからさ。ちゃんと届けを出して、結婚しよう」

「うーん」

 口約束に不安を覚える感覚は、実感として理解できる。

 こんな部分でも、彼と私は仲間だと思う。


 思うけど。やっぱり

「未練があるのも、事実なのよね……」

「役職に?」

「いや、そこじゃなくって。係長補佐になって、半年じゃない?」

「うん、そうだね」

「このまま続けた先に、“天職”があったりしないかな? って」 

 いつだったか、彼が言っていた。『呼ばれるまで、続けてみれば?』って。

「もしも、あと少し頑張った先に、『この道だ』って呼ばれる通過点があるなら、悔しいな、とか」


 言いながらチラリと見た孝さんは、左手で耳たぶを捻るようにしていた。

 考え事をしている時、左手で耳たぶを触る彼の癖に、気づいたのは、いつだっただろう。


「里香さん」

「はい」

 改まった声に呼ばれる。

「だったら、俺が呼ぶから。天の代わりに」

「……」

「里香さんの生きる道は、ここだよ」

 そう言って、ポンと軽く畳を叩いて見せる。

「お店を一緒にするってこと?」

「いや、そこに里香さんの興味はないでしよ?」

 まあ。確かに。

 作り手冥利に尽きる、“食べる人”だと、孝さんに言われたこともあるし。

 

「天に呼ばれる道が、仕事になるとは限らなくても、良いんじゃない?」

「……呼んでいるのは、孝さんだよ?」

「うん、そうだね。でも俺は今、里香さんを呼んでおかなかったら……明日の朝、後悔する」

 『明日、もしかしたら。俺よりも、里香さん好みのコーヒーを入れられる男に出会ってしまうかもしれない』なんて、言った彼の言葉に、

「胃袋で絆されたつもりは、ないんだけど?」

 と、膨れてみせる。 


「胃袋一つで里香さんの一生を掴めるなら、俺は頑張るけど」

「……」

「でも、捕まれて一緒に……よりも、並んで歩きたいじゃない? 人生の道は」

「あー、うん」

「だからさ、夫婦って道に呼ばれておいで。並んで歩きながら、それぞれの仕事をすればいいからさ」


 そう言われて、目が覚めたような気がした。

「なーんだぁ、そっかぁ」

「里香さん?」

「そこにあったのか、って」

 呼ばれて見つけるのは、人生を賭けるような仕事のことじゃない。ただ、“生きる道”だったんだ、と。


「うん、呼ばれた。私にも聞こえた」

「ええっと……それは……つまり?」

「孝さん、結婚しよう。ちゃんと届も出して」

「わかった」

 というより、『よかった』かな?

 ほっとしたような顔でそう言った彼の顔を眺めながら、すっかり冷めたお茶を飲む。


 お湯飲みをちゃぶ台に戻したところで、名前を呼ばれた。

 私の道を、示してくれたその声に応えて。

 キスを交わす。


 これから、私は

 この道を歩いていく。



 年末までの間に、互いの実家に挨拶に行ったり、職場への報告をしたりで、準備を整える。

 私の両親は、趣味の延長のようなお店をしてる彼に、渋い顔をしたけど。

「いいんじゃないの? 里香にはちょうど」

 横から、祖母が口をはさんだ。

「”(ひのえ)のじゃじゃ馬”ですから。うんと年長の、里香では歯が立たないくらい経済的にも包容力のある男性か、そうでなければ、里香と仕事で張り合わない程度に頼りない男性の方が、釣り合うでしょ」

「ええっと、お祖母ちゃん、それは……」

 貶されているのでしょうか? 私達。


丙午(ひのえうま)の女性はね、『旦那を食い殺すくらい気性が激しい』っていうの。昔からね」

 お茶を飲みながら、祖母が何気に酷いことを言ってくれる。

「だから、世間は丙午に出産をするのを避けるのよ」

「あー、確かに。何かっていうと、『“丙午”だから、同級生が少ない』って言われてるね」

 三十歳を過ぎたころからは、さらに“バブルの”なんて、ありがたくもない修飾語まで付くようになった。

「気性の激しい人はね、周囲に『負けた』って意識を持たせてしまうらしいの」

「負けても、次こそは……って頑張れば、いいじゃない?」

「そう考えるあたりが、じゃじゃ馬なんです」

 はぁ、そうですか。


「毎日顔を合わせる旦那さん側にそれを受け流すだけの器量があれば、いいのだけど。中途半端に自信がある男性はね、負けた自分を認めないために、間違えた判断をしてしまうこともあるの。それが、世間的に言う”食い殺す”ってことよ」

「……」

「だから、『里香に負けた』と思わないくらい強い相手か、勝負しようと思わないくらい違う価値観で生きているような人がお似合いだと、お祖母ちゃんは思うわ」

 そう言ってから、少しだけ考える素振りを見せた祖母は、自身が丙午の生まれであること。祖父とは一回り以上、歳の離れた夫婦だったからこそ一生を添い遂げられたことを、話してくれた。


 そして、『今田さん。里香に”食い殺されない”ように、頑張ってくださいね』と言って、孝さんに頭を下げた。



 届けを出して、彼の家へと引っ越して。会社にも、報告をする。


「よかったら、お昼。どう?」

 そんな言葉で島野さんに誘われたのは、年が明けてしばらくした頃だった。   

 二つ返事で連れだって、近所のお蕎麦屋さんへと出かける。


「新婚生活は、どう?」

「どうって……まあ、こんなものかな? と」

「こんなもの。よね? 確かに」

 軽く笑った島野さんは、ほうじ茶のお湯飲みに口をつける。


「人事としては、ほっとしているのよ。年が明けるまでに結婚してくれて」

「はぁ」

「春の異動を、本格的に考え始めていたからね。課長とか部長は」

「それは、やっぱり転勤……」

「まだ、そこまではっきりとはね……」

 係長レベルが知る範囲では、なかったらしいけど。

「ただ、樋口課長は、喜んでいたわね」

 運ばれてきた、しっぽくうどんを前に、手を合わせながら、出てきた課長の名前に、こめかみがピクリとした気がした。


「手塩にかけて育てた部下の出世が、嬉しくないわけじゃないとは思うけど。仕事を任せられる右腕には、近くでサポートして欲しいのでしょうね」

「……」

「去年の春にも一人、営業所の係長にって異動したし。坂口さんには……って、うちの課長とも話していたみたいよ」

 『坂口さんが一般職になったら、異動させずにすむのに』と、どこまでが本気か分からないことまで、言っていたとか。


 あの樋口課長が私のことを、そんな風に評価してくれているとは知らなかった。 



 その評価の表れだと、思っていいのか。

 春の異動でも、“係長補佐”の肩書きが外されることは、なかった。

 だだその前に、“営業支援係”という名称がついた。


 平たく言えば、通常の営業をする上での補佐的な部署が、新設されたということで。私はそこに異動になって、書類関係の支援なんかを任された。

 さらに取引先からの急な依頼で資料を届けたり、問い合わせに応じることも。


「それは……体の良い左遷じゃないの?」

 異動の話をしたとき、孝さんは心配そうな顔をしたけど。

「左遷か異動かは、本人の受け止め方じゃない?」

 『これは左遷です』なんて辞令は、ないでしょう?



 そして。実際に仕事をしてみると、やはり書類仕事は、去年よりも確実に増えた。

 でも外向き、つまり取引先に向けての書類の作成は、会議資料とか報告書といった社内向けの仕事をしているよりも、性に合っているというか……正直に言って、楽しい。 


 それに、急な依頼のあった取引先の担当が、忙しくて行けない場合でも、私やほかの支援係の社員が代わりに訪問できるから、『後日、伺います』と待たせることが減ったとか、連絡不十分からのミスなんかも減ってきたと、嬉しい評価も聞こえてきている。

 やりがいって、言葉を実感する。


 今日は、数年前に担当していた取引先に急ぎの見積書を届けに行って。

 『おや、久しぶり。結婚したの?』と、顔見知りの数人に声を掛けられた。


「驚いたけど、すっごく嬉しかった」

 思い出しただけで、頬が緩む。

「へぇ?」

「覚えてくれていたんだ、って」

「うん」

 話を聞いている孝さんの、アーモンド型の目も嬉しそうに笑う。


「『あの時、勧めてくれた……』なんて話を、久しぶりの担当者にされると、堪らないよね」

 会社員時代を思い出したような彼の言葉に、大きく頷く。


 やっぱり、同じ感覚。

 彼と私は、こんなに重なる。



 そんな会話を交わしながら、孝さんは帳簿をつけている。 

 経済専門の単科大に通っていたから、なんとなく付け方とかは習ったような……と、思い出す程度の私に手伝えることなんて、ほとんどないけど。

 確定申告の準備をしている時に、電卓を叩くくらいのお手伝いはした。


 その時に、初めて。

 お店の名前が“まり”だと、知って、

「なんで、まり?」

 と、計算を終えた領収書の文字を辿りながら尋ねてみた。

「言葉遊び的に……」

 JINが並べた言葉が、由来だとか。 


「世間の決 まり を忘れて、止 まり 木のように休む場所。ほんのひととき、あ まり 時間を過ごす。そんなた まり 場」

「あー、確かに。言葉遊びだね」

「アイツの友達が、色紙まで書いて寄こしたんだけど」

「うん?」

「暖簾に刺繍をするときに、どうにもバランスが難しくて、“まり”の文字を入れなかったからさ」

 店に飾るのも、妙な風になってしまって。 


 そう言って立ち上がった彼が、しばらくして隣の部屋から一枚の色紙を持ってきた。

「うわ、凄い」

「だろ?」

「墨痕鮮やか、って感じ」

 流れるような達筆で書かれた文字には、不思議なリズムまで感じられた。

「でも確かに……お店には、似合わない、かも?」

「やっぱり、そう?」

「うーん」

 手書きメニューとこれは、同じ所にあるべきじゃないような。

 強いて言うなら。

 織音籠と“マスター”くらい、異質だ。



 その色紙は今、我が家のお茶の間に飾ってある。

 半年ほど前に交わした、彼とのやり取りを思い出して。

 下腹を撫でながら、口の中で読んでみる。


 そこから視線を下ろすと、小さな座布団に座った白い招き猫が、テレビの横で人を招いている。



 クロネコに呼ばれて見つけたお店には、

 マスターが定めた決まり事が、いくつかあったけど。

 不思議な心地よさで、離れがたい止まり木になった。


 十五年あまり。

 気ままな一人暮らしを満喫していた私は、

 天に呼ばれて、孝さんと二人で人生を歩く。

 二人で過ごす心地よさは、私の胎内に溜まり

 この身に宿る、新しい命となった。


 そして。

 来年の春

 この家の招き猫たちに招かれて

 家族の一員としてやってくる。


END.

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