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妹の災難

 あの後、真っ白に燃え尽きた兄を城戸きどさんに任せたくなかったため、私が兄の教室まで兄を送り届けると自分の教室に戻った。普段ならともかくこんな状態のお兄と二人っきりなんてさせるものか。お兄の貞操は私が守るからね。



 五時間目、六時間目と何のへんてつもなく(鬱陶しいメールはちょくちょくあったが)過ぎていき放課後。私は図書室に来ていた。貸し出し期限が今日までの本があったのだ。

 返却手続きをさっさと済ませ、次に目星を付けていた本を借りようと目的の書架に向かった。…ない…誰かが借りてるみたい。しかたない。別の本探そ。そう思いしばらく図書室をぷらぷらしていると、ポケットで携帯が震えだした。

 またか…朝からのメール攻勢を思い出し、私はうんざりした気分で携帯を取り出して着信を確認する。って電話じゃん。お兄からだし。てかこの時間部活なんじゃ…デジャヴ。嫌な予感しかしない。とりあえず図書室から出て廊下で電話にでる。


「もしもし?どうしたの?」


恐る恐るそう問いかけると、電話の向こうからはもしもしと知らない男の声がする。嫌な予感当たった~。あいつまた落としたんかい!


「もしかしてその携帯落ちてました?私それの持ち主の妹なんですけど、今から受け取りに行きますね。どこに行けばいいですか?」


勢い込んでそうまくし立てると、クツクツと忍び笑いが聞こえる。あれ?ちょっと前にも似たようなことあったような。


「強いていうなら保健室かな。引き取ってもらうのは携帯じゃなくて持ち主の方だけど」


「保健室に引き取りにって、兄に何かあったんですか?」


「大したことじゃないんだけど…」


 電話の相手によると、兄は彼の投げたボールが顔面に当たって脳震とうをおこしたらしい。

 ベタな展開キタコレ!!昔から繰り返されてきたこの展開。少女マンガの王道と言うだけでなく、兄自身もこれまでの人生で何回経験していることやら。学習能力無いんじゃないの?

 それにしても付き添ってるのが男なあたり、兄らしいというかなんというか。ブッフゥ!!バスケ部女マネいるじゃん。な ん で 男!!

 学習しない兄に呆れつつも、どんなトラブルにもフラグの立たない彼に内心爆笑してしまう。


「…すみま…せん……ぶっふぅ…うぉっほん…………っうん…兄がお世話をかけてしまったようで。」


 いかんいかん思わず笑いが出てしまった。咳払いひとつで何とか笑いを抑える。


「今からそちらに向かいます。すみませんがもう少し兄をお願いします。」


「O.K.待ってる。早く来てね。」


 そう言って電話を切ると図書室へ戻る。本を借りたかったけど仕方ない、回収に行きますか。私は閲覧スペースに放置してあった荷物をまとめると図書室を後にした。






 図書室を後にして数分後。私は保健室の前に来ていた。一応失礼しますと一言ことわってから扉を開ける。室内を見渡すと三床ほどあるベッドのうち一番奥の窓際のベッドのカーテンが閉められている。他のベッドは人がいないようなので間違いなくあそこだろう。保健の先生は外出中のようで姿がない。ベッドに近寄っていくと、カーテンの隙間からなんとなく見たことがあるような顔をした男が顔を出す。無造作に散らされた男にしては長めの茶色い髪に黒い目。顔立ちはワイルド系。上はバスケ部のジャージ、下は黒のハーフパンツという出で立ちだ。背は高く兄と同じ位かそれ以上。う~んどこで見たんだったか…思い出せないな。とりあえずさっきの電話の感じからいくと先輩だろう。


「君が総司そうしの妹のみやびちゃん?わざわざ呼び出して悪いね。」


 先輩はそういうとカーテンを持ち上げ中へと促してくる。


「すみません兄がご迷惑を」


 私はそういうと会釈をしてカーテンの中へ入った。カーテンの内側へ入ると私が兄の顔を見やすいよう枕元の方にスペースを空けてくれる。兄の顔を覗き込むと、のんきに寝こけているようにしか見えない。特に異常は無いようなのでホッとする。


「元はといえば俺がボールぶつけちゃったのが悪いんだし…」


 申し訳ないと頭を下げてくる先輩に恐縮してしまう。兄のドジッ子体質と昼休みのあの様子を思い浮かべると、一概に先輩だけのせいとは言い切れまい。大方練習中もあの調子で心ここにあらずだったに違いない。


「頭を上げてください。兄のことですから練習中にぼんやりしてたんじゃないですか?」


 先輩の頭を上げさせるとにっこり微笑み、兄にはよく言っておきますのでと言っておく。先輩は一瞬呆けた様な表情をした後、人の悪い笑顔を浮かべずずいと距離をつめてきた。

急につまった距離に驚き思わず後ずさる。しかし更に距離をつめられ壁際に追い込まれてしまう。ち、近いよっ!この人急にどうしたの?困惑して先輩を見上げると彼は私に覆い被さるように更に近づいてきた。先輩の左手が肘を支えにして退路を断つように私の頭の上に置かれている。逆サイドには兄の寝こけているベッドがあり逃げ場がない。こっこれは、もしや噂に聞く壁ドンとやらか!現実に私が体験する時がくるとは!ってそんな事考えてる場合じゃない!どう考えても初対面の距離じゃないし!

 内心一人でテンパリまくっていると先輩の右手が上がり指の背で私の頬をなでてきた。瞬間背筋に寒気が走り一気に鳥肌が全身に立つ。ぎゃーーー!!朝にもこんなことあった~~~!!マジイケメン爆発しろ!!!

 先輩はクスクスと笑いながら私の耳元に唇を寄せる。


「かわい。総司が男に紹介したがらない理由がわかる気がする。」


 ないないない。かわいくないし。朝といい今といいみんな目が腐ってんじゃないの!


「急になんですか?やめてください!」


 私は先輩の目を睨みつけ精一杯の威勢を張る。しかし先輩はまったく気にした様子は無く、むしろ嬉々とした様子でより距離を縮めてくる。

 もう本当に勘弁してください。なんでもいいから誰か助けて!!

 1~3話サブタイトル変更しました。内容は変わってません。

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