妹の想い
迫ってくる人影を睨み付けるように見上げる。も~!今日はこんなんばっか!!いい加減にしてくれないかな。先輩は人の悪い笑みを浮かべたまま、頬をなでていた手をあごのラインまで下ろしてきた。そのままあごに手をかけ親指で私の唇をなぞるように動かしてくる。
ぴぎゃー!無理無理無理無理!寒い寒い寒い!全身鳥肌ヤバいことなってるから!マジでやめれ!指を噛んでやろうか!
私が混乱のまま口を開こうとしたその時、左腕を誰かにつかまれる感覚がしてそのままベッドの方向へ倒れこんだ。何が起こったか把握できないうちに、気づいたら私は慣れた温もりと香りに包まれていた。いつの間にか起きた兄が私を護るように後ろから抱き込んでいたのだ。さっきまで感じていた悪寒は収まり兄の体温を感じて全身から力が抜けた。
『…たすけて……おにいちゃん…くる…し……』
『みやび、だいじょうぶ。お兄ちゃんがそばにいるから。ぜったいお兄ちゃんがまもってやる。』
兄に護られている安堵感からふと昔の記憶がよみがえる。懐かしい。あの時はインフルエンザで大変だった。一生懸命看病してくれる姿がやけに頼もしく感じたっけ。あの時必死になって背中に回された手の温もりが、今体を支えてくれている温もりに重なりふっと笑いが漏れる。
「…。…い…び。……ろ…やび。雅。おい!大丈夫か?」
いけない。ボーっとしてた。一瞬にして現実に引き戻される。
「ごめんごめん。ボーっとしてた。」
「心配かけんな。ばぁか。」
そう言いつつ兄はホッとしたようなため息をつく。顔は見えないが苦笑する兄の表情がありありと思い浮かんだ。ふと周囲を見渡すと私がボーっとしてる間に先輩さんの姿が消えていた。
「あれ?先輩は?」
「ん?主将のことか?部活に戻ったけど。てかお前ずっとここにいたよな?何で覚えてないんだよ。大丈夫か?」
えっあの変態2号バスケ部の主将なの?うちの高校のバスケ部って確か結構強豪じゃ。あの変態2号で大丈夫なのかバスケ部。
「まあいいや。帰るぞ。」
「えっ?部活出なくていいの?」
「さっき主将に今日は帰っていいって言われてただろ?お前本当に大丈夫か?熱でもあるんじゃないのか?」
やっべマジで何にも聞いてなかった。ぜんっぜん記憶に無い。そんなことを考えていると、私の前に回っていた兄の手が額を覆った。ん~熱は無いみたいだけどなぁ。後ろでブツブツつぶやいているのが聞こえる。
「とりあえず、立てるか?」
「私よりお兄でしょ。倒れて保健室に運ばれたんだから」
私は兄の手を抜け出しぴょいっとベッドから飛び降りると兄に手を差し出す。ちょっと無理な体勢で抱き込まれてたから苦しかったんだよね。兄は苦笑をもらしながら私の手をとりベッドから立ち上がった。
「心配ねぇよ。いつものことだろ?着替えるからちょっと待ってろ。」
そう言って保健室から出ていく。いつもの事として自覚があったことにビックリだ。私も後に続いて保健室を出る。前を歩く兄を眺めながら、その後姿に普段は感じない頼もしさを感じる。知らず知らずのうちに唇が笑みの形にひき上がっていく。
頼りにしてるよ。お兄ちゃん。
そういえば、保健室空にしてきちゃった。まっあとで職員室に寄ればいっか。
妹の話はひとまず完結です。ここまでお付き合いありがとうございました。次は兄視点で今回の話で書ききれなかったところを書いていこうかなと思います。その前に別連載を更新するかもしれませんが…。
いいかげんシリーズをどんどん増やしていくのもどうかと思い始めております。でも長編連載にして完結させる自信が無い…。そのうち再編して長編にするかもしれません。でもしばらくはこのまま。よろしくお願いします。




