『忘却の都市』 質問の本題
「そういえば、一つ質問を預かってる。」
そう切り出すと——
「えっ!」
悠人が勢いよく身を乗り出した。
「あの知り合いのカフェの店員に彼女いますか?とかそういう質問!?」
目を輝かせながら、期待に満ちた視線を向けてくる。
俺は微かに息を吐く。
「……残念ながら違う。」
悠人の肩が一瞬、落ちる。
それでもすぐに姿勢を戻し、続きを促す。
少し間を置いて、静かに言葉を継いだ。
「最近、カフェに毎日特定の時間に同じ集団が来てないか?」
悠人は一瞬、考え込む。
「んー……」
しばし沈黙。
そして——。
「あっ、そういえば!」
ふと思い出したように顔を上げた。
「確かに2~3日前から、5人ぐらいの男女の集団が奥の席で話してるな。」
俺は軽く頷く。
「どんな感じだ?」
「別に怪しい雰囲気じゃないよ。トラブルを起こしてる訳でもないし、何か問題があるわけじゃなさそうだけど……。」
「なるほど、ありがとう。伝えておくよ。」
短く返し、情報を整理する。
悠人は軽く伸びをしながら、笑う。
「まあ、とりあえず明日からもお互い頑張ろうぜ。」
「そうだな。」
悠人は玄関へと向かい、最後に振り返る。
「夏希さんに是非よろしく伝えておいてくれ!」
俺は悠人に軽く手を振った。
悠人も満足げに手を振り、そのまま去っていく。
「……やれやれ。」
玄関のドアが閉まる音を聞きながら、静かに息をついた。




