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正妃の偽り  作者: 雨生
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「薔薇の騎士の物語」の真実・その2 〜王子は決意する〜

「まずは作戦だ。今までのように闇雲に突っ込んでいてもこの人数では太刀打ちが出来ない」

 落ち着きを取り戻したトシェンは、そう皆に声をかけた。

 こちらの手勢はわずかに100人程度。

 ここまで、なんとか戦って来られたのは、向こうがこちらのことを掴む前に動いてきたスピードが勝負だった。


「王立軍の本隊はいつこちらへ?」

 王立軍の本隊は、エルンストルの流した偽の情報に泳がされて、南のケースルへと向かっていたのだ。しかし、その情報もあながち嘘ばかりでは無く、隣国グラードはエルンストルと共謀して、反乱と同じタイミングで国境を侵し、進軍してきていたのだった。

「今は本隊をこちらに呼ぶことは得策では無い」

 そう、トシェンは告げる。


 考えろ、考えるんだ。この国を救わなければならない。今は、嘆き悲しんでいる時では無い。時間が経てば経つほど、状況はこちらに不利になりかねない。トシェンは頭を振ると、悲しみに傾きそうになる気持ちを立て直した。泣くのは後だ。


 場所を玉座の間から、ほとんど使われておらず、人目に付きにくい騎士の控えの間に移し、作戦会議が開かれていた。

 この人数で勝ちに行くなら、奇襲しかない。そう、トシェンが考えをまとめようとしていた時、朗報がもたらされる。

 それは、念のためにと玉座の間に残してきた見張りが捕まえてきた、二人の騎士の証言だった。


 その騎士達は、エヴァンスにとどめを刺してくるようにと、エルンストルに言われて来たのだ。しかも、すでに玉座の間までトシェン達の進入を許し、制圧されていることすら、エルンストルは把握していないようだったのだ。

 すでに彼等は勝ち戦に浮かれ、酒宴を開いているのに、クジで負けて嫌な役割をさせられると、ぼやきながら二人の騎士が現れたところを捕らえたというのだ。

「なんともお粗末だな・・・」

 騎士の一人、ルイレイが声を潜めて言う。

「エルンストル様は、お楽しみに夢中だからなと、さっきお前達が話していたな」

 捕らえてきた騎士の一人がそう聞くと、捕らえられた男が笑った。

「ああ、意中の姫を手に入れて、今頃はお楽しみの真っ最中だろうよ!」

「!!」

「貴様っ!」

 青ざめたクリアージュが、その騎士を殴った。

「やめろ!クリアージュ、控えろ!」

 ルイレイがクリアージュを取り押さえる。

「しかしながら・・・それで敵が油断しているというのなら、手はあります」

 そう、ルイレイに言われて、トシェンは頷いた。

 

 もう、一刻の猶予も無い。

 父上を、そしてダリューシェン、君を救わなければ。自分の爪で掌を傷つけてしまうくらい、堅く拳を握って、トシェンは心を落ち着かせる。今、この時、ダリューシェンがどんな酷い目にあっているのかと考えると、目が眩みそうな程の怒りに飲み込まれそうになる。だが、激高していては、冷静な作戦など立てられない。今は、気持ちを押し殺して、冷静に考えろ!そう、トシェンは己を叱咤した。


「油断していると言うのなら、今しか無い。しかし、多勢に無勢だ。しっかり作戦を立てて、役割分担をしておかないと・・・」

 そう言うと、城の見取り図を広げ、彼等が使っている離れの館(避暑に訪れる、他国の王族をもてなすために建てられた、迎賓館)に攻め入るために作戦を伝えていくのだった。


 作戦の決行は夜明け前になった。皆が酔いつぶれたり眠ったりしていれば、こちらの手勢が少なくても、勝ち目はあると踏んだのだ。

 数時間後の作戦の決行の為に、休息を取るようにと皆に言い置いて、トシェンは作戦会議を開いていた控え室の隣室を尋ねた。

 そこには寝台に横たわるエヴァンスの姿があった。

 血に染まった衣服は改められて、血に汚れていた顔も綺麗に拭われており、本当に、静かに眠っているかのようだった。


「兄上・・・間に合わなくてすみませんでした・・・」

 あと一日早く、ここにたどり着けていたならば、救うことができたのだろうかと、今更、考えても仕方がないことを何度も考えてしまう。そんなことは無理だったと、トシェンも分かってはいるのだ。5日でここにたどり着けたことだけでも、奇跡的なのだ。 

 まだ、夢だったらいいのにと、心のどこかで思っている自分が居る。

 だが、これは現実だ。

 数時間後には、戦いに挑まなければならない。

 王座を懸けた戦いになるだろう。王座・・・そんな物、自分は望んではいないのに、だが、しかし、反逆者エルンストルに渡すわけにはいかない。

「絶対に、負けられないっ・・・」

 トシェンは零れそうになる涙を堪え、切れるほど強く、唇を噛みしめた。

「やはり、ここでしたか・・・」

 そっとトシェンの後ろから声をかけてきたのは、クリアージュだった。

「先ほどは・・・取り乱してしまって、すみませんでした」

 そう、クリアージュは頭を下げる。

「穏やかなお顔で、まるで眠っていらっしゃるようですね」

 クリアージュは左胸に拳を握った右手を当てた、騎士の敬礼をエヴァンスに捧げる。

「後のこと、トシェン様に託されて、安心して逝かれたのでしょうね」

 トシェンはグッと拳を握りしめると、エヴァンスに目礼し、背を向けた。


「クリアージュ」

「はい」

「勝ちに行くぞ!父上も姉上も、必ず無事に救い出してみせる!」

「はいっ!!」


 連投です(笑)


 ああ、時間が欲しい!!一日が30時間くらいあればなぁ・・・なんて思っていまいます。



 お気に入り登録が1500件を越え、お気に入りユーザー登録も50件!何だか自分のことでは無いみたいで、驚いています。

 本当に、応援ありがとうございます。


 まだまだ拙い書き手の私ですが、頑張って完結させたいと思いますので、ここから先も読んでやって下さいませ。


 雨生あもう

 

 

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