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『忘却の都市』 迫る影
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激痛に襲われ、霧崎はその場に倒れ込んだ。
その微かな音を聞きつけ、黒髪の少女が静かに近づいてくる。
「……誰かいるんですか?」
声は穏やかだったが、空間に緊張が走る。
夏希は即座に構えを取った。
見つかれば——少女には悪いが、一時的に眠ってもらうしかない。
足音が近づく。
このままでは、完全に発見される
——そう思った、その瞬間。
「怜奈っち〜! 早く〜!」
扉の奥から、再び声が響いた。
少女は一瞬立ち止まり、わずかに肩をすくめた。
「……やれやれ。」
軽くため息をつくと、足を止め、踵を返す。
「今日は視察の日でもないですし、誰かいるわけないですよね。 どうせまた、工藤先輩が適当に棚に突っ込んだファイルがずれただけでしょう。」
そう言って、元の位置に戻り、目的の資料を手にすると
——扉の向こうへと去っていった。
扉が静かに閉じる音が響く。
夏希と悠人は、ようやく安堵の息をつく。
だが——霧崎はまだ、頭を押さえたまま地面に伏しており、その顔色は、明らかに異常だった。
このまま進むべきか——それとも、一度戻るべきか。
夏希は、わずかに逡巡する。




