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静かに暮らしたいだけなのに周囲が俺を天才扱いしてくる  作者: 花梨


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8/18

逃げたかっただけ

 王立学園の入学試験。

 一ヶ月後。

 最悪である。

 しかも。

「レイなら余裕ね♡」

「うむ。むしろ試験官が心配だ」

 両親が完全にやる気だった。

 違う。

 俺は行きたくない。

 静かに暮らしたい。

 なぜ誰もそこを理解しないのか。

 ◇

 数日後。

 俺は本気で悩んでいた。

 どうすれば試験を回避できるか。

 答えは一つ。

 逃げる。

 これしかない。

 俺は荷物を見つめる。

 パン。

 水。

 毛布。

 ……うん。

 完璧だ。

「レイ〜?」

 母親の声。

 まずい。

 俺は急いで荷物を隠した。

「な、なに?」

「今日、お出かけしない?」

 断りたい。

 かなり。

 だが。

「試験用のお洋服も見ましょうね♡」

 終わった。

 逃げるしかない。

 ◇

 その夜。

 家が静かになった頃。

 俺はそっと窓を開けた。

 風が気持ちいい。

 よし。

 今ならいける。

 俺は静かに外へ出る。

 成功だった。

 このまま森の方へ行けば――。

 ガサッ。

「……?」

 茂みが揺れた。

 次の瞬間。

 黒い影が飛び出してくる。

「ギャオッ!!」

 狼型魔物。

 しかもでかい。

 なんでいるんだ。

 怖。

 俺は反射的に後退する。

 すると。

 ガンッ!!

 足が石に当たった。

「あ」

 石が飛ぶ。

 カツン。

 近くの木へ当たる。

 すると。

 バキィッ!!

 木の上の枝が折れた。

 さらに。

 ドサァァッ!!

 大量の果実が魔物へ直撃。

「ギャンッ!?」

 驚いた魔物が暴走。

 そのまま森の奥へ突っ込んでいく。

 ――そして。

 ドゴォォォン!!

 遠くで爆発音。

 え。

 なに。

 しばらくして。

「なんだ今の!?」

「森の魔物の群れが逃げ出したぞ!!」

 街の方が騒がしくなった。

 嫌な予感しかしない。

 かなり。

 ◇

 案の定。

 数分後には衛兵が集まっていた。

「森の主が消えた……?」

「ありえん……」

「まさか誰かが倒したのか……!?」

 いや知らん。

 俺も怖い。

 だが。

「黒髪の子供を見たぞ!」

 終わった。

 誰だ見たの。

 衛兵たちの顔色が変わる。

「まさか……」

「“沈黙の英雄”……!」

 その名前、 そろそろ法律で禁止してほしい。

 すると衛兵隊長が真剣な顔で呟く。

「王都へ報告しろ」

 やめて。

「予定を早めるべきかもしれん」

 なにを。

 聞きたくない。

 ◇

 帰宅後。

 当然、逃亡はバレた。

「レイ♡」

 母親が笑顔だった。

 怖い。

「どこへ行こうとしてたのかしら♡」

「……さんぽ」

 嘘ではない。

 たぶん。

 だが父親は深く頷いた。

「試験前に精神統一か……!」

 違う。

 逃げようとしてた。

 しかし次の瞬間。

 コンコン。

 また扉が叩かれる。

 嫌な予感。

 父親が扉を開く。

 そこには。

 豪華な制服を着た少女が立っていた。

 金髪。

 赤い瞳。

 明らかに偉そう。

「こちらに“レイ”という方がいますわね?」

 ……誰?

 すると父親が青ざめる。

「お、王女殿下……!?」

 え。

 なんで。

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