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『忘却の都市』 見えない疑念
話を聞き終え、霧崎と夏希はゆっくりと地上へ戻ってきた。
滞在時間は決して長くなかったはずなのに——時間の感覚が歪むほど、濃密なやり取りだった。
都市の夜風が、かすかに肌を撫でていく。
「……いったん、今日は帰ろう。」
短く意見を交わし、そう決めた。
足取りは重い。
夜の都市を静かに歩きながら、ふと胸に引っかかる疑問が浮かんだ。
この都市のほとんどの住民は元犯罪者——それは恐らく事実なのだろう。
では、都市警備隊の人間は?
当然、『自分と夏希』も。
小林副隊長は、そこには触れなかった。
だが、自分の記憶が曖昧であることを思い出した瞬間——背中にじっとりと嫌な汗が滲んだ。
そして、もう一つ。
あの男から聞かされた作戦には、もう一人の協力者が必要だ。
しかも——外部から来た“普通の人間”が。
霧崎の頭に思い浮かぶ人物は、たった一人しかいなかった。
——早川悠人。
あの陽気で、都市の闇とは一切関係のない男。
そんな彼を巻き込むことになるかもしれない—— そう思うと、霧崎はわずかに胸が重くなった。
それでも、静かに歩を進めていく。




