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開幕


血がほとばしる。

まっすぐに首を掻き切れば、雇い主は瞬時に絶命した。


記憶を無くし何もわからぬ状態でいたところを、彼に拾われた。

それから10年もの間、世話になったことは事実だ。


ただ、最近の彼の行動は、許しがたかった。殺した理由は、それだけだ。


そのまま歩を進め、地下室の扉を開ける。


「……」


中にいる、たくさんの子どもの目がこちらに向いた。

そのまま体を横にずらし、どうぞ、と手を外へ。そうして促す。


一人が立ち上がり、扉から外に出る。

それに勇気づけられた、二人目、三人目……そうして何人もが、その後ろに続いた。


最後の一人。彼女は――いや、少女は、扉を出るそのとき、少し足を止めてこちらを見る。


「……ありがと」


黙ったまま、その背中を見送る。




全ての足音が遠ざかってから、命を失った男の横に片膝をつき、片手でその瞼を閉じる。

礼儀というものは、この10年で身に染みて学んだ。


空を見上げれば、月と、ひとつ大きな星が輝いていた。



しばらくして、近くで悲鳴が聞こえる。


予想通りの展開にため息をつく。

このあとの処理をどうすべきか、考えなくてはならなかった。



◇


◇


◇





(26/10/31 一部表現修正)

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