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『好きになったらいけない恋』高校二年、春。ようやくできた後輩は面倒で不器用で、だけど目が離せない。  作者: 湊 俊介


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初めてのお泊まり。

土曜の部活後。


「先輩! 映画借りて行きましょ! ホラー映画! 気になってたのあるんですよね!」


部活終わりにヤマトが提案してきた。土曜の夜、ヤマトの家に泊まって映画を見る約束だ。初めての泊まりで、俺も結構ワクワクしていた。


「いーよ~ なんてやつ?」


「【ニンジャVSこっくりさん】ってやつです!」


「なにそれ…怖くなさそう。まあ、任せるよ。お菓子買ってこうぜ。」


---


ヤマトの家に到着し、玄関で「お邪魔します」と言うと、ヤマトのお母さんが笑顔で迎えてくれた。


「いらっしゃ~い! 噂の先輩君ね。いつもヤマトがお世話になってます。」


「噂の??」


「いつも『先輩が、先輩が』って楽しそうに話してくるのよ。」


「お母さん!!」 ヤマトは顔を赤らめて恥ずかしそうに叫んだ。


「ゆっくりしていってね。ご飯用意するから。」


「ありがとうございます! いつもヤマトが家のご飯美味しいって自慢してきますよ。」


「先輩っ!!」 ヤマトに腕を引っ張られ、俺は笑いながら部屋へ連れて行かれた。


---


部屋に入ると、ヤマトが目を輝かせて言った。


「先輩、ご飯食べたら温泉行きましょ! お母さんが送ってくれるって! 一緒に入りましょ!」


この前の部活での一件以来、ヤマトとの距離がぐっと近くなった気がする。喧嘩するほど仲がいいってやつかな。


「いーよー。身体洗ってあげる~。」


「はい! 僕も先輩の背中流します!」


冗談のつもりが真に受けられ、俺は苦笑い。(まあいいか)と思いながら、ヤマトの布団に仰向けになった。


「先輩!」 ヤマトが俺の上に乗っかって顔を近づけてくる。


「重いよ~ なに?」


嫌いじゃないので、ついヤマトの頭を撫でると、ヤマトは俺の胸に顔をうずめてきた。


「先輩! 僕、先輩とお泊まりできて嬉しいです!」


はたから見たらヤバい状況だけど、二人きりだから気楽だ。


ガチャ。


「え、あっ、ごめん! そういうこと、お取込み中ね!」


ヤマトのお母さんがドアを開けて入ってきた。


「いやいやいや、違います! 仲良いだけです!」


「ちがうよ! お母さん!」


二人で全力で否定した。


---


夕食はヤマトのお母さんの手作りカレー。こんな美味しいカレーは初めてで、ヤマトに伝えると「うちのお母さん、料理上手だから!」と自慢げだった。


その後、ヤマトのお母さんに連れられ、3人で山の上の露天風呂が有名な温泉へ。男湯はほぼ貸し切り状態だった。


「先輩! 背中向けてください!」


「うっ、うん。」


「髪の毛洗いますね~。かゆいところありますか~?」


ヤマトがシャンプーで俺の頭を洗い、背中をゴシゴシこすってくる。少し丁寧すぎる言葉遣いに違和感を覚えたが、気にせず身を任せた。


「背中もOKですよ。こっち向いてください。」


恥ずかしさもあったけど体を向けると、ヤマトは「右手から洗いますね~」と丁寧に洗い始めた。首、胸、腹と進み、股間は飛ばして足へ。足の裏をこすられるとくすぐったくて声が出た。


「くすぐったいですか?」


「うん。」


「流しますね~。」


シャワーで流しながら、ヤマトが突然ポツリ。


「先輩、ちんちん大きいですね。」


確かにヤマトはまだ成長期前で、体も華奢だし毛も少ない。


「お前が小さいだけだ。」


「え…」 ヤマトがショックを受けた顔をした。


「じゃあ次、交代ね!」


今度は俺がヤマトの背中を洗う。程よく引き締まった体と綺麗な肌。背中をゴシゴシすると、「気持ちいいです!」と力が抜けた声を出してきた。


---


洗い終えて露天風呂へ。夜景が美しく、二人でしばらく見とれた。


「うわぁ~、先輩、綺麗ですね。一緒に見れて良かったです。」


湯船に浸かると、広いのにヤマトがすぐ隣にきて、腕が触れ合う。


「先輩?」


「なに?」


「…何でもないです! あがったらアイス食べましょ!」


何か言いたげだったけど、ヤマトは言葉を飲み込んだ。(なんだろう…)


のぼせる前にあがり、売店でアイスを買ってヤマトのお母さんを待った。


---


帰りの車で後部座席に並んで座っていると、ヤマトが寝てしまい、俺の方にもたれてきた。


「この子の相手、大変でしょ。内気で中学でも友達いないみたいだったから心配してたんだけど、サトシくんのおかげで楽しく学校行けてるみたいでよかった。」


ヤマトのお母さんが嬉しそうに言った。


「いえいえ、俺の方こそ一緒にいて楽しませてもらってますよ。」


「そう? これからもよろしくね。」


ヤマトが中学時代、友達ができず寂しかったことを初めて知った。普段そんな話はしないから、ちょっと胸が締め付けられた。


---


家に着くと、ヤマトはまだ寝ぼけていて起きない。仕方なくおぶって部屋まで運び、布団に下ろすとようやく目が覚めた。


「ホラー映画見ないとだし、目冷ましに散歩いく?」


ヤマトがうんと頷き、夜の街を20分ほど歩いた。


「いや~、たまにはこういうのもいいね。」


「ですね! 僕も楽しいです!」


---


部屋に戻り、【ニンジャVSこっくりさん】を見始めた。ヤマトはすぐ隣に座り、シャンプーのいい匂いが漂う。怖いシーンでは悲鳴を上げ、手で目を覆いながら指の隙間から覗いていた。


「おい、ヤマト…これ怖いか?」


俺にはホラーというよりコメディにしか見えなかった。


見終わると眠気がきて、二人で一つの布団に入った。


「せんぱぁい、おやすみ…」


ヤマトが眠そうに言い、すぐに寝息を立て始めた。


---


夜中、ガサガサという物音で目が覚めた。体は動かさず周りを見ると、ヤマトが部屋の端で何かしている。暗闇に目が慣れ、驚いた。ヤマトが自慰をしていた。


声をかけるのはまずい気がして、寝たふりを続けた。微かに「先輩」と聞こえた気がしたが、気のせいだろ…。小さな声が続き、ティッシュで拭く音がした後、ヤマトが布団に戻ってきた。俺に腕を回し、抱きつくように寝始めた。


胸の鼓動が早まり、なかなか寝付けなかった。気づけば昼過ぎまで寝ていた。


---


昼食を一緒に食べ、解散。家に帰るとヤマトからメールが届いていた。


【めっちゃ楽しかった!! またやりましょ!】


「うん」と返信したが、二人で写真を撮らなかったのが少し心残りだった。


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