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第二章完結です。
スピンクスのマレーヤも、うるさいだけでなく、ちゃんと能力あったんですな!w
「けどまぁ、なんだ。終わってみれば、あの家に憑いてたスピリットも成仏して、良かったんじゃないか」
帰りの車の中。ハンドルを握りながら源大朗が言う。
「そうですね。成仏、は正しいのかわかりませんが。あ、次の信号、右です」
地図を見ながら、助手席のアスタリ。
夷やの社用車、軽のデッキバンにはカーナビなど高級な装備はないので、こうして地図が読めるアスタリやキアがナビをする。
一度など、マレーヤがやりたがって助手席に座ったが、とんでもないところへ行ってしまい、二時間近く遠回りになったとか。
「あの幽霊さー、キアが来るのがわかって、あの家をきれいにしたのかなー」
そのマレーヤ、後ろの席から。
その言葉どおり、スピリットが去ったあとの洋館は廃屋どうぜんで、いつ崩れ落ちてもおかしくないほどだった。
「地元では、幽霊屋敷って有名だったみたいですね。右車線へ、高速に乗ります。わたしたちにだけ、きれいな家に見えていた……」
「見せていた、んだろうな。あの鏡。キアを取り込もうとして……、けど、最後にキアが加奈を想って、それが消え去るときの慰めになって……、か」
「キアを守ろうとしたのかな。マレーヤがキアと寝たいって、行ったら、おっさんだったし」
「はぁ? なんだそれ。おまえ、オレが寝てるとこに来てたのか」
「えっ! ぁ、あの……、なーんて、ね!」
あわてて取り繕うマレーヤ。源大朗のベッドにもぐりこんで、キアと思って抱き着いた、とは口が裂けても言えない。
「守る、というか、邪魔者扱い、かも。キアを取られたくない、と」
「あげく、憑りこもう、ってのはかんべんだがな」
みんなの会話の中で、キアだけが口を閉ざしていた。
「……」
じっと、ずっと、流れる車窓に目をあずけている。
「でもさー、じゃあ、あのコ、加奈だっけ。どうなっちゃったんだろうねー。写真もないし、やっぱり……」
「帰ったら、調べてみます。登記簿から、昔の所有者もわかるでしょうし、もしかしたらあのご家族の消息も」
「けどな、調べなくてもいいんじゃないか」
「調べなくても……、そう、ですね。そうかも」
「ああ。知らなくてもいいことだってある。少なくとも、オレたちの仕事じゃないし、な」
最後は源大朗、自分に言うようだった。
「えー、どういうことー。調べてわかるならいいじゃーん。あのコ、かわいかったし、気になるのにー、ぶーぶー」
「は、好きにしろ。にしても、けっきょくあの婆あに嵌められたってことかよ」
「お時さんに?」
「ああ。単純な不動産調査だとか言いやがって。きっとあのスピリットのことも、うすうす知ってやがったな。まったく食えねえ婆だぜ!」
吐き出すが、源大朗の口元は笑っている。
ハンドルを握りながら、高速の本線に合流すべく、ぐん、と加速した。
*
「ほら、美和、ハンカチ忘れてるわよ! お父さんも、お弁当、はい」
朝の玄関は、ラッシュアワーの電車さながらの混雑ぶりだ。
さほど広くない玄関の三和土に制服姿の娘、ちょっとくたびれたスーツ姿は夫だろう。上がり框の向こう、玄関ホールからつながる階段を、
「やべえ!」
どたどたと降りて来る、やはり制服姿の息子。
「眞一! 靴下裏表!」
「え、マジか! やっべえ時間ねえ、このまま行く!」
さらに玄関三和土が狭くなる。
「それじゃお母さん!」
「行ってきます!」
「じゃあ行って来るよ、加奈」
あわただしく出て行こうとする三人を見送る、エプロン姿の主婦。
「いってらっしゃい!」
閉まりかけたドアを、施錠しようと三和土に降りたときだ、
「そうだ! 今日、肇おじさん、来るんだっけ」
娘が振り返って顔を出す。
「ええ。みんなで晩ご飯、ね」
「ねえねえ、あの話、してよ。肇おじさんが高校入学で、記念写真撮るときに、お母さん、まえの日、校庭の雲梯から落ちて、脚の骨折って、入院してた、って」
「そんな話、おもしろくもないでしょ。何度も」
「それから家族写真撮るときに限って、お母さんいつも、怪我したりアレルギーで入院したり、ぜんぜん写ってないんだって。笑えるー」
「おかしくありません。ほら、遅れるわよ! 早く行きなさい」
「おじさんが話すとおもしろいんだよー。あはは、行ってきまーす!」
こんどこそ娘が出て行き、後ろ手で振る手に、加奈も手を振ってこたえる。
ドアを閉めながら、
「そんなこともあったわね。……あの家、いまどうなって」
*
「どう、ですか。源大朗さん……」
と、ここは三人の帰りを待つ夷や。
定休日の今日、シャッターを下ろした店内には、留守をあずかるラウネアだけ。
そのラウネア、鏡の前、はにかんでポーズを取る。いつものカーディガンやロングスカートではなく、鮮やかなビキニの水着姿だ。
「海には行けないけれど、水着、買ったんですよ。でも……、やっぱり、恥ずかしい」
胸を張れずに、つい前かがみに。外したパレオをまた、腰に巻いてしまう。
「いつか、見せられたらいいんですけれど」
ふぅー、とため息。気を取り直して、着替えようとしたそのとき。
ガラガラガラ! 外側からシャッターがけたたましく開いた。
「戻ったぞー、ラウネア、留守番、ご苦労さ……、ん、って、ラウネア?」
玄関戸も開けて、源大朗が。その後ろに、キア、マレーヤ、アスタリも。
「ラウネア……」
「ラウネアさん、その恰好」
「わぁ! ラウネアさん、スタイルいーい! だいたぁん!」
穴が開くほど見つめらる、その視線の束に、
「み、みなさん。お、おかえりなさ、ぃ……、きゃぁあああああっ!」
ときならぬ、悲鳴が迸った。
明日も更新予定です。




