ぼんやり令嬢は眼帯従者のお家でごはんをたべるそうです
「全く、ごめんなフルル大丈夫か?」
人見知りな私を気遣って、ウィンターさんとの間に入りながら、もう一度ニーチェさんは私を眺めた後、普段どうりに頭を撫でてくれた。
「あぁ、大丈夫です」
「……よく似合っているよ、自信もっていい」
まだ少し、照れたような雰囲気は残るものの、ようやくその言葉で心の底から安心した。
「それを何でさっさと言わないのよ」
「フルルがあまりにも似合いすぎてて、びっくりしただけだよ」
「はぇ……」
「おいおい、まだドレスだけだろ?ヘアセットとか化粧したら、もっと綺麗になるのに大丈夫か?」
ノージュさんとウィンターさんに、やいのやいの言われて子供っぽく反論するニーチェさんをみて、あぁ、流石にハイスペックと言えど、やっぱり親の前では誰しも子供なんだなぁ、とほっこりした気分になったと同時に、ニーチェさんが、ウィンターさんにまた反論した。
「うるさい、それにフルルは今でも十分可愛いだろ。」
身内以外、主に伯父様以外に言われたことのない、あまりにも堂々と、この世の真理のように誉め言葉を言うニーチェさんに驚き、私はうつむくことしかできなかった。
そんな様子を見て、それまでまくし立てていたウィンターさんたちは、冷やかすようにそのこうけいを見ていたが、ついにニーチェさんが口を開いた。
「何で黙るんだよ」
「いや、珍しいと思っただけよ」
「そんなことよりノージュ」
「いま そんなことよりっていった」
「まぁいいじゃない」
「よくない」
ここの家族、仲が良すぎて可愛いなぁと眺めていたら、ウィンターさんがノージュさんに窓をさししめした。
「外、真っ暗だけど、飯の準備してないだろ?」
「あ……」
「まぁ、ドレスの話を聞いた時点で察したけどな」
「仕方ないじゃない、セレスのドレスよ?」
「まぁ、それは飯食いながら聞くよ」
さらりとノージュさんをかわしながら、ウィンターさんはこちらに向き直った。
「さて、ベルバニア伯爵令嬢……お嬢ちゃんでいいか?」
「あ、大丈夫です」
「お嬢ちゃん、ピザ食べれるか?」
「食べれますけど……」
「ならよかった、ニーチェがお嬢ちゃんの下宿先でごちそうになったって聞いたから、どうせならって思ってな。」
ウィンターさんが指差したテーブルには、有名なピザ屋さんの箱が3.4個置かれていた。
よく見たらピザだけでなく、サイドメニューも置かれていて、テーブルの上はいっぱいになっていた。
「なぁ、今日平日だよな」
「まぁいいだろたまには」
「えっと……家に連絡しますね。」
ニーチェさんとウィンターさんの会話をきいて、いけないいけないまたぼんやりしてた、と自覚したものの、ウィンターさんは気にした素振りもなく答えた。
「あ、大丈夫、さっきまでヴォルフラムさんと仕事してたから、伝えといた」
「はぇ……」
あまりの手際のよさに放心していると、ノージュさんに肩をとんとんと叩かれた。
「そういうことだから着替えましょうか」
「ぁ……はい」
ノージュさんたちに、促されてドレスから制服に着替えようとしたら、ノージュさんに服を手渡された。
「制服、汚れたらいけないからこれ」
「ありがとうございます。」
そう手渡されたのは、ベージュとアイボリーのストライプが可愛らしいワンピース。
着替え終わると、ノージュさんは小さく頷いた。
「……嫌じゃなければそのままもらってちょうだい」
「えっ?あのぉ……」
断ろうとするも、ノージュさんの鋭い視線を向けられて、頷くことしかできなかった。
「また可愛いの着てるなぁ」
「秋ごろに出す試作よ。もうちょっと派手でもいいかなと思ってて。」
感心するニーチェさんに、さらりとかえすノージュさんを見て、こんな可愛い服を生み出せる才能っていうか、努力はすごいなぁと感心していると、ニーチェさんにふんわりとエプロンをかけられた。
「フルルは、こういう可愛らしいのが似合うなぁ」
「ふぉっ……」
まるで、流れるようにつけられたが、ふと、あれ、エプロン貸してくれるなら、別に私着替えなくてもよかったのでは?という考えが脳裏をよぎった。
が、ここで断る方が逆にというか、普通に失礼だよなと思い、喉奥に押し込めた。
「さて食べるか。」
ウィンターさんがそう促し、なんとなく普段関わっているからか、安心と信頼のニーチェさんの隣に座るも、ピザやサラダなどが置かれてる皿から、少し離れていたせいか、ニーチェさんは声をかけてくれた。
「嫌いなものとかないか?」
「すごい辛くなければ大丈夫です。」
「いや、流石にそんな万人受けしないやつは買わないよ。」
「ちなみに一番好きなのは何なんだ?」
ニーチェさんの不意の質問に、なんの意図もなく前に、私が学院を休んでいた期間、気落ちしてた私のために、リノンが持ち帰ってくれたピザのことを思い出した。
「一番好きなのは、チョコとマシュマロのピザです」
「今回は買ってないんだよ、ごめんな」
ウィンターさんが軽く謝るが、いやいやいや、こちらこそすいませんという気持ちを込めて、頭をぶんぶん横に振った。
「あっいやそんなつもりは、チーズ大好きなんで大丈夫です。」
「あぁ、いいっていいって」
そんな間を、気遣ってかノージュさんがサラダを手渡してくれた。
「サラダ……食べる?」
「ありがとうございます。」
受け取るとき、おもわずありがたさのせいか頭を腕よりさげて受け取ると、ニーチェさんは苦笑していた。
「その姿勢は、王とか女神から聖剣もらう図なんだよなぁ。」
「まぁ、ノージュはフロルウィッチの女王だもんな。」
「……静かにしなさい。」
「ひぇ……」
そんなやり取りをはさみ、突発的に始まったピザパーティーは、和気あいあいと進んでいった。
「フルル、食べて……るな」
「ふぁい」
「お嬢ちゃん、一口が小さいからなぁ」
「フルル、急がなくていいよ。」
…………と、ものすごく優しくお世話してくれるニーチェさんをみて、ノージュさんは、何かに納得したように頷いていたけれど、一体何に納得しているのかは分からなかったが、ともかく、ニーチェさんのおかげで、アウェーな雰囲気にはならず、終始楽しい食事の時間になった。
「それにしても、フルルはピザも食べるのが上手だな」
「……ありがとうございます」
にしても、ニーチェさんは息をするように褒めてくれるから、少しだけ前より卑屈にならなくなってきたなぁ、でもあまり図に乗らないようにしなきゃな、と気を引き締めているとニーチェさんが頭を撫でてきた。
「じゃあ、送ってくるから」
「気をつけてな」
「今日は本当にありがとうございました」
「……いつでも来ていいからね」
優しく声をかけてくれる二人に深く頭を下げ、もう一度心から頭をさげた。
「ありがとうございます」
「おう、またおいで」
「はい」
……あれ、今思ったけど、ウィンターさんってここに住んでるんだっけ?と、おおよそ第三者がつっこむべき問題ではないよなぁ、と思いながら帰路に就いたのであった。
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