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『忘却の都市』 かすかな既視感
——城戸の予想に反して、夏希は善戦していた。
いや、むしろ——押していた。
次々と繰り出される素早い攻撃に、仮面の人物はじりじりと後退していく。
強化デバイスの加速と、正確な間合いを活かし——どちらが優勢かは目に見えて明らかだった。
——だが決めきれない。
優勢なはずなのに、決定打が届かない。
夏希の眉に、わずかな苛立ちの影が差した。
まだ、制限時間までには余裕がある。
けれど、この終わりの見えない攻防に、焦りも滲みはじめていた。
そして——。
攻防のさなか、ふと、感覚が反転する。
これは……知っている。
この間合い、この動き。体が“覚えている”。
まるで、訓練で何度も叩き込まれた動作。
新人だった頃——。
まだ都市警備隊の服が似合っていなかった頃。
——城戸隊長の隣で、黙って私の面倒を見てくれた人。
厳しかったけど、ひたすらに、まっすぐだった人。
かつての警備隊の副隊長——
「……小林、副隊長?」
その名が、思わず口から漏れた。
その名を口にした瞬間——
仮面の人物の動きが、ぴたりと止まった。




