2/23
開幕
血がほとばしる。
まっすぐに首を掻き切れば、雇い主は瞬時に絶命した。
記憶を無くし何もわからぬ状態でいたところを、彼に拾われた。
それから10年もの間、世話になったことは事実だ。
ただ、最近の彼の行動は、許しがたかった。殺した理由は、それだけだ。
そのまま歩を進め、地下室の扉を開ける。
「……」
中にいる、たくさんの子どもの目がこちらに向いた。
そのまま体を横にずらし、どうぞ、と手を外へ。そうして促す。
一人が立ち上がり、扉から外に出る。
それに勇気づけられた、二人目、三人目……そうして何人もが、その後ろに続いた。
最後の一人。彼女は――いや、少女は、扉を出るそのとき、少し足を止めてこちらを見る。
「……ありがと」
黙ったまま、その背中を見送る。
全ての足音が遠ざかってから、命を失った男の横に片膝をつき、片手でその瞼を閉じる。
礼儀というものは、この10年で身に染みて学んだ。
空を見上げれば、月と、ひとつ大きな星が輝いていた。
しばらくして、近くで悲鳴が聞こえる。
予想通りの展開にため息をつく。
このあとの処理をどうすべきか、考えなくてはならなかった。
◇
◇
◇
(26/10/31 一部表現修正)




