29ー4.男達の休日作戦
俺とハユはリーネの居る部屋まで移動した。
そしてノックをして返事を待つことにした。
「リーネ。居るか?」
「入ってきていいわよ」
俺はリーネの言われるがままに部屋の中に入った。
部屋はベットが二つあって目の前の美しい海を一望できるベランダ付きだった。
そのベランダでは丸机をリーネとミリアが囲うように座って楽しくお茶をしていた。
そして近くにはバレッタが居てミニスカメイド服を着てメイドとして従事していた。
「あらハユちゃんもいるのね。おはよう」
リーネは笑顔でハユに向けて手を振った。
「リーネ様。おはようございます」
ハユは笑顔でリーネに挨拶を返していた。
「ゲイルが私を訪ねてくるなんて珍しいわね。何か企んでいるんじゃないの?」
「ハッハッハ。何か企んでいるような眼をしているか?」
「隠すならもっとうまく隠しなさいよ・・・。そんな疑問を返してくる時点で何か企んでいるのはバレバレよ」
マジか・・・そんなにバレバレなの?
「リーネ様いけません。この者から邪なオーラを感じます。絶対にエッチな事を要求してくるに決まってます」
ミリアがリーネを守るように間に入って俺を警戒した。
「良いのよミリア。気に入らなかったら断ればいいだけよ。要件は聞くだけ聞いてあげるのよ」
「流石リーネ様。お優しく聡明で憧れます!」
「で? 要件は何かしら?」
「外は快晴だし一緒に海に行かないか?」
「直球で来たわね。もっと回りくどく来ると思ってたのだけれど」
「最終的に言うんだ。それだったら直球で言った方が良いだろ? ・・・それで、どうなんだ?」
「・・・そうねえ」
リーネはあんまり行きたくなさそうにしていた。
まだ決め手が足りないか。
だが、これも想定内。
こっちにはリーネが首を縦に振るためのカードはいくつも持っている。
まずはこれだ。
「リーネ、昨日言ってたじゃねえか。暇だったらいいわよって」
「よくそんな事覚えているわね。バレッタ。今日の予定はどうなっていたかしら?」
無駄だリーネ。
そいつは既にこちら側だ。
なんで協力しているのかはわからないが。
「今日の行動予定は何も無いとお聞きしておりましたが」
「そうだったかしら?」
「はい。そのように記憶しております」
「なるほど、バレッタもグルってわけね」
理由もそろった。
これで行けるはず。
そう俺は思っていた。
だが、まだ障害があった。
それはミリアの存在だ。
リーネ側に一人でも否定する人間が居ればそれが理由となり海へ行くことを断る口実になってしまう。
「ダメですリーネ様! 絶対この人エロい事しか考えてません! やめておきましょう! 拒否しましょう!」
それも想定済みだ。寝ずに考えたこの作戦隙は無い!
「ミリア。ちょっとこっち来てもらっていいか?」
「・・・え? なんですか?」
「まあまあ、絶対に損はさせないからちょっとこっちに来て話さないか?」
「なんですか? くだらない話だったら即帰りますからね」
「ミリア、お前リーネと仲良くなりたいんだろ?」
「・・・っ! ど、どうしてそれを!?」
「見てればわかるさ。リーネにべったりだし。リーネに近づこうとする俺達をあからさまに避けようとしている所とかな」
本当は爺さんから聞いたんだがな。
「ミリア。裸の付き合いっていう言葉を知っているか?」
「は、裸って! 急に何を言い出すんですか!? エッチです!」
ミリアは顔を真っ赤にして怒ってきた。
「まあ、最後まで聞けって。これはな互いに素肌を見せ合う事によって気を許せる相手になっていくという意味なんだ。つまり今回リーネを水着姿で海に呼ぶことが可能になれば一気に仲が進展するという事だ」
多分意味は違うだろうな。
どっかの本でチラッと見ただけだしな。
だが、今回はいいように使わせてもらう。
「そ、そんな魔法のような事が本当に起きるのですか?」
「騙されたと思って俺を信じて見ろ。全てが上手くいくかもしれないぞ」
ミリアは悩んだような表情をした。
ミリアがここでこちら側に来なければ失敗に終わる可能性が高い・・・大丈夫か・・・?
「リーネ様、一緒に海へ行きましょう。今日は曇りが一切ない珍しいぐらいの快晴ですよ」
いよっしゃあ!!!
「ミリア、あなたも取り込まれたのね・・・でも、海に行ったって水着なんて持ってないわよ」
「リーネ様そこは心配いりません! 我がオーネスト領にはプライベートビーチもありますのでお客様用の水着は選り取り見取りです」
「ミリア様。その必要はございません。このバレッタはリーネ様に似合う最高の水着を用意しております!」
バレッタは白のビキニを取り出してミリアに見せていた。
確かに似合いそうだ。
「随分用意が良いのね?」
「主人のご要望に最大限答えれるように常日頃より先回りして考えを巡らしておりますのでこれぐらいはお手の物です」
「ああ、そう」
あと一歩だな。最終兵器を投入しよう。
それはそっとハユの背中を押した。
ハユはリーネに近づき上目遣いでリーネを見た。
そのしぐさはまるで小動物のようだった。
「リーネ様・・・私と一緒に海で遊ぶのは嫌ですか?」
「・・・っ! ゲイル、これがあなたの詰みという事なのね」
フハハハ。これは断れないよな?
「リーネ様・・・」
「・・・降参。いいわ。あなたの思惑通り海に行ってあげるわ」
リーネは両手を上げ降参するようなポーズを取った。
「「「やったー!」」」