後
「先触れで知っております。殿下にご挨拶を申し上げます。宰相を拝命したドーマス・グリフスでございます」
「ほお、名家出身ですね。レオポルド・フォン・ノースリアです」
若い宰相と握手を交わした。物腰柔らかい奴だ。
早馬でダキア王宮まで一月で着いた。
その間にゲルド殿下が国王に就任、側近達も父親の職責を継いだ。
先のオリビスを撃退したことが大きい。国内では支持されているようだ。敵に塩を贈ったという感じか。
王都はそれなりに栄えている。
馬鹿王子が統治してからと言って廃れることはない。
意外なことに、俺が王都に行く間は休戦協定が結ばれた。
それだけではない辺境伯のご子息一党が護衛に付いてくれたのだ。
ここで講和の条件を申し上げた。
「無賠償、無割譲で講和しない?」
トーマス殿の口角は一瞬であがった。
「プ、それは無理です。貴国と置き換えて下さい。侵略者に無賠償で講和などできますまい」
それは想定内だ。だから言葉の言い換えを提言した。
「ですよねー、我国も体面がございます。なら、新王妃、デイジー王妃殿下は炊き出しに熱心で愛民の志が強いと聞きます。デイジー王妃殿下の財団に寄付で如何でしょうか?」
「寄付・・・それは何とも。陛下にお伺いしなければなりますまい」
その後、国王に就任したゲルド陛下に謁見した。
トーマス殿と陛下と王妃殿下がおられる。
「ああ?面倒くさい。お前らが対処しろよ。デイジー行くぞ」
「いえ、デイジー様に寄付をしたくて参りました・・・」
「なら、デイジーと話しろよ。ちょっかいをかけたらどうなるか分かっているよな?」
「もちろんでございます」
「まあ、素晴らしいわ。最近、財源、財源ってオスカーがうるさいのよ」
やっぱり戦費で困っているのか?
話はなんなくついた。
「フフフフフ、お義姉様には申訳ないことをしたと思っているのよ。お義姉様は元気かしら」
「ええ、つつがなく暮らしております」
「まあ、良かったわ」
何だ。罪悪感がないようだ。
ここで陛下が口を開いた。
「フン、デイジーはレイシアのようにうるさいことは言わない。黙ってデイジーはいろいろやってくれている。レイシアが国外追放になったのは当然のことよ」
なるほど、レイシア嬢は頭の良い働き者で、殿下に職責を全うして欲しかったのから意見をしていたのだろうな。
一応、国力を裂くために毒を仕込んでおくか・・・・デイジー王妃殿下は愛民の心が強い。そこを突く。
「愛民精神豊かな王妃殿下に申し上げます。此度は貴国の勝ちでございます。民にお祝いをしては如何ですか?」
「まあ、炊き出し・・・慰問、他にあるかしら?」
「そうですね。貧民の借金を帳消しにしてはどうかと・・・おっと、これは・・余計なことを言いました。もし実行したら貴国はますます王室と臣民が一体になるでしょう」
「まあ、良いわね」
トーマス殿は苦笑いをしている。おそらく分かっている。
借金の帳消し、これ善政に思えるが結果として商業が滞ってしまう。
このままデイジー王妃殿下には愛民に突き進んで欲しい。
やっぱりトーマス殿に苦言を言われた。
「レオポルド殿下、いささか口が過ぎますぞ。内政干渉です」
「申訳ございません」
際どかったがこれですんだ。
と思ったが・・・・回廊を歩いていたら騎士に前を塞がれた。
「待てや、こちらは侵略されて大勢の将兵が亡くなったのだ。王子の首一つくらいもらわなければ辻褄が合わねえ!」
「ウェーバー殿!父上の客人ですぞ」
護衛と一触即発だ。側近の近衛騎士団長だ。
こちらも大勢亡くなっているが、それを言っても水掛け論でお互い様だ。
だから、謀を話した。
「王子の首一つでは安いでしょう。実は我が父上の首、退位を考えております」
「何だと、それは本当か?」
「はい、元々我が王国の戦争目的はゲルド陛下を廃嫡して、レイシア嬢を女王につけることです。
なら、失敗した我が国王は退位するべきだと考えております。それで将兵の遺族に説明をして頂ければ幸いです」
「信頼できるのか?」
「違います。退位の画策は私が実行者です。信頼して帰国させて頂いたら出来ます。
貴国では戦争の責任を取って退位をしたと宣伝して下さい。我国では老齢のためと公式発表します。
父上も覚悟をされております」
実際は母上と兄上夫妻が実行するが、延命のために嘘を言った。
「まあ、良い行け!」
「ご配慮感謝します」
さて、母上達は動いてくれているかな。
と思ったら、砦に戻ったら報告を受けた。
「殿下、陛下は退位、ディビス殿下が即位をされました」
父上の退位が宣言され新国王になった兄上がデイジーの財団に寄付を払ってくれた。
かくして砦を解き。帰国したが、俺の居場所はない。
公式には敗軍の将だ。
俺は臣籍降下を願い出た。
「兄上、いや、陛下、財源が厳しいでしょう。私は王族を抜けます。その予算を財源復興に充てて下さい」
「レオポルドはどうする?大公の地位を用意している」
「ご冗談を、私など無能ですよ」
「どうする気だ」
「さて、年金を頂いて、どこかの辺境で暮らすつもりです」
王族を退いたら上級平民が暮らせるぐらいの年金がでるのだ。
王宮を去ったが。
ニーナとレイシア嬢のお見送りはない。
まあ、良いだろう。二人で仲良くしてくれ。
無能はただ去るべきだ。
辺境で一軒家を借りて本を読み暮らしていたら。
一年後、来訪者が現われた。立派な馬車だ。王家の紋章?
「レオポルド・ノースリア様」
「お兄様!」
「ヒィ、レイシア様とニーナ王女殿下!ハハー」
もう、王族ではないので平伏をして出むかえたが。
「お兄様、そういうの良いから、王族に復帰命令ですよ」
「え、何で・・・」
いつも結論を先に言うニーナの代わりにレイシア様が代弁してくれた。
「ダキア王国がきな臭いのです。誰かの助言で、デイジーが徳政を行うと主張していて、商会と王家の間に軋轢が生じておりますわ」
「え、それで俺?」
「はい、グレイモア辺境伯にも顔が利きますわ。責任を取って大公になり。私と・・・・結婚をして・・・・頂かなければ困りますわ」
「何で困るの?」
「殿下がおっしゃったではございませんか?私は目立つので平民になるのは無理と。平民のレオポルド様とは結婚出来ませんわ」
「お兄様、レイシア様の婿になって下さい!王命ですよ」
何だか、逃げられない。レイシア様は有能な働き者だ。レイシアの夫になったらどうするべきか?考えていなかった。
これからゆっくり考えようと思う日々だ。
最後までお読み頂き有難うございました。




