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悪役令嬢を婚約破棄して追放した国を討伐をしたが負けた国の話  作者: 山田 勝


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中

「レオポルドよ!軍を率いダキア王国を討伐せよ!」


 うわ。やっぱり俺に来たか・・・兄上の敗戦の報と同時に来た。


 やんわりと断ろう。


「陛下、それは悪手です」

「何故だ。全軍でかかれはレオポルドの案であろう」


「それはあの時は有効でした。国家総動員して10万を超える大軍があれば奇襲になり。王都までいけたかもしれません。報告によれば防衛線が出来ております。膠着状態になるでしょう。その間、他国が攻めて来るかも知れません」


「なら、どうすれば良い」


「はい、講和です」


 俺は講和を進言した。やっちまったことは仕方ない。

 第一次ダキア征伐の時は外国の社交会に出席していて不在だった母上も同意してくれた。


「陛下、レオボルドの意見がいいですわ」

「妃よ。それでは死んだ将兵が浮かばれない!」

「しかし、これ以上、戦死者が出たら如何しますか?魔王軍ではないのですよ」


 母上はまともだ。

 王太子夫妻も同意してくれた。


「陛下、母上とレオポルドの言う通りです」

「ええ、勝ってもダキア王国の王配の地位です。国家存亡の戦いではありません」



 しかし、正論だけでは人は動かせないのだ。


 父上は商人のように損切りが出来ない。

 体面を気にしておられる。


 ここでやめたら将兵の遺族や貴族たち民は何て言うのだろうと考えておられる。故に戦争の開始は慎重に、始まる前から落とし所を考えなくてはいけないのだ。


 ここは・・・


「陛下、畏まりました。軍を率います。しかし、条件がございます」


「言え!」


「まず軍を任せたら口出しは無用。条約を結ぶまでの全権委任が欲しいです」


「うむ。当然だ。勝ってレイシア嬢の夫になるが良い」


「二つ目、兵は四万人と輜重隊と工兵が欲しいです」


「国家総動員ではないのか?」


「いいえ、私が失敗したら、国家総動員をされての陛下の親征がよろしかろうと思います」


「まあ、良い」


「三つ目、陛下、息子として言いますが、覚悟をして頂きたい」


「もとより即位の日から覚悟をしておるわ!」



 全権委任があることを良いことに王太子であるディビス兄上にお願いした。


「兵站の責任者をお願いしたい」

「分かった。考えがあるのだな」

「はい、国境付近に砦を築き動かない所存です」



 将軍達には・・・


「軍を4つに分けて、それぞれ騎兵を配置して独立して動けるように」

「「「「了解です」」」


 4人を将軍を命じた。いずれも若い将校クラスの繰り上げだ。

 それぞれ一万、合計4万人だ。


 そして、輜重隊と工兵は・・・



「農民の募兵、条件は土木工事を出来る者、それと、木こりに大工と、輜重隊を守る軍は冒険者を集めて・・・と、それと吟遊詩人部隊だ」


「はあ、吟遊詩人は分かりません・・・そうか、宣伝工作ですね」

「惜しい。少し違う」


 王宮で慌ただしく準備しているとレイシア嬢が相談に来た。



「グスン、私、この国を出て行きますわ」


 レイシア嬢が出て行く決断をされたが。


「いや、もう止められませんよ。国家は魔道機械みたいなもので一端動いたら止められないのはレイシア嬢なら分かるでしょう?」


「でも・・・名目がなくなれば・・」

「他国に行っても同じことが起きますよ」

「平民になりますわ」

「それ、無理、レイシア嬢は美しすぎる賢すぎる優しすぎる。すぐに公女だったとわかりますよ」


 あれ、これ口説いていないか?


「キャア」

「あ、すみません。手を握ってしまって・・・」


 気がついたら手を握っていた。


「何とかしますよ。だからニーナの話し相手になって下さい。少しは気品が身につくでしょう」


「お、お兄様、何を言っているの!」

「ニーナ・・・」


 カーテンの裾に隠れて聞き耳を立てていたのか・・・


「いや、ニーナも気品があるよ・・更に気品がつくよ」


「フン、お兄様も大概よ。お兄様も・・・何だっけ。『馬鹿な怠け者』の気質があるわ!」


 気になることを言ってレイシア嬢の手を引き王宮の奥に向かった。


「さあ、レイシア様、鈍感な兄上に構ってはいけませんわ」

「はい・・・」





 出征の前日に、戦争の落とし所を兄上夫妻と母上に話をしておいた。


 ガセボでお茶会をする。王族はいつも人の目がある。

 だから。


「大変でございます。ニーナ王女殿下が猫を追いかけて木に登りました」

「まあ、ここは大丈夫です。男手が必要でしょう。執事は向かいなさい」

「はい、王妃殿下」


 ニーナに協力をしてもらった。


 また、ガチャン!と茶器を落して。


「すまない。スザンナよ。取り替えてくれないか?」

「はい、ただいま」


 わずか数分の間に戦争の落とし所を言った。


「実は母上、兄上、義姉上、私は戦争の落とし所は、こう考えております・・・」


「「まあ」」

「レオポルドよ。それで本当によいのか?」

「ええ、王都市民の目をみればわかります。冷めています。それしかないでしょう」



「新しいカップを持って参りました」


 これでどこまで動いてくれるか。三人は優秀だから実行してくれるだろう。



 かくして出征をした。


 向こうの辺境伯軍はおよそ一万、四倍の戦力だ。


 悠々自適に国境を侵犯して砦を築いた。


 空堀を掘り。先が尖った丸太で塀を作り三重に囲んだ。

 4万人が住むのだ。まるで一つの街だ。


 時々、小競り合いが起きるが、一月もたたないうちに最低の防衛機能が備わった砦が誕生した。


 恐らく、先の大勝を受けて、また奥に引き込んで包囲殲滅を企図していたと思う。

 人は一度上手くいったらまた上手く行くと思うものだ。



 その隙をついた。

 そして、ダキア王都から援軍が来るとしたら、数ヶ月後か。

 その間、将兵を交代で休ませた。



「さあ、砦の建設は大工に任せて交代で軍を休ませろ。後方の街で休め。四隊のうち砦内に三隊いれば良いよ。細部任す」

「よろしいのですか?」

「進軍しなくては・・」


「いらない。ここにいることがダキア王国の威信を傷つけることになるのだ」



 そして、敵は小部隊を繰り出して砦から出るように挑発行為に来るが、こちらも吟遊詩人部隊に挑発させた。

 拡声魔法をかけている。



【ヤーイ!ヤーイ!かかって来いよ!臆病者!】

【バーカ、バーカ、バーカ!お前らの頭はオーク並!】

【馬鹿王子の国、恥ずかしいな!】



 これ、本当に吟遊詩人か?まあ、難しい事をいうよりもこっちの方がよいか?


 そのうち、捕虜を得た。

 小部隊で偵察に来たのを我が軍がとらえたのだ。


 尋問に参加した。


 興味があるのは次の一点だ。


「君、外国だとゲルド王太子殿下は馬鹿と評判だけど、どうして戦うの?」

「し、知るか、侵略者め」


 そうか、祖国愛で戦っているのか。

 民にとって為政者の婚約破棄とかはどうでも良いのだな。

 と改めて思う。


「俺をどうする!」

「あ、そう、贈物をあげるから帰って良いよ」


 これは種だ。食料を渡して帰らせた。食料は沢山あるとの宣伝だ。

 こちらは兄上の配慮で兵站が途絶えない。


 今の仕事は輜重隊を襲おうとする辺境伯軍との戦いぐらいだ。

 それからしばらくして、軍使がやってきた。

 直接会う。




「初めまして、レオポルド・フォン・ノースリアです。第三王子です」

「ワシはダキア王国グレイモア辺境伯である」


 向こうの辺境伯が直々に来た。壮年で体躯は小さいがガッチリしている。



「さすがに、宣撫工作で馬鹿王子と言わないで下され」

「アハハハ、そうですよね」



「さあ、ワインをどうぞ」


「うむ・・・しかし、どういうことか?王子なら武勲を立てたいものだと思ったが一向に攻める気がない。王宮も訝しげに思っているぞ」



 とりとめもない話をして本命を切り出した。



「攻めないのは、実は講和をしたくて・・・このような面倒なことをしました」

「ほう、断ったら」

「いすわるしかありませんね。吟遊詩人部隊に悪口を言いまくらせることしか出来ませんがね」



「気に入った。王宮までご案内しよう。しかし、殿下が処刑を命じるかも知れませんぞ。人質に取られるかも知れない」


「ええ、それで良いです」


 かくして、気が変わらないうちにその日のうちにダキア王都に向け出立した。



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