ぼんやり令嬢と眼帯従者は公爵家で晩餐をとるようです
今日から職場に復帰しました。
やっぱり労働は嫌いです月収5000兆円ほしいです・・・・。
そうしてシャロが色々と事情を話してくれた結果。
ヨハンナ様が、私たちと、話をするついでに夕食をごちそうしたいらしく、仕事終わりにシャロと、シャロのお兄様であるヴィクトル様と、私とニーチェさんという、なかなかに気まずすぎるメンバーで馬車に乗り、思わず、今から私は徒歩で行きますね、と言いたくなった。
それを見抜いたシャロが笑顔で詰め寄られ、大人しく座っているあいだに、相変わらず立派なロゼットロア公爵家についてしまった。
流石、国でもトップクラスに見事な庭には、ロゼットロア初代当主が愛したといわれる、見事な薔薇がたくさん咲き誇っていた。
「流石、ロゼットロア公爵家見事な薔薇だな」
「ありがとうございます。庭師が喜びますわ。」
ニーチェさんとシャロが社交辞令を交わしながら、和やかに会話している隣で、私は、竜の形をした見事なトピアリーに目を奪われていた。
それに気づいたヴィクトル様が多分親切心から仏頂面でつぶやくように教えてくれた。
「あれは狩猟祭用にうちの庭師が作ったトピアリーだ。」
「そっそうなんですね……」
ヴィクトル様、もとい小公爵様は、レヴィエ様みたいに裏表や気性が激しいわけじゃないが、あまりにも不愛想で、口数が少ないからちょっと怖くて苦手なんだよなぁ。
そんな思いから、私が固まっているとシャロはヴィクトル様の服の裾を引っ張った。
「ちょっと、私の友人を怖がらせないでもらっていいですかお兄様」
「別に怖がらせてなんて……」
「全く、自分の顔の怖さを自覚してくれません?」
「あぁ、大丈夫、大丈夫だから……ね?シャロ」
全くもう、と可愛らしくむくれるシャロを眺めつつ、ホールに案内されるとヨハンナ様に出迎えられた。
「久しぶりねぇ、ベルバニア伯爵令嬢」
「お久しぶりです、ロゼットロア公爵夫人」
夫人は私を見て笑顔になった後、ニーチェさんの方を見る、とニーチェさんは恭しく頭を下げた。
「ニィリエ・ハイルガーデンです。」
「知っているわ、王女が幼いころから仕えている信頼の厚い部下だと有名よ。」
そうほほ笑む夫人は、手をゆっくり組んだ、これは本当に認めている証拠で、それを見て私はほっと胸を撫でおろした。
「フルストゥル嬢、話は娘から聞いているわ、いろいろ大変だったわね」
「お気遣いありがとうございます。」
「娘から聞いてるだろうけれど、フィリア様は、貴女をどうにかして、ブランデンブルグにつなぎ留めたい様子だったわ」
「そうなんですか……」
そんなにお母様と、本当の姉妹になりたいかね、ものすごい執念だなぁ、と、もはや呆れを超えて尊敬の念さえ抱いてしまうが、それを遮るように、今度はヴィクトル様は続けた。
「令嬢が、王女付きに見習いとはいえなったことと、国賓の方々の覚えもいいときいたからか、どうにかして引き込みたい様子だったな」
「私に興味なんてないと思ってたのに……」
以前、婚約内容の確認に行った時の言葉を思い出した。
社交が苦手ならやらなくていい、家のことも使用人に任せればいいし、もしレヴィエ様が気に入らないのなら、愛人を作ってもいいとかなんとか色々言ってきたことを思い返す。
あれはちょっとへこんだなぁ、いわば努力全否定みたいなものだったしなぁ、と思い返してちょっとへこんでいると、ヴィクトル様が怪訝な顔をしてきた。
「何か、言われたのか?」
「あぁ、以前にちょっとははは……」
そうごまかそうとするも、色はシャロと同じピンクなのに、鋭いヴィクトル様の眼力に圧され、以前言われたことをそっくりそのままお伝えすると、公爵家だけでなくニーチェさんも唖然としていた。
「まぁ、結局私はお母様と姉妹になるだけの踏み台というか、なんというか」
なんか、殺伐とした空気を和ませるためにそういうも、空気は和むことはなかった。
「確かにティルディア様はお美しいし、そのセンスの良さは、私も見習わなければならないところではあるけれど……流石にそれは」
ヨハンナ様はそう肩を落とすと、今度はシャロが憤慨しつつ答えた。
「そもそも、それだけでいいなら、フルルは領地でのんびりしててもよかったはずよ、けれどメンツが欲しいから学院に入学させて、淑女教育もみっちりやらせておいて、最後は何もしなくていいって馬鹿にしすぎ」
「あぁ……そうだな」
ヴィクトル様はそれに同調する、と少しだけ圧を弱めて私に向き合った。
「他には何か理不尽なことは言われなかったか?」
「いえいえ、フィリア様には全然……」
レヴィエ様が強烈すぎて忘れているだけかもしれないが、覚えていないということは、もう時効でいいかなぁ、とぼんやり思っていると、それを見抜いたシャロがちくりと呟いた。
「お兄様、フルルのこういうのは信用しないほうがいいですよ。フルルはそこのところ麻痺してるんで」
「それは同意する」
ヴィクトル様の頷きに、ニーチェさんは深く深く頷いていた。
私、そんな麻痺してるかなと悶々とするも、それはヨハンナ様はやんわりその空気をかえた。
「さぁとりあえず夕食にしましょうか、ニィリエさん、お嫌いなものとかあったら遠慮なくいってくださいね」
「お気遣いありがとうございます。」
ヨハンナ様がそういうと、流石公爵家、見事すぎるディナーがそこには並び、一つ一つ丁寧に、だって公爵家のご飯なんてなかなか食べられないし、と味覚を全開で食べていると、ヨハンナ様はにこにこと笑顔で話す。
「とりあえず、フィリア様のことは任せてくれていいわ、彼女のなりふり構わないさまは、少し問題になっていたしね。」
「ありがとうございます」
「それに……彼の方が、フルストゥル嬢を大事にしてくれそうだもの、私は賛成だし応援するわ」
「自分もそう思います」
ヨハンナ様の意見に、意外にもヴィクトル様が同意されるのを、ぼんやり眺めていると知ってか知らずかシャロがそれに続いた。
「あのバカに比べたら誰だってマシだけどね」
「ははは……」
否定も肯定もできず曖昧に笑っていると、ヨハンナ様は上機嫌に笑って、今度のパーティの内容やどういった服装で来たらいいかを教えてくれたが、最後の最後にとんでもないことを言い始めた。
「全く、こうなるんだったら、無理矢理にでもヴィクトルの婚約者にしちゃいたかったわ」
「お母様、フルストゥル嬢が困ってますよ」
「だって 家柄は保証されてるし、淑女教育は完璧で、王女に能力を認められていてだなんて、ニーチェさんほど優秀な方で、信頼が厚い方でなければ、ちょっと頑張りたくなってしまうでしょう?」
「買い被りすぎですよ、それにヴィクトル様にはもっとふさわしい方がいらっしゃるかと」
私がそう答えるとシャロは深く深くため息を吐いた。
「本当、夜会でお兄様に群がるハイエナたちに、見せてやりたいくらい慎ましいわね」
「ハイエナって……」
大げさな、と続けようとしたが、げんなりしてるヴィクトル様をみると、相当らしくその苦労がうかがえた。
「ふふ、相変わらずどこかぼんやりしているところは、チェーザレ様に似たのかしらね」
「よくそれでお母様に怒られます。」
お母様に怒られたことを思い出し、すこしへこんでいると、ニーチェさんは私の手を優しくさすってくれ、ヨハンナ様に人のいい笑顔で切り出した。
「でも、フルストゥル嬢は王宮内での仕事はとても丁寧で、こちらはとても助かっているんですよ。それに他国の歴史にも明るいので、とても宮廷の使用人たちもかなり助けられてます。」
「あらあら詳しく教えてくれるかしら」
「そうですね、たとえば……」
そうして、ニーチェさんの褒め殺しが始まり、私は止めようとしたが、ヨハンナ様はニーチェさんのことが大変気に入ったらしく、話を聞き続け、果てには経済や、これからの領地運営のことなどを語りだした。
なんならヴィクトル様とシャロも混じってそれはそれは盛り上がった。
「久しぶりに経済の話や流通の話ができて楽しかったわ、本当頭の回転が速いのね」
「流石としか言いようがないな」
「やっぱり、いろんな立場の人と関わっていると、いろんな発想があるわよね」
……と、ロゼットロア公爵家の方々は、とてもニーチェさんを気に入ったようで、安心したがそのあと
「それに、本当にフルストゥル嬢のことをよく見てるわ、このまま本当に婚約したら?」
「あぁ、レヴィエ様よりよっぽどいい」
「結婚式するなら、うちの庭からすきなだけ薔薇とってっていいわよ?」
そういわれてたじろいでしまうがそんな私の耳元でニーチェさんは
「これで、ロゼットロアは完全に味方になったな」
と小さくつぶやいて、もうこの人、本当にすごいなぁと心の中で崇め奉る勢いだった。
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