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16話 反逆の狼煙

第二章の始まりです。

10,000PV突破、ありがとうございます!

第二章も楽しんでいただけるよう、がんばっていきます。


今までのあらすじ

恩人を失い、仇討ちを誓いました

「反乱軍みんなでやれば怖くない」


 いくら重税で生活が苦しいからって、反乱を起こすのはやっぱり勇気がいる。

 だから最後の一押しをするため、まずうちの村が立ち上がる。

 代官屋敷の襲撃だ。



「門が開いたぞー!」

「一気に攻め落とせ!」

「倉を開けろ!食糧を確保しろ!!」


 準備期間は十分にあった。

 そして警備の兵は地元民ばかりで内通し放題。

 門は中から勝手に開くし屋敷の内部は全部わかってて、そもそも警備兵はほぼ全員がこちらの味方。

 負けるはずがない戦というやつだ。

 余裕余裕。


 徴収された食糧が保管されていた倉を開放し、大量の食糧が確保できた。

 これを見せれば飢えた村々は一気にこちらになびくだろう。

 いつの時代もまず飯なのだ。

 衣食足りて礼節を知る。

 服や飯がなければ、人は獣になってしまう。



 そのままあっという間に倉どころか代官の屋敷全体が制圧された。

 俺は代官の部屋に通され、代官の椅子に座って報告を聞く。

 質素な部屋だし椅子もそんな立派じゃない。

 やっぱ貧しいからかな?と思ってると、この部屋の本来の主、代官が連れてこられた。


「あなたがこの乱の首謀者ですか

 さっさと私の首をはねて都に送りつけると良いでしょう

 まあ、陛下は私ごときの首では眉一つ動かさないでしょうが」


 ずいぶん達観した男だ。

 体調が悪いのか顔色が悪く、頬がコケている。

 しかしその目だけには力が残っており、俺をじっと見つめてくる。

 正直目をそらしたいなと思っていると、ふっと自嘲気味に笑って目をつぶった。


「先王がお隠れになられてからもずっと国に奉仕し続けておりましたが、結局何も成し遂げることはできませんでした

 そんな私が反乱軍に最初に殺される代官となるのは、きっと罰なのでしょうね

 さあ、早くやりなさい

 ぐずぐずしてる時間などあるのですか?」


 言われるまでもなくそのとおりだ。

 俺たちに時間はない。

 まずこの成功を皮切りに各地で蜂起させ、一気に都へ攻め上らなければならない。

 時間は俺たちの味方ではないのだ。


 だからって俺に死刑の判断なんてさせないでくれ。

 確かに村長のために仇をうつ覚悟はできてるよ?

 でも、それとこれとは話が別だろう。

 こんな真面目に命令を聞いてだけっぽい人を殺すなんて、俺無理よ。

 部屋が貧しいのも頬コケてるのも絶対自分も我慢してたからだよ。

 こいつむしろいいやつじゃねーの。


 なんて考えてたら、横から助け舟が入ってきた。



「リク様、少しだけその男と話をさせいただけないでしょうか」


 ジェンガである。

 この作戦の指揮官として先頭に立って働いていたが、制圧が完了したということでこちらに来たらしい。

 そして作戦開始後、俺のことを先生ではなくリク様と呼び始めた。

 それにつられて周りも俺を様付けしてくるので、なんだかこそばゆい。

 様付けされるなんてガラじゃないのに。


「ジェンガ、あなたが反乱軍にいたのですね」


「ボード、まさかこんなふうな形で再会することになるとはな」


 お、なんか二人は知り合いっぽいぞ。

 ボードってのは代官の名前だ。ちゃんと事前資料読んだから知ってるぜ。


「かつて共に陛下に忠誠を誓い、国のために尽くしてきた我らが、ね…」


「せめてもの情けだ。お前の首は俺が刎ねてやろう」


「国一番の剣士手づからとは恐悦至極。お任せするよ」


 おいおい、俺を抜きに勝手に話を進めないでくれ。

 助け舟どころか泥舟じゃねーか。


 しかし今の会話でなんとなくわかった。

 つまりこいつらは先王時代に兵士だの官僚だのになって切磋琢磨した仲なわけだ。

 しかし先王が死んだ後に道は別れ、一方は野に下り一方は黙々と国にご奉仕し続けてたと。


 別れたときにきっと色々あったのだろう。

 詳しくはわからんが、とりあえずお互い意地を張って仲直りできない状態なことはわかる。

 まったく、めんどくさいやつらだ。

 喧嘩なんてしたことない俺が一肌脱いで仲直りさせてやろうじゃないか。


 …最初から友達も仲間もいなければ、喧嘩なんてできないんだよね。



「ジェンガ」


「はっ!」


 俺の呼びかけに、ジェンガが直立不動の構えで答える。

 死刑を命じられると思っているのか、表情が硬い。


「お前に2つ質問する。

 1つ目。この男は優秀か?」


「はい。私よりもずっと」


 ジェンガは即答する。


「2つ目の質問だ。お前はこの男を信頼してるか?」


「はい。絶対に裏切らない男です」


 間髪入れずまた即答する。

 「まさか、でもしかし」そんな顔をしてる。

 ふっふっふ。君の思っている通りだよジェンガ君。

 人の喜ぶことをするのは楽しいなあ。


「ボードと言ったな。お前の力、うちで使ってもらおう。

 後見人はジェンガ、お前に任せる

 お前の任務はこの男の力を十二分に活かすこと。そして裏切らせないこと

 できるな?」


「…っ!?

 わ、我が命にかけまして、やらせていただきます!」


 完璧だ。

 命令という形でジェンガに無理やり仲直りさせてしまう。

 ボードはもはや捕虜だから、うちらに逆らえる状況ではない。

 協力して仕事してればそのうち本当に仲直りするだろう。


 なにより、こんな田舎とはいえ代官だ。きっと優秀な官僚なのだろう。

 今後死刑やら何やらの重い話の処理は全てこいつにやってもらおう。

 それに日常の事務処理だって山のようにあるのだ。

 ガンガン働いてもらおうじゃないか。

 一石二鳥どころか三鳥ぐらいありそうである。



 自分の好判断に大満足した俺が部屋から出ようとすると、当のボードに呼び止められた。


「なぜ、なぜあなたはそんな簡単に私を信用するのですか!?」


 本気でわけがわからないという疑問

 いったいこいつは何を考えているかという疑問

 それらが入り混じった複雑な表情をしている。


 俺の答えは実に簡潔だ。


「ジェンガがやると言った。それで充分さ」


 ジェンガはやるときはやる男なのである。

 人を見る目も信用できる。

 俺に対する評価以外、こいつはできるやつなのだ。



 まだ呆然としているボードをよそに、元気な声が聞こえてきた。


「妾推参!

 あっという間に代官屋敷を占領するとは、さすがだなリクよ!

 実に幸先が良い!あっぱれである!」


 ミサゴである。

「姉上のご尽力あってこそです」とハイロも後ろからついてきている。


 それを見たボードがさらに驚いた。


「わ、若様!ハイロ殿下も!?

 なぜこのようなところにいらっしゃるのですか!?」


「ボードではないか!久しいな!

 しかしそのような愚問をするとは嘆かわしいぞ

 無論、妾たちも反乱軍の一員であるからに決まっておろう!!」


 元気いっぱい笑顔満開だ。

 大きな胸をゆらしながら大仰に答えている。

 見てるだけで癒やされる。相変わらず素晴らしいやつだ。

 しかしボードはさらに混乱している。


「で、では、この反乱、いえ、ぎ、義挙の指導者は、若様であらせられるのでしょうか?」


「?お前は何を言っているのだ?

 反乱軍の指導者は、そこにいるリクに決まっておろう

 我ら姉弟、地獄のそこまでリクについていくと誓っておる!」


「そのとおりでございます姉上!」


 衝撃の事実を聞くボード。

 ちなみに俺も初めて聞いた話である。

 驚きを通り越して魂の抜けたような顔をした後、俺へと向き直って平伏した。


「不肖このボード、リク様のために働かせていただきます…

 我が身命、どうぞご自由にお使いください…」


 「存分に働け」と偉そうなことを言い残し、俺は今度こそ部屋を出る。



 とりあえず第一目標である代官屋敷の制圧は完了した。

 これが狼煙となり、一気に反乱は広まるだろう。


 腰にさした刀が重く、バランスがとりづらい。

 まだ歩くときにふらふらしてしまう。

 これに慣れる頃には反乱が終わっているのだろうか。


 刀の柄を握りしめ、俺は再度誓う。

 村長、絶対に仇を討つからね。

新しい仲間が増えました。

ジェンガが戦闘で飛び回るので、事務処理をしっかりやってくれる文官はありがたいですね。

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