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六話《血の雨の降る森》

「おーい。仙崎ー。」

後ろの方から俺を呼ぶ声が聞こえた。

俺は仕方なく振り返った。

「なんだよ。瀬戸───」

────そこにいたのは明らかに瀬戸原綴(せとはらつづる)そのものだったのだが......。

血まみれ!?

「いやはや、僕の真上を天使が通ったもんでねぇ。」

「な、なんだよ......。お前が人殺しでもしたのかと思ったぜ。」

彼の身体は血まみれだった。

「なるほど。どうりで通行人全員が引いていた訳か。」

「そこは考慮しろよ!てか着替えてから来いよ!」

「面倒臭いからね。」

なんて馬鹿だ。

瀬戸原はクラスメイトで、俺の数少ない友達だ。見た目は頭良さそうだが、実際そうでもない。その割に学級委員長やってる上、風紀委員会なんかも務めている。

「とりあえず学校着いたらシャワーでも浴びてこいよ。」

この学校には様々な人が住んでいる。その為シャワーやら何やらが完備されている。更に学生と教師にはその全てを自由に利用できるパスポートが配られるのだ。

「B練か......。遠いな。」

「先生には伝えとくからよ。」

「仕方ないか。」

「おっと、奇偶じゃないか!」

更に後ろの方から別の声が聞こえる。

「やあ、深田じゃないか。」

「うっす。瀬戸原に仙崎も!」

「朝から騒がしい......。」

「またまたー。そんな事言っちゃってー。ホントは俺に会えて嬉しんだろ。」

こいつは深田玲音(ふかだれおん)で同じくクラスメイトだ。チャラい人。ただ悪い奴じゃない。そんな奴だ。

「と言うかお前はこれを見ても驚かないのかよ。」

と言って俺は血まみれの瀬戸原を指さす。

「おっ、今日は誰殺したの?」

「おう。ちょっと近所のオバサンをな。」

「待て待てー!何お前オバサン殺しちゃってんの!?てか周りからしたら冗談に聞こえねーよ!」

俺がわざと大声でツッコミを入れる。ただ道を歩いてるだけなのに俺らだけ孤立しているように感じるのは気のせいだと思いたい。

「ならまさかお前、天使に一人で立ち向かい、激戦の末に勝利を収めたか!」

「フッ。バレてしまったか。そうさ、俺こそがあの伝説の勇者だったのさ!」

「おいおいおいおい。飛躍し過ぎだろー!」

伝説の勇者ってなんだよ。て言うか今朝の話だし。

「んじゃ、そろそろホントの話聞いていい?」

「あ、うん。いや、僕の上空を落ちていく天使が通ってさ、それだけなら僕に当たらずに済んで良かったんだけど、更にその天使から血の雨が降りかかるっていうね。」

「うわっ、血の雨とかマジかよ。」

「まあ、落ちた天使が建物に当たらなかっただけましさ。」

「レーザーとはいえども完全な灰にはできないからな。」

「でもあれだ。今回は一切の攻撃も受けてないし、死者数0だとよ。」

「人類進歩してんなー。」

この頃の進歩は本当に素晴らしいものである。戦争は発明の母とは言うが、全くその通りだと思う。

「おっと、では私はB練にシャワーを浴びに行くので......。」

いつの間にか学校に着いていたようだ。

「そうか、んじゃまた後でよ!」

「おう、行ってらー。」

そういうわけで瀬戸原は小さい路地の中に入っていった。

B練はA練の裏のビルだ。他の三練が渡り廊下やら何やらで繋がっているのに対しB練だけは離れている。

俺らの教室はD練だ。

「そう言えば今日って───」

「────おーい!戦友ー!」

ここらでその名前で呼ぶ人は一人しかいない。

「......福澤先輩。その名前で呼ばないでください。」

「あーうん。考えとく。それより!さっきB練の方に行った子なんだけどさ!」

なんとも酷い話の流し方か。

「瀬戸原?ああ、あの血は天使のですから。誤解しないでくださいよ。」

俺は念を押しておく。

「ビンゴ!で、彼どこいったか知ってる?」

福澤先輩は悪い人ではない。別に瀬戸原に変な事をするわけではなさそうだ。

「B練にシャワー浴びに行きましたよ。」

「おおっ!それは急がねば!じゃあ僕はこれで!」

そう言って先輩は瀬戸原の後を追っていった。

「ありゃ誰だい?」

深田が呆然とした様子で俺に聞いてきた。

「前の高校の先輩。今は大学生。」

「あと、戦友ってのは?」

やっぱりそこつっこむよね......。

「部活でのあだ名。仙崎裕也。略して戦友ってね。」

「なるほどー。んじゃ俺もそう呼ばせてもらうわ。」

「は?」

「な、戦友!」

これはなんか広まりそうだ。俺はそんな予感がした。



ブーブーブー

机の上でスマホのバイブレーションが鳴る。

私はベットから起き上がるとそれを取った。

「もしもし。りーちゃん?」

「ん......涼葉先輩?」

「正解ー!......今大丈夫?」

「......はい。」

「今学校?」

「........。」

「そんなものだろうと思った。まあ、今ならお互い時間はあるようだし少し話そうか。」

「......はい。」



キーンコーンカーンコーン

「起立ー、気を付けー、礼ー。」

ホームルームが終わり、それぞれ一時間目の授業の準備をする。

次は世界史だ。つまり第十三教室まで行かなければならない。

俺はバックから教科書を取り出して立ち上がった。

「仙崎ーーー。」

いきなり肩を掴まれ振り返ると、そこには白衣を着た瀬戸原がいた。

「何かあったか?」

「......授業何?」

「え?」

「......一時間目....授業何?」

俺の質問には無視のようである。

「あー、えーっと......世界史!」

「......せんきゅ。」

そう言って彼は授業の準備をしだした。

福澤先輩、本当になんにもしてないですよね?

俺は本気で疑ってみる。

「おっ、瀬戸原いつの間に戻ってたんか。」

「なんか凄い疲れてるんだけど。」

「あー、確かに。」

そんな会話をしているうちに瀬戸原は準備を終えたようだ。

「ああ、すまん。待たせたな。」

「うっす。じゃあ行くか。」

「瀬戸原。なんか疲れているようだけど先輩に何かされた?」

「先輩?ああ、あの人のことか。」

「部活の先輩だったんだってさ。」

深田が説明を入れる。

「いやさ、いきなり服を脱がされただけならまだ良かったんだよ。」

「あっ......察し。」

「いや、それは誤解だ。」

「というと?」

「大学生が沢山集まって来て、僕の身体をウェットティッシュで拭きだしてさ。」

「んー。ちょっと話についていけないのだが.....。」

「天使の血液か.....。」

「そういう事。」

「えっ?」

「つまり、今天使の血液を使った薬の研究が盛んなのはお前も知ってるだろう?」

「不死の薬ってやつか。」

「そう。まだ人体での実験は行われてないけど、何度も実験するためにかなり大量の血液が必要なんだ。でもって最近天使が襲って来ることが少なかっただろ?それで天使の血液は貴重になってるんだよ。」

今頃先輩達は瀬戸原の服から血液を抜き取る事に一生懸命だろう。

「結構詳しいんだな。」

「先生の研究室と同じなんでね。」

先生の分野、つまり天使の羽の分野と血液は分野は共同の研究室を利用している。そんな訳で先生の方の仕事が暇になると福澤先輩の手伝いをしたりもしている。

「ところでさ、いい加減言わせてもらいたいんだけどさ、なんで教授じゃないの?」

いきなり痛いところを突かれる。

「えーっと......まあ、高校生だし?......いや、特に意味はないんだけどね。」

事実先生の授業も受けているわけだし、あくまで千春先生は俺の先生なのだ。

例え俺が助手になろうと先生は先生なのだ────という説明を上手くできそうになかったので、俺は適当に流す事にした。

「まあいいよなー。楽して稼げるならさー。」

「全くだな。」

「意外と結構ハードだぜ?」

「ハードでも安定した収入が入るならいいじゃないか。」

「ホントそれな。」

因みにこの二人は同じスーパーでバイトをしている。商品がなかなか入荷されないらしく、収入が不安定でかなり大変らしい。

「そういえば戦友、昨日はどうだったの?」

「戦友?」

「仙崎祐也。略して戦友!」

「戦友......。」

早速広めている。

「で戦友。どうだったのだ?」

「昨日か......。まあ、なかなか楽しかったよ。」

「楽しかった?羽の採取が?」

「あー....うん。そう、羽の採取が......。」

そういえば学校ではそういう事になっているのだった。

事実はデート......のはずだったが、それすらも目的でなくなっていた。結局俺達は何しに行ったのだったか......。

先生に至っては俺達に任せっきりで漫画読んでいたわけだし......。

そんな話をしているうちに第十三教室に着いたようだ。

キーンコーンカーンコーン

俺達は席に着いた。

早速一週間に1話の目標を破ったわけですが、第6話をお読み頂き誠にありがとうございます

投稿が遅れた理由ですが、フリック入力を使い出したのがでかいです

やっぱり今どきキーボードは古いかなーと思って......

そういえばコーラス部に男子部員が沢山入ったので今年創部以来初めてのNコン混声ですよ!やったーですよ!

では次話で(^_^)/~~

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