そう軽口を叩いて
音楽室に向かった百菜。
選択するだけで、浩斗と一緒に転送されるようだ。
便利な道具ねと思いながら百菜は目に前の部屋を見る。
音楽室というプレートのかかった部屋だが、外からも分かるくらい音が聞こえる。
この部屋は防音になっていないのかと思いながら百菜は、授業中のその部屋を覗く。
中では、ターゲットの一人、中村守がピアノを弾いており、皆が皆、うっとりと聞いている。
この相手もまた、他の人間を操って攻撃してくるのだろうか。
ありそうだなと百菜が思いながら眺めていると、うっとりとしている生徒の中で一人、ぼんやりと虚空を眺めている女子生徒が一人。
確か彼女は峰由香里。
百菜のライバルキャラに当たる彼女がここにいた。
退屈そうなその様子をしばらく見ていると、彼女が百菜に気付いて頬笑み手を振る。
授業中だろうと百菜がおもうが、そこでピアノの音が止まる。
そしてそれを弾いていた守がやってきて音楽室の入口までやってきて扉を開き、
「君達は何の用かな?」
「いえ、音が聞こえたので」
「そうなのかい? ここの防音も古いから劣化したのかな?」
「そうなのかもしれませんね」
「所で君達も教室で僕のピアノを聞いていくかい? 生演奏はじかに聞くに限るよ?
そう守にいわれて百菜は浩斗に顔を向ける。
浩斗はそれを聞いて、少し黙って考えてから、
「ぜひ、聞かせてもらいます」
「そうかそうか。では特別席にご案内しよう」
そう百菜達は守に言われたのだった。
特別席は、全員の前に二つ、折り畳み式のいすが置かれている物だった。
緊張する居心地の悪い場所だが、折角用意してくれたのに断るわけにもいかず、百菜達はそこに座る。
だがそれが既に、罠だった。
「なっ!」
守がピアノに触れて音がなると同時に、何処からともなく細い糸が飛んできて百菜と浩斗の体をその椅子に縛り付けてしまう。
細いその糸は銀色に光っており、ピアノ線だと百菜は気づく。
同時に自分達が誘いこまれたのだと百菜は気づき、守に、
「早くこの拘束を解きないさい!」
「……お断りだ。これから演奏会だというのに、客人はもう少し静かに聞くべきだと思わないかね?」
「知らないわよ! このっ、武器(魅了)は……」
「はは、無駄だよ。君達の力でこの拘束が解けると思わない事だ。さあ、宴の始まりだ! 我が音に魅了されるがよい!」
そう守は人が変わったように告げてピアノを弾きはじめる。
せれは戦闘時に流れる曲だったが、随分と器用なまねをと思いつつも百菜は頭がくらくらしてくる。
音楽そのものが百菜の中に入ってくるように感じて、段々とその音が心地よくなって……。
そこで百菜の肩が揺さぶられる。
浩斗が拘束を解いて百菜の肩を揺らしているようだ。
しかも浩斗の手にはハサミが握られていて、それでぱちぱちと百菜のピアノ線を切っている。
「早く、百菜。どうやらあいつの能力は、音で俺達を魅了するだけらしい」
「ぶ、物理的な攻撃ではないと……」
「そう、でも長時間聞くと俺達には不利だ」
「ええ、そうね……全部切れたみたいね」
そこで異変に気付いた守がピアノから顔を出して、
「何故お前達は平気なのだ!」
「さあ、主人公だからじゃない?」
百菜がそう軽口を叩いて機関銃を向けて引き金を引く。
椅子に座っている守はすぐには動けなかったのか、その攻撃をそのまま受け止めて……。
百菜の勝利が確定した。
音楽自体は危険な能力だが彼個人はそれほど強くはないらしい。
「上手く勝利は出来みたい。ありがとう浩斗」
「いえいえ、上手く行って良かったよ。早速このハサミが必要になるなんて思わなかった」
そう百菜と浩斗が話していると、そこで手を叩く音が聞こえたのだった。




