座敷わらし
昨日の夜は、宅呑みしていたのだが、いつの間にか眠ってたんだよな。いつベッドに入ったのかが全く覚えていない。
酒を呑みすぎた訳では無いよな。
缶ビール一本分だ。
酔うにしてはまだまだアルコールが足りない。なのに、覚えてないということはよっぽど疲れていたのかもしれない。
少女は頬を紅く染め、照れ始めた。
「そ、それは……聞いてしまうのですか??」
その時、俺は急いで支度して自首しようとした。
記憶にないけど、これは絶対に何かある!!!
今年の春は……罪を犯してしまったということか。
二十五歳にもなってなにやってんの、俺。
「えっと……警察署の番号は」
テーブルに置いてあったであろうスマホを取ろうと手を伸ばしたが、あるモノが気になってしまい動きを止めた。
「あっ、朝ごはんを作ったのです! 私料理は初めてだったのですが、上手く作れたんです」
「いや、ご飯って……これ食べれるのか」
ご飯と言われているモノは、黒よりの茶色で丸かったがとてもみずみずしかった。
おはぎにしては……違う気もする。なんなんだろうと思ってまじまじと見ていると、里桜が目を輝かせてテーブルに置いてあったご飯(?)を差し出した。
「どうぞ!」
どうぞって……、この料理はどこか懐かしいが絶対に食べてはいけないと直感がそう言っている。
だが、食べないと後々面倒くさそうなことになりそうだ。早く警察署に連絡して、自首もしないといけない。なによりもこの少女の親が捜索願を出しているだろう。
……会社もクビになる覚悟を決めないとな。
「……い、いただきます」
ベッドから降りると里桜からお皿を受け取り、テーブルに置く。
座布団に座り、胡座をかく。
テーブルの上に置かれている黒っぽいステンレス製の箸置きの箸を取り、一口食べる。
ジャリジャリしていて、砂っぽい。食べれば食べるほどなんの料理か分からなくなる。
俺が食べてるのを見た里桜が満面の笑みでとんでもないことを言ってきた。
「美味しいですか?? 朝早くから《《近くの公園の砂場で作って来た》》んです! その、どうやっても再現が出来なくて……どうやって作ってるのかもわからなくて、思いついたことをやってみたんです!」
俺はその言葉を聞いた時に思いっきりむせてしまった。
というか、見た目で気付けよ。俺……。
懐かしいと思ったら俺が小さい頃によく作って遊んでたやつだった。
「ゴホッゴホッ。み、水」
「大変です! こちらを」
そう言って、持ってきたコップの中は濁っている液体だった。俺は、普通にジュースかと思ってなんの疑いをせずに飲んでしまった。
気付くべきだったんだ。公園の砂場で作った……要するに泥団子を食べられるだろうと思っている少女の出した飲み物だ。
それが……水の中に泥を入れてあることを。
「うわっ!! ゴホッゴホッ」
「あれ? お気に召しませんでしたか?」
……恐るべし、発想力。
それに、再現ってなんの事だ?
◇◇◇
まだ口の中がジャリジャリする。
里桜は自分の失態に気付いて落ち込んでいる。
再現したかったのは無糖ヨーグルトだそうだ。名前も何から出来てるのか分からずにとりあえずでやってしまったそうだ。
里桜の大好物だそうで、作ってあげたかったんだそうだ。そもそもなんで大好物なのに何から出来てるのか知らなかったのか、食感や色も違うだろと疑問に思うが、そこは触れない事にする。
……そもそも無糖ヨーグルトは愛猫の里桜も大好物だったから、なんかこう……生きてる頃を思い出してしまう。
涙腺崩壊しそうになって、気持ちを切替えるために首を左右に振る。
今日は仕事じゃなくて良かった。仕事だったら完全に遅刻だ。
朝起きてからもう既に四時間は経過していた。
その間、俺は衝撃なことを聞かされた。
里桜という少女は座敷わらしという妖怪で不運が続いている俺を不憫に思い、居候させてくれと言ってきた。
嫁候補というからてっきり、手を出してしまったのかと思ってヒヤヒヤしてしまった。詳細を聞いて良かった。
もちろん断ったのだが、本人は住む気満々で俺の話を聞かずに自分の荷物を夜中に持ち出して来たという。
こうなってしまったら俺は断ることは出来ない。気乗りはしないが、仕方がない。ましてや少女を追い出すことは出来ない。
座敷わらしは嘘にしても家庭で何かあって連絡が出来ないのだろう。
後で児童養護施設にでも相談してみよう。
俺は罪を犯してないことには安堵するが、正直居候には反対だ。
……里桜は、俺の飼っていた猫に似ているから。名前も同じだし。
それに猫目で、時折耳を気にして触る仕草は愛猫と重ねてしまう。その仕草は愛猫がよくしていたから。
でも仕方がない。
こうして、俺と座敷わらしの里桜との同居生活が始まったのだった。
無糖ヨーグルトは少量なら、与えても良いらしいですね。
与える前にアレルギーチェックをしないといけないみたいですが。




